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8話 研究

 「上のことはエイキたちに任せて、俺たちはレビアの声のありかを探すぞ。きっとどこかに隠し扉があるはずだ。」

 「そうだといいんですけど…。」

  

  さっきから壁を手で触って動いてるけど、スイッチらしきものはない。

  地面にも特に仕掛けはない。やはりこの絵が…。



 「…なあ、カイト。なんか上がうるさくないか?」

 「そうですね…。何か揉めてる?」

 「らしいな、ちょっと見てくる――って。」

 「どうかしたんですか?仕掛けでも見つけました?」

 「カイト。階段への道が閉まっている。見てみろ!」

  

  そんな馬鹿な、と思い振り返った。

  

 「え?って、確かに…。いつの間にか壁が…?」

 

  通路の途中に壁ができている。

  いつの間にか石が積まれて壁になっている。上から崩れ落ちてきたのか?ただそんな音はしなかった。

  急に暗くなったら気が付きそうだが、かなり奥まで進んでいるため地上の光がほぼ届いておらず、ネックレスの光しか光源がないのだ。

  


  もしかしたら崩せるか、と思ってタックルしたが、びくともしない。

  後ろは行き止まり、前は石の壁。これはまずいな。


 「あいつらに助けを呼ぼうにも、壁のせいで声が届かなそうだ。」

 「無事だといいけど…。」

  

  ただ、上のほうでとんでもない轟音がする。何かと戦っているのか?でもそしたらこの動きは誰の動きだ?明らかに素人ではない。


 「それもそうだな。ただ、この状況でどうするか…。」

 「隊長!行き止まりだったはずなのに。通路が現れています!」

 「なんだって!?ほ、ほんとだ…。一体どうなってんだ?」


  いろいろ起きすぎていて頭がパンクしそうだ。

  急に壁が出てきたり、上ですごい音がしたり、壁が消えたり、詰め込みすぎだ。


 「とりあえず、進むか…。」

 「そうですね。一応剣は構えておきます。」






  奥から涼しい風が吹いてきた。体の皮膚はそれを感じ取る。

  冷汗が出てきた。いやな気分がする。

   

  もともと壁だったところの奥はまだ、通路になっていた。

  奥を照らしても通路が続いている。まさか永遠に続いているのか?

  ただ、近づけば近づくほど奥から音が聞こえてくる。奥に部屋でもあるのだろうか。


 「あの声って、レビアですか?」

 「だろうな、やはり奴らの巣のようだ。」

  

  構える力が強くなった。いつ襲われても問題ないよう、集中しなければいけない。

  

  100メートルくらいは進んだか。

  奥には大きな部屋が見える。俺たちの動きは自然と遅くなった。

  奥の部屋には明かりが見える。誰かいるのだろう。

  ただ、話し声や物音は聞こえなくなった。


 「あそこだろうな。カイト、準備はいいか?」

 「はい。問題ありません。」

 

 

  

  俺たちは奥の部屋に入った。そこら中に松明がある。

  部屋というより大きな空間だ。四隅の近くには巨大な柱が立っており、ここのほうが遺跡に見える。

  中央には大きな魔法陣が描かれている。魔法陣の中央には紫の宝石?のようなのが光っている。

  

 

 「これって……」

 「カイト!!危ない!」

 「…!!」

 

  俺は隊長に思いっきり背中を押された。その直後、俺のいたところに『何か』が落ちてきた。

  煙が広がり、影が見える。動いているため生き物だ。

  その生き物は立ち上がり、頭を揺らした。


 「やはり、レビアがいたか…。」

 

  さっきの正体はレビアだ。大きな爪を使って俺を切ろうとしたのだろう。

  上からの攻撃なら、さすがに防げない。それを利用したのか。

  隊長がいなければ、俺はこいつらの餌になっていただろう。


 「ありがとうございます。」

 「礼は後でいい。頼むぞ!!」

 「了解!」


  俺はレビアに向かって切りかかった。

  レビアは右手の爪で剣を防いだ。そして左手で俺を殴る構えをした。

  咄嗟に後ろに下がり、間一髪拳を躱した。

  

  今だ。

  そう思い、左手から魔力を剣に流した。レビアは自分の爪を見ていてこっちは見ていない。

  

 「はぁ!!」

 

  剣を大きく振って白色の斬撃を飛ばした。

  見事斬撃はクリーンヒットしてレビアは大きく吹っ飛んだ。

  10秒を数えるよりも早くレビアの体は消えた。やられたのだろう。

  

 「…ん?」


  安心したのもつかの間、どこからかレビアが出てきた。

  しかも複数だ。全く面倒くさい。

  レベルは8。俺は対等に戦えるだろうか?

