2話 戦闘
「はぁ!!」
エイキはアクアベールを使い、次々にレビアにダメージを与えた。やつらは吹っ飛んだり倒れたりしながらもこちらに向かってきた。
俺も加勢しなければいけない。しかし戦い方は分からない。ただ、迷っている暇はない!
そう思い、走って近づいてきたレビアに
「これでも、くらえ!」
レビアの無防備な体に剣を切り付けた。
初めて生物を切った。思ったより固くない。
その瞬間レビアは『%$&"&!'$&!!!!』と訳の分からない言語を叫び、その場に倒れこんだ。
体から血は流れていない。しかし傷がついていないわけではない。
体は完全に切られている。わずかだか体の内部も確認できる。
不思議とグロいという感情は湧かなかった。それに人ではないとはいえ切ったことに対する罪悪感も芽生えない。まるで慣れているみたいだ。
それに、さっきまでは剣が重かったのに、急にほうきくらいの重さになった。
かなり軽い。片手で持てるくらいだ。
「$!%$&"&+{+`!!!!!」
少し遠くで数体のレビアが発狂してこっちに向かってきた。仲間を殺された怒りだろうか、さっきよりも気迫がある。
「これが戦闘…。面白いじゃないか…!」
俺の心で何かが芽生えた。こんなにワクワクするのは初めてだ。
剣を強く握りしめてレビアの群れに突っ込んだ。
レビア達は予想外だったのか、少しだけ怯みだした。
俺の動きは止まらない。気づいたときには奴らはもう目の前にいた。
近くにレビアは3体いる。3対1は普通に考えたら少数側が不利だろう。
しかしそんなことは考えなかった。
「'%)#)"'&!'$!!!」
目の前のレビアは大きく鋭い爪を振り下ろした。
俺は瞬時に剣を横向きに構え、爪を受け止めた。
剣と爪は勢いよくぶつかった。
そいつの力は弱い。俺が力を加えると、奴の爪を振り払うことができた。
爪が剥がれるという無残な結果になると考えたが、思ったより強く指と繋がっているようだ。
振り払われたレビアは体をふらつかせている。
倒れこみそうになっていたが、そんな隙も与えず奴の首を切り付けた。
グシャァ、と脆い音とともに首に深い傷が入った。
急いで首から剣を抜き、レビアの右腕を切った。
腕は首よりも硬かった。それに深く入ったため剣が抜きにくい。
「&%')'$')$"!!!」
両脇から2体のレビアが咆哮を上げた。
このままではまずいと思い、剣の刺さっているレビアの体を思いっきり前に蹴った。
勢いよく蹴られたレビアは倒れて、剣が取り出せた。さすがにこれはグロいと感じる。
しかし怯まず、そのまま右にいるレビアの胸あたりを切った。
「チッ。こいつ!」
ダメージが弱かったのか、胸を切られたレビアは倒れずに俺の剣を掴んだ。こいつも必死だ。
掴まれた瞬間、急に剣は重くなった。最初と一緒の重さだ。
うまく力が入らず、剣を奴から奪えない。
俺は今、無防備だ。仮に手から剣を離しても、素手ではこいつらには勝てない。
俺の後ろには不気味な動きをしながら近づいてくるレビアがいる。しかも2体も。もう一体こっちに来たみたいだ。
そいつらは鋭い爪を構えて走ってきた。
「'%)'&)'&%!!!」
お互いで円を描くように走ってきて、大きく飛び掛かった。
俺は咄嗟に剣を離そうとしたが、
バン!!と俺の後ろで何かが爆発する音が聞こえた。
振り返ると2体のレビアは大きく吹っ飛んで10メートルほど先で倒れた。
よく見ると奴らの体は少し濡れている。
エイキのほうを見るとこっちに杖を構えていた。エイキが2体のレビアにアクアベールを撃ったのだろう。もう少しで俺の体は傷ついてた。感謝するしかない。
「いい加減、手を離せ!!」
俺は剣を握っているレビアの手を蹴り上げた。少しだけ剣を傷ついてしまいそうだが、今はそんなのは考えない。
手を蹴られた瞬間、奴は反射的に握る力が緩んだ。
剣を奪うにはこの上ないチャンスだ。
両手に力を加えて剣を引いた。
ヌルッと剣はレビアの手を滑り、ようやく剣が手に入った。
「こいつ、手間を取らせやがって…。」
両手で剣を握ったまま、奴の体を横に切った。
ちょうど胸と腹の間を切り付けて、奴の体は半分になり非常に惨い。
10秒もしないうちに、2等分にされた体は灰になって消えた。
どういう原理なんだ?
