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【9話】結界を貼る、そしてケーキを食べる


 オフェリアとアディールは、王宮へ戻ってきた。

 二人が馬車から降りる。

 

「結界を貼るにはどれくらいの時間がかかるんだ?」

「一時間ほどです」

「わかった。では一時間を少し過ぎたくらいで、君の部屋へケーキを持っていこう」

「楽しみにしています」


 笑顔で言葉を交わして、アディールとはいったんお別れ。

 オフェリアは私室に入った。

 

 大きく深呼吸。

 瞳をギュッとつぶった。

 

 オフェリアの体が淡い光を放つ。

 大天使の加護の力を使って、国の外側に結界を張り巡らしていく。



 それから約一時間後。

 

「これでよし。うまくいってよかったわ」


 結界を貼ることに無事成功。

 これで五年間は、邪悪な魔物が外から入ってくることはなくなった。

 

 さて、仕事のあとはお待ちかねのご褒美だ。

 ベッドの縁に腰をかけたオフェリアは、アディールの到着を待ちわびる。

 

「ふんふふんふふーん!」


 ケーキを食べるのが楽しみでしょうがない。

 ご機嫌になって鼻歌を口ずさんでしまう。

 

 そうしていると、ドアがノックされた。

 

「アディールだ。もう入ってもいいか?」

 

 オフェリアはすぐに鼻歌を中断。

 どうぞ! 、と声をかける。

 

 アディールが部屋に入ってきた。

 

 手には箱を抱えている。

 中に入っているのは言わずもがな。ケーキだろう。

 

「テーブルの上に置いておくぞ」

「ありがとうございます!」

 

 オフェリアは大喜びでテーブルに座る。

 

 そこへやってきたアディール。

 テーブルの上に箱を置くと、自らもまた席に腰を下ろした。

 

 オフェリアは驚く。

 ケーキを置いたら、アディールはそのまま帰るものと思っていた。


「ケーキの話をしていたら、俺も久しぶりに食べたくなってしまった。一緒に食べてもいいか?」

「……それは構いませんが」

「俺がケーキを食べるのが意外か?」

「はい……少し」


 クールなアディールがケーキを食べるイメージというのが、まったく湧かない。

 少し、どころではなく、ものすごく意外だった。


「実は俺もケーキが好きなんだ。でもこれは、恥ずかしいから誰にも言わないでくれ。二人だけの秘密だ」


 人さし指をピンと立てたアディールは、口元へ持っていく。


「特にクルーダには絶対言ってはいけないぞ。あいつはすぐ俺をからかってくるからな」


 悪態をつくも、アディールの口元は嬉しそう。

 仲が良い証拠だ。

 

「アディール様とクルーダ様って、確か幼なじみなんですよね? 昔からよく遊んでいたんですか?」

「あぁ。毎日のように遊んでいたな」

「だからあんなにもフランクな関係だったのですね」

「国王相手にあのような喋り方はよくないと、俺は思うんだ。でもクルーダが、普通に喋ってくれというからな。重要な場以外では、ああやって話すことにしている」


 アディールは喋りながら、テーブルの上にケーキとフォークを並べてくれた。

 二人の前に、おいしそうなショートケーキが置かれた。

 

「食べようか」

「はい!」


 フォークを手にしたオフェリアは、ショートケーキを口に運ぶ。

 

(うーん! 美味しいわ!)

 

 ふわふわのスポンジと滑らかな生クリームが、口いっぱいに広がった。

 最高の味わいだ。

 

 仕事を終えたあとに食べるケーキは、なんとも絶品だった。

 

 対面のアディールも笑顔になっている。

 きっとオフェリアと同じ感想を抱いているに違いない。

 

「こんなにもおいしいケーキを食べることができて幸せです! ありがとうございます!」

「喜んでくれてなによりだ。……そうだ。ここでの生活には慣れたか?」

「はい。すごく暮らしやすいです」


 生活も仕事も順調だ。なにひとつ問題ない。

 最高の環境で暮らせている。


「それはよかった」

「レシリオン王国は本当にいい国です。この国にきてよかったです」


 私が前にいた国とは大違い、と呟いてしまう。

 思い浮かべた言葉を、つい口に出してしまった。


「以前に住んでいた国はひどい環境だったのか?」

「えっと……そんなところですね。……ハハハハハ」


 ごまかすように笑いを上げた。

 

 今は暗い話をしたくない。

 せっかくのおいしいケーキが、まずくなってしまう。

 

「そ、それより、クルーダ様とのお話をもっと聞かせてくださいよ!」

 

 オフェリアはやや強引に、別の話題へ切り替えた。

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