  てか、何か違和感がある。前と違うような…。

  まあ、そんなことを気にする暇もない。やつらに向かって斬撃を飛ばそうとした、その時だ。

  

 「待て!奴らは普通のとは違う。」

 「え?」

 「目を見てみろ!赤くなってるだろ。これはやつらの固有魔法によるパワーアップだ。」


  やつらの目は充血しているみたいに真っ赤だ。

  真っ赤の目には既視感があったが関係はなさそうだ。

  

 「パワーアップ?身体的能力が向上してるんですか?」 

 「奴らは空間が一定の暗さになると身体能力が向上する。周りを見てみろ。さっきよりも松明の灯が少なくなっている。きっとカイトの斬撃の風圧とかで消えたのだろう。」

 「そんな…。」

 「今のお前じゃ攻撃が通用しないだろう。それに今のやつらに刺激を与えたら、複数で襲ってくる。幸いやつらの感知能力は低そうだ。そこで…俺の魔法だ。」

  

  隊長は槍を軽く揺らして、思いっきり地面に刺した。

  空中に無数の札が現れて、札は俺の体を包み込んだ。

  その直後、体の内側から信じられないほどの力が沸き上がった。不思議な感覚だ。

  

 「『終身の札』の効果はどうだ?」

 「これが、バフ?すごいな…。自然と力が出てくる…。」

 「さて、その力でやつらを倒してこい!」


  俺はレビアに向かって走った。

  初速度からさっきまでと違かった。少し力を入れて走っても、普段の全速力並みのスピードだ。

  やつらは俺に気づいた。ただ、もう遅い。

  

  一番前にいたレビアは、構える隙も無く、俺の剣に切られた。

  まるで包丁でパンを切るように簡単に切れた。ギコギコしないでレビアの体は真っ二つになった。


 「&$%"'$((!!!」


  残りのやつらは発狂して、集団で突進してきて大きな爪で俺を切り裂こうとした。

  本来ならよけれないだろう…。

  しかし、驚異的なジャンプ力により、やつらの攻撃を軽々とよけた。

  あのバフでは、通常の何倍もの高さのジャンプができるようだ。正直自分でも驚いてる。

  

 「はああぁぁ!!!」


  空中で剣を下向きにした。ちょうど真下にいたやつの体に直撃した。

  その直後、俺の周りにも衝撃波が広がり、複数にダメージが与えられた。

  生々しい音が部屋に広がり、剣を体から抜いた。

  


 「$%"!+#$!!!!」

  

  後ろにいたレビアが大きな声を上げ、両手の爪で斬撃を飛ばしてきた。

  赤く濁った色だ。

  

  俺は剣を斜めに構えて斬撃を受け止めた。

  受け止めた瞬間、体に大きな衝撃が来た。

  斬撃は力が強く、俺の体は少しずつ後ろに下がる。力を抜けば一瞬で吹き飛ばされるだろう。

  

 「ぐああ!!」

  

  馬鹿力により斬撃を弾き飛ばした。腕に力が入らない。

  ただ、それは俺だけじゃない。

 

  レビアのやつもさっきの攻撃が起死回生の一撃なのだろう。さっきから息切れをしていて襲う気がないように見える。

  なら、こっちのもんだ。


 「これでも…くらえ!」


  疲れながらも思いっきり剣を振りかざした。斬撃はレビアに向かって真っすぐ飛んだ。

  レビアは両手の爪でバツの字を作るように構えた。

  さっきの俺と同じく受け止める気だ。なら…。


 「&%'#(!!!!!!!!!」


  叫んで気合を出したのか、俺の斬撃を思いっきりはじいた。斬撃は部屋の壁に当たった、

  爪は傷がついてない。思っていたより爪は頑丈のようだ。

  


  ただ、やつは爪によって視界が奪われていた。

  そう、今俺がレビアの後ろにいることに気づいてなかった。

 

