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変なやつとオタクと  作者: 駄作量産型人造人間
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変なやつ

最初に違和感を覚えたのは俺が転校してきてやっと1ヶ月が経とうと言う時だった。

当時小学校5年生の秋だった俺、佐伯太陽は好意と言うよりは好奇心で彼女、佐藤玲を目で追っていた。

というか気になるなという方が難しいという見た目をしていた。

下から見ないと目が見えないんじゃないかという前髪に、今時では珍しい三つ編み。

そして小学校5年生とは思えないほど成長している胸。

その子は教室では勉強か本を読んでおり、その子が移動教室の音楽などの時間になるとほぼ必ずと言っていいほど遅れてくるのだ。

このことを周りに聞いたが何となくはぐらかされているように感じたため直接彼女に聞いてみた。


「どうしていつも一人でいるの?」


我ながら本当に馬鹿なことだったと思う。

どこからどう見てもその子はいじめられていたのにまさかそんなに直球に聞くなど愚かとしか言いようがなかった。

だが、まだ純粋な時期だったためそんなことを考えずに聞いてしまったのだ。

俺がそう聞くと、目は見えないがおそらく睨んでいるだろうとわかるような口調で


「そんなこともわかんないの?」


と言われてしまった。

明らかに避けられている。

しかし分からないものは分からない。

自分で言うのもなんだが俺は研究家気質というか分からないことがあったら調べまくる性格をしていたため、1度拒否られたぐらいでは終わらなかった。


「じゃあどうしていつも音楽の時間遅れてくるの?」

「……。」

「どうしていつも本読んで勉強してるの?」

「……」


そうして聞いていくうちに彼女がとった行動は無視一択だった。


「ねぇ、どうして無視するの?」

「……。」


彼女は徹底して無視を続けた。

しかしこの性格を持った子供の飽くなき好奇心は無視されているということは、つまり大事なことで隠されているという思考になってしまい、よりいっそうそこに興味を引かれた。

