日本経済はもはや韓国よりも下なのか? 「1人あたりGDP」について
筆者:
本日は当エッセイをご覧いただきありがとうございます。
今回は「1人当たりのGDPの順位が韓国よりも2年連続で下回る」という事について個人的な意見を述べていこうと思います。
質問者:
韓国さんを意識されている方が多いとも思うのですが、OECD(経済協力開発機構)30か国で22位(過去最低タイ)になったという事も衝撃的ですね。
日本はここまで衰退してしまったのかと……。
筆者:
皆さんこのニュースを読まれて極めて悲観的な気持ちになられたと思うのですが、僕はそこまで暗い気持ちにはなっていないですね。
◇「生産年齢」ではGDPは増えている
質問者:
え……一体どうしてなんですか?
筆者:
経済学者のヘスース・フェルナンデス=ビジャベルデ(ペンシルベニア大学)教授が「生産年齢人口1人当たりGDP」について調べたものがあります。
現在トップのアメリカと日本とで1990年から2019年の期間で比較した場合、年間成長率出ると日本のGDPの年間成長率は1%未満で、米国の約2.5%を大きく下回ったのですが、
生産年齢人口1人当たりGDPでは両国の差はほとんどなくなり、同じ期間の成長率は日本が1.44%、米国は1.56%だったそうです。
世界金融危機の最中だった2008年から新型コロナウイルス禍直前の2019年までの期間では、生産年齢人口1人当たりGDPの成長率は先進7カ国(G7)で日本が最も高かったまであったそうです。
質問者:
「1人あたり」に「生産年齢」が付いただけでどうしてそこまで変わってしまうのでしょうか……。
筆者:
これは非常に簡単なお話でして、世界で一番高齢化が進行している国が日本だからです。
日本の人口減少が始まったのは2010年からですが、15歳から64歳までの生産年齢人口は1990年代前半から減り始めたんですね。
ちょうどその辺りからGDPの停滞が始まっているわけですが、
引退された高齢者の方はほとんど生産に寄与していないことを加味すると、「90年代から現役世代の経済成長率は良い」という事も同時に意味するのです。
◇「社会システム」が日本を貧困化させている
質問者:
なるほど……。
でも現役世代が経済成長しているとなると、どうして賃上げが30年ほとんど行われなかったのでしょうか?
筆者:
まず、労働者の頑張りが賃金に反映されないことが挙げられます。
確かに年功序列で賃金は上がっていると思うのですが、
「前の世代の同年齢時」よりは給料がほぼ変わらずに手取りが下がっていると思うんです。
1つ目の原因はバブル期に労使が「クビにしない代わりに賃金を上げない」と言う密約を交わしたという歴史的背景があります。
2つ目の原因として消費税が導入されて給料に消費税税額控除がなされない(消費税が安くならない)で法人税が下がったことから給料を上げるインセンティブと言うのがどんどん無くなっていったのです。
その上で社会保障負担も増え、国民の生産性がアメリカ並みに向上しても、
一般国民の給料が上がらないという悲惨な状況になってしまったのです。
質問者:
つまり、いつもおっしゃっている「社会システムに問題がある」という事ですか……。
筆者:
そうです。
消費税は「賃下げ税制」となっており、
社会保障が自己積立制度では無く、現役世代に負担させ続けていることから「少子化促進・高齢者保障制度」となっているんです
システムの構築した70年代~90年代の段階でこうなることはある意味目に見えていたと言えるんです。
全ての戦犯は政治家にあると僕は思っているので、日々政治について問題提起をしているという事です。
◇GDPそのものが「微妙な基準」
質問者:
筆者さんはそもそもGDPについてあんまり評価されていませんよね……。
筆者:
まず、ドル建てに合わせるために円安である日本は圧倒的に低評価になります。
次にGDPは「お金消費」にフォーカスされているために環境に負荷をかけていると僕は考えています。
質問者:
どういうことなんでしょうか?
