目が覚めると物語序盤の悪役になってました
読み返してみたら、今流行りの定番物語が書けそうな事実に気づいてorzってなったので、自分でやってみた結果です。パロディ許せない方はUターンでお願いします。
「え?ナニコレ?」
ふっと、意識が浮上した。
ら、目の前の鏡にはゴージャスな美女が映っていた。
しかもその美女、どうやら私らしい。
「いや、なんでやねん」
関西人でもないのに、思わずつぶやいちゃったのは、最近はまってたお笑い番組のせいだろう。うん。
若干つり目の大きな瞳はまつげばさばさでシッカリアイラインに濃いめのシャドウ。
唇は真っ赤に塗られ、豊かな髪は複雑に編み込まれ、宝石の付いたゴージャスな髪飾りでアップに。
豊かな胸はコルセットで強調され、ぎりぎりラインを責めたセクシーなドレスはこれまた赤い。
てか、これ下手したら胸ポロリしちゃわない?大丈夫?
で、広々と開いたデコルテを飾る大粒の宝石を多用した派手なネックレスにイヤリング。
似合っているけど、重量はかなりのもので、二時間もつけてたら肩こりそうね。
「うん、派手目の美人。控えめに言っても美人。でもケバイ」
まじまじと観察して、思わず感想をポロリ。
しかし、この顔。どこかで見たような?
首を傾げた瞬間、ふわりと浮かんでくる記憶。
私の名前はローズマリア。
リンドバーク公爵夫人で、旦那様の名前は、ディノアーク。
「……ローズマリア?」
浮かんだ名前に感じる既視感。
「ん?それって、最近暇つぶしに読んだ小説の序盤に出てくる悪役のなまえ?」
目を丸くする鏡の中の美女を凝視する。
挿絵なんかはなかったから、想像するしかないけど、確かに二次元化したらこんな感じ、カモ?
「いや、マジで?」
呟いた瞬間、ぐらり、と視界が揺れた。
そして、次の瞬間、まるで嵐のように記憶が脳裏に渦巻いた。
それは、ローズマリアとして生きた女性の記憶。
人一人分の記憶を無理やり脳みそに焼き付けられる負荷は相当だったらしく、次の瞬間、私はばたりとぶっ倒れたのだった。
チャン、チャン。
「……って、夢を見たんだ~~、って言いたかったなぁ」
目が覚めても私はローズマリアのままだった。
正確には、日本という国に生まれて、成長して働いて結婚して生きていた50代女性の私が、なぜだかローズマリアの記憶をもってローズマリアの体に入ってしまった、っていう。
ん?これだと、ローズマリアの中に「私」の意識が入ったの方が正解なのかな?
死んだ記憶はないんだけど、どうなってるんだろう?
まぁ、良く分からんが、私的にはそんな感じの現状なのだけど。
「私、ローズマリア。24才。既婚者。二人の子持ち」
言葉にして、大きくため息をつく。
蘇ったローズマリアの記憶の外に、私の中にはもう一つ「ローズマリア」の記憶がある。
それは、暇つぶしに読んだ小説の悪役としてのローズマリア。
婚約者に婚約破棄を願われて受け入れられず、無理やり結婚した挙句、側室になった女性をいじめ倒して癒えない傷を負わせて屋敷を追い出し、その十数年後には、娘がその女性を事故で殺めてしまう。
そのうえ、どうも不貞だの横領だののオンパレードで断罪されてしまう。
「真実の愛を見つけたから婚約破棄してくれって言う相手もひどいけど。それに抵抗して結婚した挙句、相手の女いじめ倒して、最終的に離縁で修道院行きって」
もう、何がしたかったのかと言いたい。
いや、旦那を独り占めしたかっただけなのか?
