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森での生活②~薬草のお勉強って大変(後編)

本日2話目です

「お薬が苦いのはしょうがない、で終わってはいけないと思うの」

 セデスの葉を丸薬にするために加工しながら、ミーシャは唇を尖らせた。


 ミーシャの訴えは、薬師ならば一度は直面する問題でもある。

 特に幼い子供は、薬の苦みを嫌ってなかなか飲んでくれない事がよくあるのだ。


「そうねぇ。だけど、おいしい薬があったら、必要もないのに食べちゃう子供がいるのよね」

 その隣でミーシャに指導しながら別の薬を調合していたレイアースが、擦り鉢から顔をあげることもなく、軽い調子で答えた。

 そして、同じ問題に直面したレイアースが、当然対処方法を考えなかったはずもない。


「え?お薬、食べちゃったの?」

「そう、お菓子感覚で。庶民には甘いものは貴重品だしね。幸いセデスだったし、一~二回分をなめたところで大した量じゃなかったから大事にはならなかったんだけど」

 困ったというように肩をすくめるレイアースは、あの時の騒ぎを思い出して笑い出してしまった。


 子供が薬を飲んでくれなくて困ると親に相談されたレイアースは、丸薬の表面に薄く糖蜜の衣をまとわせたものを作ってみたのだ。

 口に入れてすぐに飲みこめばほんの少し表面が溶けても甘いだけだし、子どもたちも嫌がらずに飲んでくれるようになったと最初は好評だった。


 ところが、しばらくするとどこの家庭でも、置いていたはずの丸薬が無くなるという事件が起きたのだ。

 犯人は子供たちで、丸薬の周りの甘さに魅了され、こっそり取り出しては舐めていたのだ。

 しかも、苦い中身を上手に残してなめとれるか研究していたようで、子どもたちの遊び場にこっそりと中身だけが隠されていた。


「お砂糖の甘さと果実の甘さは別物だし、夢中になる気持ちも分からないわけじゃないけど、ね」


 レイアースはさほど気にせず大笑いしただけだったが、好意で薬を分けてもらっていたと認識している大人たちの怒りは深く、子どもたちは大目玉を食らった上に、罰としてセデスの葉をそのまま口に突っ込まれていた。


 セデスの葉は、加工せずそのままでも一応効果があるのだ。

 ミーシャも経験した通り、飛び上がるほど苦いだけで。


 セデス自体は、比較的何処でも見つけられる繁殖率の高い薬草のため、医師や薬師のいない田舎では、乾かした葉を砕いたものをそのまま粉薬として飲んでいるし、その村も、レイアースが来るまではそうしていたそうだ。

 より効果の高い丸薬に加工してもらえただけでもありがたいのに、と怒りもひとしおだったのだろう。


「あぁ、それは罰になるよねぇ」

 勉強のためとかじらされたばかりのミーシャは、遠い目をした。

「薬にした方が苦くなくなると思ってなかったよね」

 水を飲んでもなお口に残る苦みは、しっかりと記憶に染みついている。


「そんなことがあって、元の形に戻ったのだけれど、気になるならミーシャが考えてみて。ただし、甘くしない方向でね?」

「う~~ん。うまい方法がないか、考えてみる」

 生薬を調合しながら笑うレイアースに、ミーシャは頷く。



 そんな思い出話が実現されるのは、また、別のお話。

呼んでくださり、ありがとうございます。


甘いお薬って、舐めたくなりません?

あれ?夜凪だけですか?


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