【13話】神獣との出会い
川に溶け込んでいた怨念を浄化したことで、ペルラ村の問題は無事に解決。
オフェリアとアディールは、王宮へ戻る馬車に乗った。
揺れる車内の中、対面のアディールが声を上げた。
「村長からの褒美を断ったが、あれでよかったのか? 君は大きな偉業を成し遂げたんだ。そこまで謙虚にならずともいいのでないか?」
「感謝の言葉を言ってもらえただけで十分です。私にとってはそれが一番嬉しいことですから」
「……君は本当に素敵な女性だな」
優しい声色で呟いたアディールは、優しく微笑えんだ。
そんな風に褒められるとは思わなかった。
こそばゆくなったオフェリアは、正面を見ていられない。下を向いた。
「アディール様はいつも私に優しくしてくれます。いっぱい褒めてくれます。私にしてみればアディール様の方が、ずっと素敵な人です」
若干パニックになっているオフェリアは、浮かんだことを考えることもなくそのまま口にした。
「……お、おう。そうか」
アディールの言葉はいつもに比べて、ずっとたどたどしい。
顔が赤くなっている。
しかし下を向いているオフェリアは、その変化に気がつかなかった。
そのとき。
ガタン!
車内が大きく揺れる。
馬車が急ブレーキをかけた。
「なにかあったのか?」
「見にいってみましょう」
二人は馬車から降りた。
御者へ話を聞きにいく。
「急にとまったようだがどうした。なにかあったのか?」
「申し訳ございません。あいつが急に飛び出してきたんです」
御者の視線はまっ直ぐ正面。
馬車の進行方向だ。
そこには銀色の毛並みを持つ大きな虎がいた。
道の真ん中で倒れている。
それは、シルバータイガーという魔物だ。
大きな力を持っているが性格は温厚。
めったに人前には出てこない。
強大な力と神秘性から、『神獣』とも言われている。
倒れているシルバータイガーは、ひどいケガを負っていた。
ぱっくりと開いた傷口からは、大量の血が流れ出ている。
「……あのケガではもう助からないか」
「いえ、まだ助かります!」
あれほどのケガは、治癒魔法では治せない。
だがオフェリアの治癒の光であれば治せる。
まだ助けられる。
オフェリアはシルバータイガーのもとへ駆けつけた。
シルバータイガーの呼吸は荒い。
早く治さないと手遅れになってしまう。
「今治すからね!」
かがんだオフェリアは、シルバータイガー傷口へ手のひらを向けた。
治癒の光を放つ。
淡い光がシルバータイガーの全身を包む。
ぱっくりと開いていた傷口が、みるみるうちに塞がっていく。
荒かった呼吸も正常に戻った。
「これは……!」
驚きの声を上げたシルバータイガーが、すくっと立ち上がった。
オフェリアをじっと見つめる。
「あなたが我を治してくれたのだな。感謝する」
「いいのよ。気にしないで」
丁寧に感謝をしてきたシルバータイガーの頭を、オフェリアは優しく撫でた。




