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第59話 洗い場修繕1

 俺は洗い場修理のための図と、排水口の悪臭を消すための解決策を部屋で考える。


 排水口の臭い消しはストッパーだったか……いやトラップという名だったかな。構造的には簡単で、水を溜めて臭いを止めるやつだ。その器具を思い出しながら図を描いていく。

 これを取り付ければ、アイシャの言っていた嫌な臭いも止まるはずだ。


 図を描き上げて、夕方前に洗い場の修理をしてくれる工房に行く。


「すまない。さっき洗い場の修理を頼んだ者だが」

「おう、旦那かい。修理の値段は出てるぜ」


 見せてもらうと、材料費がいくら、工事費がいくらとキッチリした見積もりを作ってくれている。優良な職人のようだ。


「床下まで工事した場合、ここの配水管を太くして新たに排水口を追加してもらいたい。追加でどれぐらいかかる?」


 洗い場の改造図を見せながら話をする。


「この程度なら、銀貨10枚の追加だな。全部修理すると合計で銀貨160枚になるがどうするよ」


 さすがに高いが見る限り適正な値段だな。できれば洗い場をキレイにしたい。お金の備蓄は銀貨で240枚ある、支払いは可能だが。


「この値段を分割払いできるか?」

「うちは一見さんの分割やツケ払いはしないことにしている。するなら保証人を立ててくれ」

「そうなのか、それならボアンさんにでも頼んでみるか」


 俺が知っていて、お金を持っていそうなのはボアンぐらいだな。


「おい、ボアンって、職人ギルドのおやじさんのことかい?」

「おやじさん? ギルドマスターのことか。俺はギルドの職員なんでな、非常勤の技術職員をしている」

「技術職員っておやじさんが直接雇う人だな。それを早く言えよ。旦那の言う支払い方法でいい、それに銀貨145枚でいいぞ」

「安くしてくれるのか」


 何なんだ。ギルドの職員だと話をしただけで、安くしてくれたぞ。


「職人ギルド間での取引は安くする事になっているから、気にすんな。ああ、それと工事は2日半かかるぞ。その間洗い場は使えなくなるからな」

「金額の事など家の者とも相談しないといけない。返事は明日の朝まで待ってくれるか。すまんな」

「ああ、分かった。明日また来てくれ」


 次は、木工職人のグラウスの所だな。


「グラウスいるかい」

「ユヅキじゃないか、魔道弓の話かい?」

「いや、今日は私用でな。俺の家の排水口にこれを取り付けたいんだが、ここで作ることはできるか?」


 俺は持ってきた排水口の図面を見せる。


「排水ということは水を漏らさないように作らないといけないんだな」

「そうだ、防水処理をきっちりとしてくれ。この下の部分で配水管と接続するが寸法はまだ決まっていない。大きい場合はこれぐらいになるな」


 俺は手で大体の大きさを表す。


「なるほど、部品は3つだし、構造も簡単だ。これを2個作ればいいんだな、物はすぐできると思うが、値段はちょっと待ってくれ」


 特注品だしな、値段もすぐには付けられんだろ。


「この図面はもらっておいてもいいかい?」

「図面は持っていてくれ、急ぎはしない。明日また来るよ、その時に配水管の大きさも決まるから、値段はその後に聞かせてくれ」

「その工事をする職人はどこの工房だい?」

「名前は覚えてないな……ギルドの近くの店なんだが」

「それなら、多分あの工房だな」


 職人仲間だと、どの工房かすぐ分かるようだ。連絡を取り合ってくれるなら、こちらも助かる。



「ユヅキさん、おかえりなさい」


 グラウスの工房を出て家に戻ると、カリンはもう居なかった。家に帰ったようだな。

 アイシャとその日の夕食を共にしながら、洗い場の工事の話をする。


「洗い場を全部綺麗にしたら、銀貨145枚要るそうだ。支払いは30日ごとに45枚、50枚、50枚と分けて払う」

「ずいぶん高いのね。私達には贅沢じゃないかしら」

「支払えない額でもないし、毎日の事だ。嫌だなと思いながら生活するより、先に補修して便利に使った方がいいと思うぞ」


 それに分割だ。これなら冒険者の装備を買う余裕もできる。


「それはそうだけど……。そうね冒険者のお仕事をもう少し頑張れば大丈夫よね。ちゃんと修理しましょう」

「よし、じゃあ明日の朝に工房に行ってくるよ。アイシャは先に冒険者ギルドへ行っておいてくれ」


 翌朝、タイル職人の所に行って工事の依頼をする。


「じゃ、工事は井戸の移動も含めて全部するということでいいな。工事開始まで5日待ってくれ」

「それなら6日後にお願いする」

「分かった。工事で排水管を大きくするが、臭いはどうなるか分からんぞ」

「ああ、それはこっちで対処する。大きくする排水管の見本をくれないか」

「この大きさになる。切れ端だが持っていってくれ」


 木製の四角いパイプを俺にくれた。


「じゃあ今回の支払い分、銀貨45枚だ。受け取ってくれ」

「まいどあり」


 今度はグラウスの工房だな。


「昨日頼んだ部品の寸法だが、この大きさの排水管につなぐことになった」


 俺は持ってきた管をグラウスに渡す。


「分かった。だが金額については少し待ってくれ、調べたい事がある。高くなることはないから安心してくれ」

「今回頼んだ物を2つ、工事を開始する6日後までに作ってほしいが、できそうか?」

「それなら充分だ」


 後は頼むとグラウスの工房を出て、俺はアイシャの待つ冒険者ギルドに向かった。


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