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【5話】初めてのお仕事


 翌朝。

 オフェリアは大きなベッドの上で目を覚ました。

 

 ここはレシリオン王国の、王宮の一室。

 オフェリアにあてがわれた部屋だ。

 

 ベッドから体を起こすと、扉からノック音が聞こえてきた。

 

「アディールだ。入ってもいいか?」

「少しお待ちを」

 

 乱れた髪の毛をブラシで整える。

 両手で軽く頬を叩いて完全に目を覚ます。

 

「お待たせしました」


 部屋に入ってきたアディールは、おはよう、と言って笑う。

 朝にふさわしい爽やかな笑顔だ。


「昨日はよく眠れたか?」

「はい!」


 ふかふかベッドの寝心地は最高だった。

 

 ラグドア王国で使っていたものと比べて、ずっと質が高い。

 朝までぐっすり快眠することができた。


「よかった。では今から食堂へ行こう。朝食の時間だ」


 ベッドから降りたオフェリアは、アディールと一緒に部屋を出た。

 

 

 二人は食堂へ入る。

 横長の食卓テーブルの真ん中で、向かい合うようにして座った。

 

「食事が運ばれてくるまで仕事についての話をしたいのだが、いいだろうか?」

「お願いします」

「色々と仕事はあるが、主な仕事は回復薬の製造だ。これまでに作った経験はあるか?」

「はい」


 回復薬なら、ラグドア王国で毎日のように作っていた。

 目をつぶっても作業できるくらいには習熟している。仕事をする上での問題はないはずだ。

 

 それからアディールは、休みや給料といった待遇面の話もしてくれた。

 

 どれも問題はない。

 それどころかラグドア王国にいたときよりも、ずっと好待遇。本当にいい仕事に就くことができた。

 

 

 朝食を食べ終えた二人は、食堂を出た。

 

「さっそくだが、君には今から仕事に取りかかってもらう。ついてきてくれ」

 

 アディールは本棟を出て、隣にある別棟へ入った。

 入り口付近の部屋の前で足をとめる。

 

「ここは作業室。回復薬の製造はこの部屋で行ってもらう」

 

 アディールが部屋の中に入る。

 オフェリアもそれに続いた。

 

 部屋の中には、ピンク色の髪をした少女が一人いた。

 歳は十五歳くらいだろうか。かわいらしい顔立ちをしている。

 

「彼女はステラ。魔術師団の団員だ。君にはステラと一緒になって、ここで回復薬をつくってもらう」

「団長おはようございます!」


 ステラがこちらに走って向かってきた。

 アディールにペコリと頭を下げる。

 

「おはよう」

「団長、隣にいる美人さんは誰ですか?」

「彼女はオフェリアだ。今日からここで回復薬づくりをしてもらうことになった。ステラの同僚だな」

「そうなんですね!」


 ステラがオフェリアに体を向けた。

 

「ステラです! よろしくお願いします!」


 弾んだ声が飛んでくる。

 元気でいい子そうだ。

 

「オフェリアです。よろしくお願いします」

「敬語はいりません。気兼ねなく話してください!」

「……わかったわ。それじゃあステラ、これからよろしくね」

「はい!」


 ステラは元気いっぱいに笑った。

 なんだかこっちまで笑顔になってくる。

 

「オフェリア、まずは君の力量を見たい。試しにひとつ回復薬を作ってみてくれ」


 薄紫色の液体が入った瓶をアディールが手渡してきた。

 

 瓶の中に入っているのは、『魔力水』という特殊な液体。

 水に少量の魔力が溶け込んでいる。

 

 これに治癒魔法をかけることで、回復薬ができるのだ。

 

 オフェリアの場合は治癒魔法ではなく治癒の光だが、やることは変わらない。

 魔力水に治癒の光を当てれば、回復薬ができる。


「では、いきます」

 

 アディールから受け取った瓶を、近くの作業台の上に置く。

 瓶に向けてオフェリアは、治癒の光を放つ。

 

 次の瞬間、紫色だった魔力水が青色へと変わった。

 これで回復薬は完成だ。


「できました――って、あれ?」


 声をかけるも、二人は無言だった。

 なぜかものすごく驚いている。

 

「こんなに短時間で回復薬を作ってしまう人、私、初めて見ました」

「……あぁ、まったくだな。驚異的なスピードだ」


(え、そうなの?)

 

 オフェリアはいつもこのスピードで、回復薬を作ってきた。

 速いと言われても実感がわかない。


「分析させてもらってもいいか?」

「は、はい。どうぞ」

 

 アディールが瓶を手に取った。

 まじまじと眺める。

 

「団長は見ただけで、そこにどれくらいの魔力が入っているかわかるんですよ」


 ステラが小声で教えてくれた。

 

(見ただけでそんなことがわかるのね)


 さすがは魔術師団の団長。

 特殊な能力を持っているみたいだ。

 

 アディールが瓶を作業台の上に戻した。

 顔には驚愕の色が浮き出ている。

 

「あんなにも速かったから中途半端な質になっているかと思ったが……そんなことはない。しっかりとできていた。むしろ、一般的なものよりも魔力の量が多い。つまりそれだけ、効能が高い」


 アディールがオフェリアへ顔を向けた。

 驚愕だけでなく、今度は尊敬の色も浮き出ている。

 

「オフェリア。君はとてつもない才能を持っているようだ」

「すごいですオフェリア様!」

 

 ステラが身を乗り出した。

 瞳はキラキラと光っている。

 

「これからはお姉様と呼ばせてください! こんなにすごい人と一緒に仕事できるなんて嬉しいです!」


 オフェリアの腕前を二人は大絶賛。

 

 しかし当の本人はというと、いまいち浮かない顔をしている。

 どうにも実感が湧かないでいた。

 

 ラグドア王国にいたときは、いつもこのやり方で作っていた。

 オフェリアにはとっては、これが当たり前だった。だからすごいと言われても、ピンとこない

 

(でも、嬉しいわ)


 どれだけすごいのかはわからないが、褒められるのは嬉しい。

 心の中に湧き立つものがあった。

読んでいただきありがとうございます!


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