さらに彼女の家は自分家の隣に家を1個挟んだところにあったため朝から晩まで追求は続いた。

そうして追求すること1週間。

聞くだけではダメと知りまるでストーカーのように彼女のことを追い回していた帰り道での事だった。


「あのさ、本当にもうなんなの……!」


やっと口を開いてくれた。

しかしそれはやっと話してくれると言うよりかは怒りによるものだった。


「どうせあなたも私の見た目目当てなんでしょ!?」

「な、なんでわかるの?」

「分かるわよ。今までの男全員そうだった。ちょっと胸がでかいってだけで私を変な目で見てきたり

本当に迷惑!」

「ん?なんの事?」


残念ながら小学校5年生にしてまだ性というのを全然理解していないお子様には何を言っているんだという感じだった。

そんなことより


「お前は大人のスパイなのか!?」

「はぁ!?」


1週間かけて自分なりに考え抜いた結果だった。

見られないように前髪で顔を隠している顔、どうしようもなく出てしまった胸、これらが彼女を大人と言わしめる証拠だった。


「さぁどうだ。化けの皮を脱げ!」


対する彼女の答えは


「……はぁ???」


当然意味がわかっていなかった。


「でも、そうじゃなきゃ証明できないだろ。子供が本読んだり勉強したり、普通はそんなことしない!」


その答えにどうやら呆れているようだった。

そしてまるで母親がわがままを言う子供をどう説得するか考えている時のように手を頬に当て考えていた。


「わかった。じゃあうちに来て。」


それが彼女の出した答えだった。



自分が住んでいる周辺の土地は立地が良いためある程度裕福な家庭が多く彼女の家もそのうちの一つだった。

彼女の家に入るとめちゃくちゃ歓迎された。

彼女のお母さんは「玲にお友達!?それも男の子!?」ととても驚いてたくさん質問などをされた。

それが恥ずかしかったのか彼女は俺を2階にある彼女の部屋へとすぐに連れていった。

彼女の部屋はなんというか本がいっぱいあった。

ただ本と言ってもほとんどがライトノベルでありそれ以上に漫画もあった。

それ以外にも色んなアニメのキャラクターのグッズなどがありいわゆるオタク部屋と言うやつだった。


「どう?引いた?」


まるで引かれることが当たり前かのように聞いてくる。

しかしそんなことは出来なかった。


「うわーすっごい!え!?これ限定版のフィギュアじゃん!これ応募者100名とかで絶対当たんないって思ってたのに、いーなー。」

「ちょ、これの部屋見てなんとも思わないの!?」

「いや、めっちゃすげーって思ってるよ。あ、これ見たことある!」


残念ながら俺の両親ともアニメやゲームが好きで、それは当然子供も同様だった。


「なんだ、こんな趣味あったなら言ってよー。俺もめっちゃ好きなのに。」


そう言って彼女の方を向くとそこには前髪をカチューシャで上げた彼女がいた。

長いまつ毛に澄んだ瞳、目があることにより顔全体のバランスが均等に取れているように見えた。


「どう?これが私。別に大人なんかじゃない。学校で本読んでるってのもそこにあるライトノベルを読んでいるだけ。普段はブックカバーつけてるけどね。」

「らいとのべる?」

「漫画みたいな小説ってこと」

「じゃあなんで勉強してるの?」

「別に、中学受験して同じ学校の人がいないとこに行きたいの。」

「どうして?」


彼女に会ってから何度目か分からない質問をする。

彼女は躊躇うことなく


「私、いじめられてるの」


と言った。

"いじめ"まだ人の悪い所を知らない子供だった俺はそんなものは存在しないと思っていた。


「それって影で暴力受けたりってこと?」

「いいやそんなことは今どきないよ。今は荷物を隠されたり、悪口言われたり。でもそれ故に陰湿。」

「そ……そんなの誰が?」

「さあ?多分クラス中。あなたの友達とか?」


この時の俺はそのことをはぐらかしたりしたヤツらに酷く失望していた。


「どうして?」

「確か……始まったのは去年の夏だったはず。あなたは私の顔を見てどう思った?」

「え……その、可愛いよ」

「うん、ありがと。そのうえで私って周りより胸とか成長が早いの。だから男子とかによく告白されるの。」

「へ、へぇ。」

「そ、それで私は当然断るの。だって告白してくる人全員私の外見目当てなのが見え見えなんだもん。そしたらその男の子を好きだった女の子とかに色々言われるようになって。そっからかな、私の部屋に遊びに来たことあることかが部屋のことみんなにバラしてそれでさらにいじめられたの。」

「……それは許せない。2次元のことを悪くいうなんて絶対に許せない!」

「……そこ?」

「いやっ、もちろんいじめていることも許せないけど1番はそこだよ!」


俺は思わず部屋を出た。


「ちょっとどこ行くの?」

「明日絶対にみんなを謝らせるから。じゃ、また明日!」

「え、また明日……」




また明日なんて言ったのはいつぶりだろう。

みんなが私をいじめてきてもう1年以上経っているからそれ以来だろう。

私のあいつへのこの時の評価は変なやつでしかなかった。

だってそうだろう出会ってそうそう「なんで一人でいるの」って普通聞かない。

無視されてるのに1週間もまとわりつかない。

私の部屋見て全然引かないどころかこれ知ってるとか言い出す。

そんな変なやつは私にとって初めてで、新鮮でどこかの主人公かって思わせた。

だからだろう。

最後に言っていたみんなを謝らせる発言。

それが気になってこんなに早く登校してしまった。

朝のホームルームまであと15分。

いつもの私ならギリギリに登校する。

いじめられてるのが目に見えてるからだ。

とりあえずラノベでも読もうそう思ってカバンから取り出そうとすると、男子が一人私の前に立った。

今度は何されるんだろうと思っていると


「佐藤、ごめん!」


そう言ってきたのは前に私に告白をしてきた男子だった。


「正直お前がいじめられてるのは知っていた。だけど、やめろって言うのが怖くて、でも昨日太陽に言われて気づいたんだ。このままじゃダメだって。」


太陽、あいつの名前だ。

多分だけどあいつがなにかしたんだろう。

そこから先は右にならえだった。

最初に謝ってきた男の子はクラスの中心的存在でそこから他の男子がどんどん謝ってきた。

女子からは数人だけしか謝られなかったがその日昨日までが嘘みたいにいじめは無くなった。

それと同時にあの男の子からアニメとかについて色々聞かれた。

その日の放課後私は彼を事情を聞くためにまた部屋へ読んだ。


「あなた、何したの?」

「特別なことなんてしてないよ。ただ俺の友達にもうあんなことをやめろって言っただけだよ。あと2次元のすばらしさについて少しだけ語っただけだよ。そんなことよりゲームしようよ。」


そう言って彼はなんでもないことのように振舞った

まぁ彼にとって本当になんでもないんだろうけど。

そんな彼のことを今はヒーローとしか思えなかった。

だけど彼のことを好きになった訳では無い。そして今後そんなことはないだろう。

何故なら彼はどこまでも純粋でどこまでもオタクでどこまでも変なやつだったからだ。

だけど多分彼とは長い付き合いになるだろう、趣味も合うし。

そんなことで私は彼を


「ありがとう。太陽。」


そう呼ぶことにした。

どうかこの変なやつとずっと一緒に入れるように。











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