  気配を感じて後ろを振り返ったが、その時はレビアの体に剣が突き刺さっていた。

  レビアの腕は動かない。もう意識はなさそうだ。


 「戦いの最中に敵から目を離さないほうがいい。このように命取りになるからな。」


  剣を抜き、最後に首を切り落とした。

  本来なら目を開けられないほど過激だが、この世界に来たらそれすら平気になった。

  

 「さすがだ。まだ動きはぎこちないが、確かに強い。レビアくらいなら朝飯前だろう。」

 「どうも…。それにしてもこの部屋って――。」

 「また、レビアが現れたぞ!一体どこから来たんだ?」



  部屋の壁側にレビアがいる。しかもさっきよりも数が多い。

  おかしい。さっきまでいなかったし、この部屋には扉などもない。

  まるでリスポーンをしているみたいだ…。


 「終焉の札!」

  

  隊長はさっきの札よりも大きい札を6枚発生させた。

  6枚の札は地面に突き刺さり、金色の光を発生させた。

  その光に目が押しつぶされそうになり、目を閉じた瞬間、俺の体には電流が走るほど激しい衝撃が来た。 

  

  体からみるみる力が湧いてくる。さっきとは比べ物にならないほどだ。

  体も軽く感じ、魔力も回復した気がする。

  

  レビアの群れは徐々にこっちに向かってきている。

  数的に有利だから余裕なのだろうか。

  ならば、その余裕を絶望に変えてやるしかない。


  俺は魔力を溜めて、大きく剣を振りかざした。

  斬撃はさっきよりも大きい。ただ、それよりも大きな変化があった。  


 「斬撃の色が…金?」

  

  そしてやつらに当たった時、やつらは斬撃の風の力で集められて、斬撃は派手に爆発した。

  まるでゲームにある必殺技を使ったみたいだ。

  

 「%$%&#'"ーーーーー!!」


  レビアの群れは大きく吹っ飛んで空中で消えた。

  急に体が重くなった。魔力を使いすぎたのだろうか。

 

 「今の斬撃って…。」

 「今のか。あれは俺の終焉の札の効果だ。俺が多くの魔力を使うことでカイトの身体能力の向上と魔法を1段階上げることができる。さらに魔力も回復できる優れものさ。」

 「魔法を1段階?魔法にもレベルってあるんですか?」

 「ん?そんなことも知らないのか?ま、後で教えてやるさ。さてそろそろ――。」



  その時、後ろから聞き覚えのある声がした。

  俺と隊長は同時に後ろを見た。

  

 「'%("'#(!(……」



  そこには20体ほどのレビアと、少し大きくて浮かんでるやつがいた。

  魔物だろうが人に近い。大きさ以外はまんま人間だ。

  姿は割とレビアに似ていない。いや、そんなことはどうでもいい。


  やはりおかしい。さっきまで絶対いなかった。これはつまり、


 「レビアが何かによって召喚されてるな。」

 「やっぱりそうですか…。何かって…。」


  奥にいる浮かんでるやつはにやりと笑った。


 「君たち。僕の研究室に入らないでほしいなぁ。」


  気味の悪い声が奥から聞こえた。

  どうやら大きいやつの声だろう。


 「せっかく僕がレビアの個体を量産してるのに君たちに倒されちゃまた作り直さなきゃいけないじゃないか。こっちだって遊びでやってるんじゃないんだよ。」

 「お前、何者だ?」

 「僕?ただのメリアレットの研究者だよ。研究者といっても僕も魔物だけどね。」

 「貴様、研究して何する気だ?クレアを滅ぼそうとでもしてるのか?」

 「おお怖い。別に僕はそんなつまらないことはしないよ。もっと面白くて、派手なこと。」

 

  研究者はにやにやしながら答える。その態度と言動にいちいち腹が立つ。

  剣を強く握ったとき、隊長が俺の腕をつかんだ。


 「やめろカイト!あいつは俺たちでは歯が立たない。」

 「……。」

 「お、ガキと違ってよくわかってんじゃん!僕は無駄な殺傷はしない主義だから、喧嘩を売らないほうが寿命伸びるよ!」

 


  ここで倒さないと面倒なことになりそうだ。ただ、戦っても勝てそうにない。正直それは俺にもわかっていた。

  このまま逃げる自分が許せないだけだ。


 「ま、さっきいい個体見つけられたし、もうここに用はないかな?んじゃ僕はここで♪残りのこいつらはゴミだし、君たちに処理は任せるよ!」

 「おい待て!!」

 

