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【8話】一生懸命な人


 予定よりも大幅に早く出張治療を終えた二人は、教会から出た。

 

 ここでの仕事は終わりだ。

 王宮へと戻る馬車へと、二人は乗った。

 

「今日はありがとう」


 馬車が動き出してすぐ、オフェリアの対面に座るアディールが口を開いた。

 優しい声色には、たくさんの感謝の気持ちがこもっていた。


「これからもこういう機会は多々ある。そのときはまた君の力を借りたい。頼りっぱなしになってしまうが、よろしく頼む」

「この国では、そんなに頻繁に魔物の襲撃があるのですか?」

「あぁ。外からやってくる邪悪な心を持った魔物が、襲撃を仕掛けてくるんだ。セプテアのような国境沿いの街は、特に被害が多い」

「それでしたら結界を貼りましょう!」

「結界とはなんだ?」

「簡単に言えば、外からやってくる魔物から国を守るバリアです。これがあれば邪悪な心を持つ魔物は結界に阻まれて、国に入ってこられなくなるんです。王宮に帰ったらさっそく貼りますね!」

「なんと! そんな素晴らしいものがあるのか……!」


 アディールの反応は、目から鱗が落ちるかのよう。

 結界の存在を今まで知らなかったようだ。


「うん? しかしなぜ、王宮で行う必要があるんだ?」

「結界を貼るには、かなりの集中力を必要とするんです。ですので、私が落ち着けるような場所でなければできません。それには、王宮にある私の部屋が最適なんです」


 ラグドア王国にいたときも、結界を貼るときはいつも私室で行っていた。

 オフェリアにとって私室というのは、一番落ち着ける場所なのだ。


「そういうことであれば納得だ。……なぁ、オフェリア。俺にもなにかできることはないか?」


 アディールが身を乗り出した。

 オフェリアの役に立ちたい、という強い気持ちが伝わってくる。

 

(その気持ちだけで十分なんだけど……)


 ここで断ったら、アディールの強い気持ちを裏切ることになる。

 そうしたらきっと、ガッカリしてしまうだろう。彼のそんな顔は見たくない。

 

「では、終わった後にケーキを持ってきてください」

「…………へ?」


 よほど以外だったのだろう。

 気合十分のアディールから上がったのは、気の抜けた声だった。

 

「先ほども言った通り、結界を貼るのには集中力をいっぱい使います。ですので、終わった後は甘い物が食べたくなるんです」

「なるほど。それには糖分の補給が一番だな。よし、わかった。いっぱいのケーキを君のもとへ届けると約束しよう」


 自信満々の顔になったアディールは、任せてくれ、と自分の胸をドンと叩いた。


「アディール様はお優しい方ですね」


 こんなことを言ってくれる人は、今までいなかった。

 気遣いのできる優しい人だ。


「君はこの国のために、一生懸命頑張ってくれている。その姿を見ていたらじっとしていられない。小さなことでもいいから、俺もなにかしたくなるんだ」


 アディールが微笑む。

 心からの感謝と、熱い気持ちが伝わってきた。

 

(一生懸命なのはアディール様もですよ)


 アディールはオフェリアのために、一生懸命頑張ってくれている。

 まっすぐで強いその気持ちが、オフェリアは嬉しかった。

読んでいただきありがとうございます!


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