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『魔法使いの殺魔師』  作者: つらら
〝第0章〟
7/7

TAKE5 『熊耳の雪女』


横浜中華街。


風が吹き抜ける夜の中華街──その一角に、“それ”は現れた。


ショートボブの白髪に、同色の熊耳がぴょこんと揺れる。蒼い着物は鮮やかな色合いに、おっとりとした立ち振る舞い──透き通る青い瞳とほんのり熱を帯びた雪のように白い肌。


本当に妖魔かと疑いたくなるような美しさだった…が、内から溢れ出る魔力を隠しきれてはいない。


間違いない──雪女だ。


……熊耳の雪女だ。


「隊長!奴が出ました!」

「よし……全員、戦闘準備!!」


無邪気そうに辺りを警戒しながら、人気のない方へ歩く雪女。本来雪女も熊も、人里離れた場所にしか生息して居ないのに…何故こんな所にいるのだろうか──。


そんな疑問を挟み込む余地も無いほど、皆緊迫した表情で戦闘態勢を構える。完全に一般人の人影が途絶えたその瞬間──特攻隊長が号令をかけた──。


「行くぞ──全員、突撃だああああ!!」

「「「「うおおおおおおおっ!!」」」」



「っ!?」


紀元前の戦場さながらの総突撃。隊長含め四人とは言え、いきなり複数の大の大人に襲いかかられれば四階級の妖魔とて驚くだろう。


しかしなるほど──“特攻隊長”とはよく言ったものだ。ただただ力任せの暴力戦術であればきっと、本来作戦として機能しないような突入激なのだが…これがなかなか連携の取れたものだった。


隊長が先陣を斬ることで、後続の者たちに戦いの手本を見せる。そして同時に士気を高める要因を作り出す。そこから生まれる隙を突いて攻撃すれば、反射的に雪女は自身を防御せざるを得ない…そうなれば対象的に隊長の方へ隙が生まれる。


そんな──不意を突かれた雪女は一瞬硬直するが、すぐに身を翻して回避を試みる。


それを際限なく隙の穴を埋めていくように回避、回避、回避──。


雪女は攻撃する間もなく、ただ流麗な動きで逃げ回っているだけのようだった。


そして一瞬──、特攻隊から脱出路を見出した様子の雪女は地べたに手を付け四本の手足を使って全速力で駆け抜ける──が、しかし…。


「どこへ行こうというのだ! 世を脅かす悪妖め!!抜刀剣術・木枯剣流──〝居合木の葉斬り!!”」


瞬間、隊長が間合いを詰め斬撃を飛ばす。


「キャッ!!」


ガードして防いだ雪女は直撃こそ避けたものの、街路樹まで大きく吹き飛ばされ、背中にズンと響くような衝撃を受けた。


「出たーーー!! 隊長の必殺技、“居合木の葉斬り”だ! !木枯家伝統の抜刀術だぞ!!」

「やっぱり〝秘伝技〟を使える人は一味違うなぁ……」


秘伝技──。一族に代々伝わる秘術である。日本でも数多ある殺魔師の家系には、それぞれ受け継がれた一族特有の剣術や魔法が存在するのだ。先程木枯隊長が使った技がそれである。


当然──私達【冬月家】にも、〝秘伝技〟と呼ばれるものが存在する…が。


それはひとまず置いておいて、目の前の雪女は木枯隊長の剣術を受けて怒りをあらわにしていた。


「うぅ〜!!寄ってたかってこんな卑怯な事してくる…だから殺魔師は嫌いなのよ!!“雹雨ひょうう“!!」


途端──、クマ耳の雪女の妖術によって生み出された雹の雨が皆を襲う。


「キャッ!!」

「うわっっ!!!」


「くっ──少し劣勢か!!?」


隊長が歯噛みする所──そのタイミングで、後方で待ち構えていたこころが魔法を放つ。


「皆さん、離れてください──《炎星メテオ》!!!」


ボウッ──と、こころが編み出した炎の大火球が雪女に直撃した。


「キャッ!!」


防御用の氷妖術を展開する雪女だったが、一歩出遅れる。


『ドオオオオオンッ──!!!!!』


雪女に直撃し、進路を変えたこころの《炎星》が、唐突な光と爆音を放ちながら宙で爆ぜた──。



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