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『魔法使いの殺魔師』  作者: つらら
〝序章〟
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序章「敗北」


カンカンカンカンカンッ──!


敵の妖魔の攻撃と、少女の剣がつばぜり合う音が響き渡る。


桃色の髪に艷めくような肌。敵の名は妖狐──階級は十。日本でも「三大妖魔」の一角とされる正真正銘の〝怪物〟だ。


対する少女は髪、瞳共に紺色の出で立ち。軍服のような白帽子とダボっとした白いパーカーが特徴で、少女が使う「白雪」という名の白刀はその名に恥じぬ程に白く透き渡っている。


「敬服に値するな──その腕と〝眼〟は──」


カンッカンカンッ──。


妖狐は常に幻術を織り交ぜた攻撃を仕掛けている──が、少女はその中から的確に自身への攻撃だけを捌いていた。


「ふむ…ならばこんなものはどうじゃ?」


「っ!!!」


妖狐は艶やかな笑みを浮かべながら、手に構える扇を払う。


「狐妖術──、十式〝絶舞〟」


瞬く間に数千の風刃が、少女を襲う。


「チィッ──!」


スパパパパッ──!と、少女はそれを全て防ぎきってみせた。


狐妖術──、『十式〝絶舞〟』。顕現幻術と呼ばれる、幻術を現実のものとする奴の固有技の一つだ。


その中でも〝絶舞〟は絶え間ない風の刃が一瞬にして襲う技で、その一つ一つが当たれば腕が吹き飛ぶくらいの殺傷力を有している。


それを全て対処するには瞬間的に全ての攻撃を捌く化け物じみた『身体能力』と、その全てを見定める『眼』が必要となってくる。


そして何より──〝絶舞〟の恐ろしい点は本来切れないはずの『風』を刃としている点だ。それ故に、妖狐は少女を称賛した。


「ほほう…?お主も大概〝化け物〟じゃのう。千年以上生きてきたが、(わらわ)の絶舞を初見で捌いてみせた者は歴史上──たった二人だけじゃ」


皮肉でも何でもないただの称賛が、少女にはこの世でどんな言葉よりも屈辱的に感じる。


「ハァ…ハァ、それでも──。私は…わたしは、大事な〝親友〟一人守れない…ただの「役立たず」にしかすぎないわ──」


ぎゅっと歯噛みし、下唇から血を流す。


それを何も感じていなさそうに、呆れた様子で妖狐は言い放った。


「本当に…全くもって、勿体ない事じゃのう。それ程の膨大な魔力を有しながら剣士とは…いや、それもまた末恐ろしい〝剣術の才能〟じゃが──しかし。それもそろそろ限界かのう」


「ハァ…ハァ、何言って…?っ!!」


途端──、視界が回らないように意識が混濁する。


「がはっ!…ハァ、ハァ──」


〝限界突破〟を乱用した事による身体への重大な負荷が、いよいよ耐えきれないものになっていた──。


「うら若き乙女が剣を握り、その若さで称号を得るまでに至り、あまつさえ妾とここまでやり合った誉れじゃ──どれ、一つ褒美をやろうかのう?」


「褒美…?何を言って──っ!痛っ──」


プスッ──と、軽くももを切られる感覚を覚える。


どうやら妖狐の持つ「九本の尾」のうちの一本に切られたらしい。


だが、何よりそれよりも──


「うっ…ああっ!」


全身が焼き殺されるような痛みに苛まれる。意識はだんだんと薄れていき、朦朧とした視界の中妖狐は言い放った…。


「妾の魔力を〝少しばかり〟わけてやった──。これでお主も、妾たちしか扱えぬ〝妖術〟が扱えるようになるじゃろう──。まぁ、その痛みと妾の魔力に体が耐えられたら。の話じゃがな──それと…」


「ハァ…ハァ──」


妖狐は少女の前で、見下ろすように言い放つ。


「〇〇〇には手を出すな──これは警告じゃ」


「ハァ…ハァ…」


妖狐が何を言ったのかはわからない。


少女の意識は──水の中を落ちていくように、深淵へと沈んで行った。


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