周りを見るとさっき倒した奴らの姿も見当たらない。ゲームでは倒した敵はいつの間にか姿が消えているが、それを再現しているのだろうか。
「カイトー!とりあえずレビアの群れを討伐できたね!」
少し遠くで俺に話しかけてる声がした。
エイキが笑顔でこっちを見て手を振っている。これで全員倒せたようだ。
そうか、戦いが終わったのか。
レビアは俺たちの手によって殺されたのか…。何だろうかこの気持ちは。
戦いのときは何も感じなかったけど、、、俺は殺したのか。
人じゃないから幾分ましだが、それでも殺したことに変わりはない。
と、まるで賢者なんちゃらみたいな考え方になってしまった。
よく考えれば先に襲ってきた奴らに非がある、と考えて自分の行いを肯定した。
「カイト。怪我はない?って言っても冒険者なら朝飯前かな?」
「あ、ああ…。」
おちょくっているのか純粋なのか、よくわからない奴だ。
どうやらエイキは腕を怪我しているようだ。包帯で止血してあるが、赤い染みが見える。
この世界の人にも血が存在するようだ。さっきのレビアにはなかったから、もしかして…と思ったが、そんなことはないようだ。
「そういえば、ありがとな。俺が無防備なときに守ってくれて。危うく命を取られるところだった。」
「あー。ギリギリ間に合ってよかったよ!もしかして、僕カイトの役に立った?」
「あぁ。それはもう十分なほどにな。」
かっこいいことを言ったつもりだが、どう考えても俺のほうが活躍してない。
敵は10体くらいなのに、俺が倒したのは3体。
それに危ないところを助けてもらっちゃっているし、今回のMVPはエイキだろう。
「おーい。討伐ご苦労様!村のみんなの回復も復興も完了したぞー!」
村から大人の声が聞こえた。戦いが終わったのを気づいたようだ。
「わかったよー!今行くね!ほら、カイトも!」
そういって小走りでエイキは向かった。
けがしているのに、なぜか元気だ。正直うらやましいな。
「おー!冒険者の少年!!今回は本当にありがとう!」
「いやー、どうも…。っていうか村長、この剣って何ですか?」
「おぉそうだった。この剣について説明しないとな…。」
約10分ほどの説明がされた。正直途中から飽きて聞いてなかったから、重要なところしか覚えてない。
まあどうやら、この剣は『魔力を使って切る』剣らしい。
この説明を聞いた時、俺は度肝を抜いた。あの時軽くなったのは、魔力をこの剣に流したからだ。つまり、本当に俺にも魔力が存在する。
最初に重かったのは俺が魔力を流していないからだそうだ。戦闘になったとき、俺は無意識に魔力を流したらしい。正直区別がつかない。戦闘に入るときに特別なことをしたわけではない。
ちなみに今は重い。片手では持てないくらいの重さだ。つまり魔力を流していない。
(てか、剣の説明は戦う前にしてほしかったぞ!けがしてたし、緊急事態だからそれどころではなかったにしてもなー。)
「それで、君。名前はなんて言うんだい?」
「俺はカイトって言います。よろしくお願いします。」
「そうか、カイトか。そうかそうか…。」
村長は小さい声でつぶやいた。
そう言えば村長は俺より少しくらい大きい。現実世界では俺の身長は173cmほど。
この村長は明らかに還暦を迎えて10何年って感じだが、俺よりちょっと大きい。
フィクションだから身長を高く設定しているのかもしれないが、それにしても不自然である。
何なら周りの大人たちは俺より15cmほど大きい人ばかりだ。185ほどの男がポンポンいる村などあるだろうか。
今、エイキと俺の身長は数cmほどの差しかない。
俺の勝手な予想だと、エイキの身長は160前半だと思う。それよりちょっと大きいくらいだから167cmくらいか?
とどのつまり、目が覚めたら、体が『少し』縮んでしまった、ってやつだ。
「ん?振動?」
脳内で考察を繰り広げてると、ブーブー、っと腕時計から振動を感じた。
見てみると『新規メッセージ』という文字が表示されてた。
この腕時計には時計以外の機能があるようだ。それにしても誰からのメッセージだ?もしかして運営からか?
メッセージを開こうと思ったが、やり方が分からない。機械は苦手ではない。現実とかけ離れているためだ。
新規メッセージというところをタップしても反応がない。ダブルタップしても変わらない。フリーズしたのか?、と思いながらも長押ししたらメッセージを開けた。
「細谷カイトさん。順調に進んでますか?風間です。少しご説明をしたいのでお会いしませんか?メッセージの下にある、このリンクを押してください。」
と、風間らしき人から怪しいメッセージが来た。もはや詐欺メール感しかないが…。
てか、現実世界の人からメールくるのか!?どうなってんだこの腕時計…。
まあ、押してみて損はなさそうだ。それに何かの説明があるらしいし。
とりあえず、そのリンクとやらを押した。
その瞬間眩い光が目に入ってきた。
強く引っ張られる。体が腕時計の中に吸い込まれそうだ。
「うぉぉぉ!!」
体が落ちる。急に地面がなくなった気がする。
落下速度が速く、目を開けられない。俺は底が分からない奈落に落ちた。
戦闘描写は絵がないのでかなり表現するのが大変でした。分かりにくいかもしれませんがご了承ください。