それにしては、いろいろおかしな記憶もあるんだけど……。
「好きは好きだけど、それ以上に、王弟とか公爵家の後継ってステータスに固執してるかんじ?さらに、自分以外を愛することを認められない、っていうか自分が一番じゃないことが気に食わなかったのかぁ」
それゆえに、相手を貶め蹴落としたり、自分磨きのために散財したわけか。
今のところ、不貞の記憶も横領の記憶もないけど。
実家から連れてきた侍女がやけに羽振りがよさそうな感じがするから、ちょっと怪しくはある。
「ていうか、結婚して7年目だし。すでにレイアース怪我させて追い出してるし」
物語の第一段階というべき部分は終了している様子。
ちなみに旦那様は現在森のお家に滞在中。
私は気晴らしにお友達とお芝居観に行こうとしてたわけね。
「なんで、私の記憶を思い出したのか分からないけど、これっていわゆる異世界転生ってやつよね?」
その一言でまとめていいものか分からないけれど、実際こうなってしまったのだからしょうがない。
「ローズマリアが破滅したのは、ディノアークに固執したから。だけど、今の私は別に旦那に執着してないし、何なら愛情も……ないわね」
ローズマリアの記憶はあるし、なんでそんなことしたのかの理由もわかるけど、どうも他人の話を聞いている程度の感覚しかない。
よって、愛を乞う感情はないし。
よそ様の旦那さんの話を聞いて、大変ねぇ、なんて思っている感覚だわね、これ。
「つまり、さっさと離婚してレイアースを森の家から呼び戻したらいい?あ、でも、この世界で離婚ってちょっと立場が悪くなるんだっけ?」
現代日本に比べて女性の地位がいまいち低いんだよね、この世界。
そもそも、ローズマリアって、箱入りお嬢様が、世間知らずの奥様にクラスアップしただけだから、離縁しても生きていく術がない。
生家は弟が家を注いでいるけど、あまり仲良くないんだよね。
子供の頃、都合のいい下僕扱いしてたから、さもありなん。
頼みの綱の両親はまだ健在だけど、領地に戻ってのんびり隠居生活してるし、そもそも母親にはさんざん結婚止められたのを振り切ってるから、子供二人連れてそこに身を寄せるのもちょっと肩身が狭いよね……。
「って、そうじゃん、子ども」
ローズマリアには二人の子供がいる。
ライラ5才。ハイドジーン3才。
柔らかな茶色の髪に青い瞳の可愛い子供たちだ、けど。
ローズマリア、ほとんど子供たちとかかわってないね。
基本は乳母やメイドにまかせっきり。
旦那が屋敷にいる時に、いい母親アピールするときか、本当にすることなくて暇つぶしにお人形の着せ替えごっこのお人形役をさせているくらい。
「え?母親失格じゃない?それともこの世界のお貴族様の子育てってこんな感じ?」
首を傾げてみても、残念ながらローズマリアの記憶にはない情報だったみたいで真相は謎。
あ、でも自分は父親や母親にベタベタに甘やかされてるじゃん。なんでそれで、子供達は放置するかね?あ、自分至上主義か。納得。
「とりあえず、子どもたちに会ってみようかしら?」
どうやら、情報過多でぶっ倒れた私は、ベッドへと運ばれたらしく、今はネグリジェ姿で横になっていたのよね。
サイドテーブルにあるベルに手を伸ばして鳴らす。
とにもかくにも現状把握と着替え、あと栄養補給は大事。
お腹すいた。
パタパタと走る足音が近づいてきて、眉をしかめる。
どうゆう判断が下されたかは知らないけど、屋敷の女主人が倒れて寝込んでいるのに、誰も側についていないとかありえない。
挙句に走って移動とか。
ローズマリアは気にして無かったみたいだけれど、随分程度の低い侍女を身近に置いていたのね。
「……あぁ、おべっか使いだけは上手だったのね。それに騙されているローズマリアって、本当に子供だったんだわ」
表面しか見ていない子供。
未来のことまで考えず、今が楽しければそれでよかったし、お勉強も嫌いだった。
取り繕うためか「美しい私」が好きだったからか、マナーだけは完ぺきだったみたいだけど。
「……とりあえず、現状と子供たちの把握。その先は、それから考えよう。一応、物語が始まるまで、まだ時間はあるみたいだし」
ゆっくりと体を起こした時、ノックと同時に扉が開いた。
はい、減点。
扉は返事を聞いてから開けましょう。
入ってきた「ローズマリアお気に入りの侍女」に向かって、私はゆっくりと笑みを浮かべた。
読んでくださり、ありがとうございました。
この後はテンプレ通り子供可愛い!とメロメロになったり、旦那さんと和解したりするかと思います。




