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【26話】ベルクからの手紙


 メーレム王国から帰ってきてから一週間が経った、その日。

 オフェリアとアディールは、国王のクルーダに呼び出されていた。


「こんなものが届いたんだ」


 クルーダが二人に見せたのは、一通の封筒だった。

 

「あて先は俺だったんだけどね、中に入っている手紙を見たらオフェリアへ向けてのものだったんだ。ともかく見てみてよ」

「かしこまりました」


 クルーダから封筒を受け取る。

 裏返して差出人を見てみると、衝撃的な名前が書かれていた。

 

「ベルク様……!」


 記載されていたのはラグドア王国の国王――ベルクの名だった。

 オフェリアは急いで中に入っている手紙を取り出した。


 ルシアが目覚めた力――大聖女の加護は、ルブリオに取り入るためについた嘘だったということ。

 相次ぐ魔物の襲撃により、ラグドア王国が大混乱に陥っているということ。

 先日大規模な魔物の襲撃がありなんとかこれをしのいだものの、王国軍はほぼ壊滅状態。次にまた大規模な襲撃を受けたら、対応できないとのこと。

 

 手紙に書かれていたのはそんな内容だった。

 思った通り、ルシアの力はでまかせで国は大変な状況になっていた。

 

 そして最後には、


”勝手なことを言っているのは重々承知だ。

 しかし私にはこうするより他に、国を守る手段が思いつかない。

 お前だけが頼りだ。どうか力を貸してくれないだろうか”


 そんなベルクからのメッセージが載っていた。

 

 他の部分よりも筆圧が濃い。

 強い気持ちを感じる。


「国外追放しておいて困ったから戻ってこいだと! なんと勝手な話だ! 虫がいいにもほどがある!」


 隣で手紙を見ていたアディールが声を荒げる。

 額には青筋が立っていた。

 

「こんな話は受ける必要ない!」

「ありがとうございます。……でも、私は行こうと思います」

「……どうしてだ? 君がそこまでする必要があるのか?」

「ベルク様は私にとって恩人なんです。周囲が冷たい態度を取る中、ベルク様だけが私に優しくしてくれました。心の支えだったんです」


 アディールの言っていることはもっともだ。

 そのことは、オフェリアも思わない訳ではない。

 

 でも、だからといってベルクを見捨てることはできない。

 唯一の恩人を見捨てられるほど、オフェリアは非情になれなかった。

 

「……なんとなくこうなると思っていた。君は優しすぎる」

 

 アディールは小さく息を吐く。

 

 しかし雰囲気は優しい。

 口元はわずかに笑っていた。

 

「俺も行こう。俺にとって君は大切な人だ。ひとりで行かせるわけにはいかない」

「ありがとうございます!」


 二人は見つめ合うと、互いに微笑んだ。

 

「えっ、そのよさげな雰囲気はなんなの? というか、いつの間に二人はゴールインしてたんだ? 俺、なにも聞いてないんだけど……」


 クルーダがポカンとしている。

 

「……行こうか」

「はい」


 オフェリアとアディールは、そそくさとその場から去っていく。

 クルーダが呼び止めるも、二人の足はとまらなかった。

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