筆者:
例えば、A家電製品は1万円で10年使えます。
B家電製品はAと性能は同じもので1万円ですが毎年1万円で買い替える必要があります。
B製品なんて買うかよ! と思われるかもしれませんが、
「寡占市場」に近ければ近いほど、「商品を制限」できることから「買い替え」を促進させることが可能になります。
しかも、GDP的にはB製品が普及してくれた方が上になります。
国が「大企業優遇政策」をして中小企業淘汰のインボイスを推進したりするのもここら辺に「答え」があるような気がします。
話を戻しますが、「GDPにはよくても消費者や環境には不幸」と言ったことが普通に起こりえるのです。
毎年のように大量生産・大量消費を促す指標ですからね。
質問者:
GDPは無意味ではないにしろ過剰に評価しすぎるのも問題だという事ですか……。
筆者:
市場競争によって経済成長しても、生活必需品や家賃は安くならないどころか物価高の状況である可能性が高いために厳しい社会とも言えます。
更にライバルが強くなって金を稼ぐ難易度は上がっていく(不必要な人材はカットされていくため、相対的実力者が独占していく)という要素もあります。
また、本来評価されてもいい「社会基盤」に近いお金で交換することがやりにくい福祉や農業などは価格圧力がかかっていることから評価されず、軽視されていく社会にもなります。
質問者:
重労働なのに評価されないだなんて世知辛すぎます……。
更に精神的なことに関しては評価されませんよね。
筆者:
GDPは結局のところ「貨幣のやり取りが多い指標」であり物質的・精神的豊かさとは完全にリンクしていないんですね。
物々交換などの信頼関係などで成り立っている取引に関しては貨幣を介在していないために「評価はゼロ」。
無償で提供されたもの(ボランティア)に関しても相手から非常に感謝されるであろう素晴らしい活動がほとんどにも関わらず「評価はゼロ」。
「無償の愛」でもって長い時間育てられる子供たちは精神的に豊かだったでしょうけど、「評価はゼロ」。
こういったことを評価できない社会システムに問題があるでしょう。
これらを現状「安い価格(労働対価)で払い下げている」とも言えるわけです。
ただ、これら「無償行動」が評価されるためにはあらゆる行動が管理され、感情も評価される「監視社会」の様相になると思うのであまりいい気がしない方はいるでしょうけどね。
特に今の政府が構築するシステムですと、マイナンバーカード関連事業みたいに「欠陥だらけで予算ばかりがかかるゴミ」に終わりそうですけどね。
質問者:
確かに素晴らしいことであっても「豊かさ(GDP)」に反映されないのは問題ですよね……。
それらを削って「豊かさ(GDP)」に移行しようというわけですか……。
例えば今無くそうとしている「3号保険(主婦年金)廃止」の検討とか……。
筆者:
確かに「衣食足りて礼節を知る」という言葉があるように最低限のお金が無ければ、不幸にはなります。
しかし現状は、貧富の差が広がっている上に、精神病患者620万人、
子供のいじめ認知件数732,568件、小中高生の不登校34万人はそれぞれ悪い部門で過去最多を更新するような状況になっています。
やはり夫婦共働きの状況で子供に対する面倒を見ることが出来なくなっているのでしょうね。
質問者:
確かに共働きで収入は1人が働く状態よりはGDP的には上回るものの精神的な状況的には悪化しているという事なんですかね……。
筆者:
世の中には「重要であるがゆえに買えないもの」があるんですね。
それは「気持ち」、「規範」、「常識」、「仲間意識」、「愛情」などです。
もちろんこれらを「札束で買う」ことも可能ではありますが、「本来の姿」には程遠いでしょう。
今の日本は「GDP至上主義」でありながらGDPは増えず、「買えないものを失う」これが最大の問題であると思います。
質問者:
お金を稼ぐことは、幸福になるためのツール・引換券の一つに過ぎませんからね。
筆者:
そうです。お金を稼ぐことに全振りをしているのに幸福になれていない。
その上で何でも言いますが「賃下げ税制・消費税」や社会保障で取られまくっているのが今の日本の現状だと思います。
僕は自分や家族が何が必須なのか見極めて、それを満たせる程度に程よく稼ぎ、
「精神的豊かさ」を目指すのが一番いいと思います。
まずは自分の「足るを知る」ことが重要だと思います。
質問者:
しかし、そもそも「GDPに疑問を持つ」方自体が少ないのですが……それについてはどうなんですか?
筆者:
政府が「GDP至上主義」を推進しGDP以外の指標について提示しない理由としては、
馬車馬のように働いてくれれば政治のことについて考えてくれなくなる。選挙に行かなかったり、考えないことは、政治家の既得権益が守られると考えているからですね。
「欲望を喚起や不安や恐怖で国民を煽り、馬車馬のように働かせること」
がGDP至上主義としても最善手ですから促進させようとしているということです。
質問者:
社会システムで不幸になるだなんて悲しいですから、
皆さんなるべく早く気付いて欲しいですね。
筆者:
僕なりに全力を尽くして社会システムを覆せるような発信をしていこうと思いますね。
という事でここまでご覧いただきありがとうございました。
今回は、
「生産年齢人口あたりのGDP」は伸びているためにそこまで悲観する必要が無いこと。
それにも関わらず賃金が伸びていないのは消費税や社会保障などの社会システムが異常であること。
「GDP至上主義」は「お金で買えないもの」を失わせていくために「精神的豊かさ」を追求していく必要があるという事をお伝えしました。
今後もこのような話題になっていることや政治について個人的な考察をしていこうと思いますのでご興味のある方はどうぞご覧ください。