第15話 冬の戦い3
先遣隊が、恐る恐る城内に入った。
そこは地獄のような様相を示していた。
城内の施設はメチャクチャに壊されていた。あちこちにがれきと、血だまりがあり、多数の死傷者が転がっていた。そこここでうめき声や泣き声が聞こえていた。
「うーん、助けてくれー」
「痛い痛い」
「もう殺してくれ」
生き残っていたものも、あまりのことに呆然としており、腰を抜かしてうずくまっていた。
「城内には、死傷者が多数おります。生き残りも余りのことに心を砕かれており、抵抗するものはいませんでした。というより、早急に救助が必要な状態です」
先遣隊の者がシュバルツに報告した。
「即刻全員入城し、救助に当たる。ハンよとんでもないものを作ったな」
「すみませんでした。あれはもう使いません、あまりにも危険です」
「そうしてくれるか、肝が冷えたぞ。まあ今回はケガの功名ということにしておこう」
「ありがとうございます」
エーデルはじめ、他の幕僚も青い顔をしてうなずいていた。あまりのことに言葉もない様子だった。
なんかお咎めがないようでほっとしたよ。しかしとんでもない機械だったな。もう少し改良したら使えるようになるかもしれんが、しばらくは見たくないかも。
「とんでもないものを作ったもんですねえ、こっちに転がってきたときは肝が冷えましたよ」シュタインでさえ、顔色がなかった。
「すみません、強度不足だったようです」流石のハンスもすまなそうだった。
全員が入城し、死者を一か所にまとめ、白い布をかけ、負傷者は治療を施した。生き残った者も捕虜とし、一か所に幽閉した。
それからがれきをかたずけたのち、城内に天幕をはった。城内にまともな建物はもうなく、暮らすためには天幕をはるしかなかったのだ。
それから、城門がないのもなんなので、いちおう仮の城門も作った。
城内の食糧庫は破壊されていたが、食料自体は無事だったので、ありがたく頂戴した。
本日はそれを利用し、キッチンカーで暖かい食事を作った。それから、あちこちに焚火をつくった。
一応城内なので風は通りにくく、城外よりは寒くないため、この日はゆっくりと眠った。
警戒に当たる歩哨は2時間交代とし、厳重に防寒具を支給した。毛皮の帽子、革のマスク、手袋、靴下をつけさせた。それだけ気を付けても軽い凍傷者はでたんだ。この寒さは尋常じゃないんだが。
翌朝、軍議が開かれた。
「シュバルツ様、この寒さは、想定外です。凍死の恐れさえあります。城は落としたのですから、直ちに撤退すべきです」
「私もそう思います。撤退すべきです」
「撤退を」
みなの意見は撤退に傾いていた。
「うむ、確かに冬の作戦は無謀だったかもしれんな、各種防寒装備のため、今はそれほど被害はないが、撤退すべきかもしれんな。敵が出てきたら、ある作戦があったんだが。しかたない撤退準備にかかれ」
「はは」皆にほっとした空気が流れた。
その時、伝令が天幕に息せき切って入ってきた。
「報告します、ランド王国軍と思われる軍勢約1万が、東方より進軍してきたとのことです」
「ん・・・」皆が息をのんだ。本当に来たんかい。俺たちがこれほど防寒装備を工夫したのに凍傷者が出てるのに、あんたらも来るんかい。ちゃんと冬用の準備してるんだろうな。俺は嫌な予感がした。
「来たものは仕方がない、戦うぞ。出撃し、陣形を整えろ」