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【18話】プレゼント


 その日。

 オフェリアとアディールは、レシリオン王国の王都――リトールの街を横並びになって歩いていた。

 

 舗装された道の上には、多くの人が出歩いている。

 みんな笑顔で楽しそうにしている。

 

 道の端にはたくさんの露店がずらっと並んでいた。

 露店商が客を呼び込もうと、声を張り上げている。

 

 リトールは、元気と活気に溢れている場所だった。

 

(テンションが上がるわね)

 

 ただ歩いているだけだというのに、オフェリアはなんだか楽しくなってきていた。

 

「どこへ向かっているんですか?」


 隣にいるアディールへ聞く。

 ちょうどそのタイミングでアディールの足がとまった。

 

「ここだ」


 そこはアクセサリーショップの前だった。

 

 二人は店の中に入る。

 オフェリアは店内を歩きながら、キョロキョロと顔を動かしていく。


「綺麗ですね!」


 店内には色々な種類のネックレスやイヤリングが、数多く飾られていた。

 キラキラと眩しい光景に、オフェリアの心が躍る。

 

「気に入ったものはあるか?」

「そうですね……」

 

 こういう店に入ったのは初めてだ。

 急にそんなことを言われても、すぐには出てこない。

 

「あ!」


 声を上げたオフェリアが足をとめる。

 目に留まったものがあった。

 

 それはルビーのネックレス。

 

 トップに飾られている大きなルビーが、輝かしい真紅の光を放っている。

 銀色のチェーン部分はシンプルなデザインとなっているが、それが宝石の存在感をより際立たせていた。

 

 足をとめたのは、洗練されたネックレスのデザインが素敵、というのもあるが一番の理由は違う。

 

 大きなルビーは、アディールの瞳にそっくりだ。

 人を引き込んでしまうような、大きな魅力がある。


「これが気に入ったのか?」

「はい」


 店内には他にも素敵なアクセサリーがいっぱいあるが、オフェリアにはもうこのネックレスしか目に入らない。

 ぞっこんだった。


「ではこれを買ってこよう。君には数えきれないくれらいの恩があるからな。少しでも恩返しをしたいんだ」

「恩返しなんてしなくてもいいですよ」

「前にも言った通り、借りは返したい主義なんだ。……それにプレゼントをしたいのは、恩返しだけが目的じゃない。喜んでいる顔を見たい」


 アディールがまっすぐに見つめてきた。

 射貫くようなその真紅の瞳には、火傷しそうなほどの情熱を感じる。


「オフェリア。俺は君の笑顔が大好きなんだ」


 オフェリアの顔が真っ赤になる。

 情熱たっぷりの瞳でそんなことを言われるとは思わなかった。

 

 心臓がバクバクしている。

 ものすごく恥ずかしい。

 

(大好きって! えっとそれは……なんなの! つまりどういうことなの!?)

 

 頭はパニック。

 考えがごちゃごちゃしてまとまらない。

 

「では、買ってくる。ここで少し待っていてくれ」


 ネックレスを手に持ったアディールは、カウンターへ向かった。

 

 絶賛パニック状態のオフェリアは、なにも言えない。

 アディールがいなくなってもしばらくは、顔が赤いままだった。

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