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第11話:義弟ハンス1

屋敷に帰って来て驚いた。


本当にきれいに片付いていた。

塵一つなく掃除され、すべての物は、あるべき場所に収納されていた。

庭も、雑草一つなく、花壇には様々な花が咲き誇っていた。


「本当にここが俺のうちか」

「おかえりなさいませ、ご主人様」ユングが笑顔で、出迎えてくれた。

「凄いな、みちがえるよ」

「こんなのは、最低限です」


俺は居間に落ち着いて、笑顔のユングを見上げた。なんかはやく結婚した方が良いような気がしてきた。

「この戦の手柄で、飛び地になるが、王都南方に3000口の領土をもらったよ。フィヨルドに管理をお願いしたいが、どうだろうか」

「それは御目出とうございます、さっそく代官を派遣します」

この国では、土地の大きさを人口で表す仕来りがある、そこがどれだけ広かろうと、人口が千人なら、千口と表している。


「ダナウブというところらしいが、南方なんだが、ユングは知っているかい」

「ダナウブですって」俺の知らない男性が、突然口をはさんできた。


「誰だい?」俺は驚いてユングに聞いた。

「あー」ユングが、なぜか申し訳なさそうに紹介した。

「こいつは、ハンスといって、私の弟なの」

「どうして、その弟が、ここにいるんだい」

「ハンスは、色んな物を作ったり、改良したりが大好きなのよ。発明も大好きで、そのために、いろいろ実験したりして・・・」


ユングがすんごく言いずらそうにしていた。何かあったのか。

「もしかして、なんか大失敗して、家にいられなくなったとか」

「………」

「………」

「その通りなんだな」

「………」

「………」


「なにやったんだ」

「ハンスは特に武器が好きで、投石器とか、石弓を作っていて、それはまあまあ役にたったんだけど、古代のアルキメドロスの火を再現しようとして、ちょっと屋敷を燃やしちゃったの」俺の眼を見ず、明後日の方を見ながらユングが言った。

「ちょっと」

「まあ半分くらいだけど」


それは相当な大事件じゃないのか、屋敷燃やしたのは流石にまずいだろう。それで姉と一緒に、俺に厄介払いで押し付けたんだな。なんかひどいと思うが、どうしたもんだか、問題児っぽいし、断ってもいいんだがなあ。ユングに目を向けると、ユングは目をそらした。そうとう困ってるっぽいなあ。


ユングのために受け入れてもいいような気もしてきた。これで感謝してくれるなら、それはそれでいいかもしれない。まあ少し話してみて、人柄を見てみて決めてもいいかもしれないなあ。


「それでハンス、お前はどう思っているんだ」ハンスに水をむけてみた。


ハンスは、茶色いくせっ毛をもつ、やせてメガネをかけた小柄な男だった、しかし、目だけはキョロキョロとあちこち観察し、好奇心旺盛そうだった。


「あれは失敗でしたねー。しかし改善点は見つけました、今度こそ成功させて見せます。その他に、大型石弓や、いくつもの兵器のアイデアがあります。ここで仕事させてください」まったく悪びれず、キラキラした目で俺に訴えかけた。


これは学者馬鹿だ。悪気は全くないが、何するか分かんない男だ。しかし才能は有りそう、なんだかおもしろそうな男だった。性格も悪くなさそうだ。もしかするととんでもない拾い物かもしれない。ちゃんと手綱をつけて監視しておけば役に立つかもしれないな。


「研究費は、うちの実家が出すと言っています、私からもお願いできないでしょうか」

ユングがすまなさそうに俺に言った。

それならまあいいかな。


「研究所は、何かあっても被害が出ないように、人家のない、街の郊外でいいんなら、考えてやる。どうだ」

「場所なんかどうでもいいです。実験できればそれでいいです」

「ヨハン有難う、恩に着るわ」ユングが嬉しそうにいった。この兄弟のの仲は悪くないんだろうな。

まあ婚約者に恩をうれればまあいいだろう。


「それから、ダナウブなんですが」ハンスが改めて俺が貰った土地について聞いてきた。

「なんだ、ダナウブを知っているのか」

「知ってるどころか、ホッホベルグ領のすぐ隣です」

「なんだ、じゃあどんなところかよく知ってるんだな」

「これは神の与えた恩寵です。ダナウブは人口は少ないけれど、土地は広いです。大きな川が流れており、湿地帯が広がっているため、耕作地も人口も少ないですが、干拓すればいくらでも耕作地が広げられます」


「なんだって」

「そして隣接するホッホベルグ領は水が足りなくて、耕作地を広げられなかったんです。ダナウブから水を引き込めば、ダナウブは乾いて耕作地を広げられ、ホッホベルグは水を得て耕作地を広げられます。どちらにとってもいいことだらけです」ハンスが目を輝かせて俺に迫った。

「本当か」


「はい、前からダナウブから水がひければいいなーと思っていたんですが、以前の領主からは全く相手にされませんでした。これはもう神意としか思えません」ハンスは神に祈りをささげるような仕草をしていった。


「費用はホッホベルグ家から出ると思います、ぜひ水路建設を認めてください。私が指揮をとります」さらに目を輝かせてハンスが迫った。

「いや、それは専門家に任せよう。フィヨルド、こちらの手配も任せられるか」

「喜んで、ホッホベルグ家の永年の課題が一挙に解決しそうで、私もうれしく思います。こちらからもお願いします」


「私からもお願いね、これで実家にも恩を売れるというものよ」ユングがにんまりしていった。

「俺が総指揮をとりたかったんだけど、仕方ありません。研究に専念します」

「ハンスには、できれば新しい攻城兵器を考えてもらいたいんだが」

「攻城兵器ですか」

「そうだ、なんかすぐに必要になりそうな予感がするんでね」

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