  手を伸ばそうとしたときに研究者の姿は消えた。

  さらに近くにいたレビア1体も消えていた。逃げられたようだ。

  

  それと同時に19体ほどのレビアが一斉に襲ってきた。

  獲物を狩る目をしている。


  反射的に一歩引いた。さすがにこんなに一気に相手にはできない。

  俺が下がるのと同時に、隊長が前に出た。

  

 「隊…長?」

 「安心しろ。少し驚かせるかもしれないな。」


  そういって槍を地面に刺した。さっきのバフの時と動きは変わらない。

  しかし、首につけていたネックレスを取った。

  そしてネックレスを両手で握り、


 「蒼古なる化身、わが身を委ね、一心を砕き、奇跡を欺け。螺旋風燐!」

 

  そう唱えた。

  その瞬間、杖から大きな風が巻き起こった。

  

  その風は杖を中心に部屋中に広がっている。

  あまりに強くて、何かにしがみつかないと飛ばされそうだ。


  隊長は両手で杖を持った。

  そして勢いよく、杖をレビアの群れに向けた。

  

  そっからは何が起きたのか、未だにわからない。

  ただ、隊長の魔法の風でレビアの群れが粉々になったのは分かる。

  様々な叫び声が聞こえ、俺は思わず目をつぶった。

  

  少し経つと、部屋が急に静かになった。あまりにも不気味だ。

  床には倒れたレビアが何体もいる。

  生存確認はしなくていいだろう。

  

 「これで、終わった…?」

 「ああ、部屋を見てみろ…!」


  部屋は黒や紫っぽい色から少し明るくなって白っぽくなってる。

  魔物がいなくなって負のオーラでもなくなったのだろうか。


 「それにしても、長かったな。お疲れ様!研究者について気になるが…。」

 「まぁ、それは後で考えましょう。それより…。」

  

 

  何か忘れてると思ったら、とんでもないことを忘れてた。

  そう、出口がない。

  

  魔物を倒したから壁が壊されてるかなー、とは思ったがそんなことはない。

  よく見ると、隙間なくぎっしり積まっている。これを壊すしかないのか。

  研究者の野郎は消えたから脱出できたのだろうが、俺たちはそんなことできない。

  

 「カイト。お前の斬撃でこれを壊せないか?」

 「真面目に言ってるんだったら申し訳ないんですが、傷一つつかないでしょうね。」

 

  俺の斬撃は生物にしか効かなそうだ。

  さっき斬撃がレビアによってはじかれて壁に当たった時、壁には傷がついてなかった。

  きっとこの岩も同じだろう。

 

  俺たちは2分ほど熟考した結果、隊長がバフをかけて俺が金色の斬撃を当てる。そういう考えになった。限界とか言うなよ。それほど危機が迫ってるんだ。

  

 「うおぉぉ!!」


  思いっきり剣を振り、金色の斬撃を飛ばした。

  

  結果は予想通り大きな音がしただけで、岩自体に変化はない。

  もうお手上げだ。


 「カイト、遺言は聞いてやる。」

 「ちょ、ちょっと。俺はまだ生きるつもりですよ。…まぁ良い案はないですけど。」

 「来月発売の小説の続きが気になるな…。あの終わり方からどうなるんだ?まさか新しい敵でも出るのか??」

 

  隊長は独り言をぼそぼそと言っている。戦いの時とかは頼りになるのに、ここでは全く頼りにならない。ただ、不安になる気持ちもわかる。

 

 「……ト………ん……あ…」

 「この声ってエイキか!?」


  壁の奥からエイキの声が聞こえる。小さくだが誰かと話をしているようだ。

  時々大きく驚いた声も聞こえる。

  

  こっちから叫ぼうにも、さっきの戦いで多くの魔力を使って疲れてしまった。早く休憩して魔力を回復させなければ…。

  

  俺はその場に座り込んだ。エイキたちが助けてくれるかも、そういうことを考えるしかなかった。きっとエイキも俺たちが閉じ込められてるのを知ってるはずだ。

  俺らにはどうすることもできない。ここはエイキたちに頼るしかない。

いろいろとあって投稿が遅れちゃいました。これからも更新していきたいと思います。

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