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第55話 魔道弓完成

 新型弓の改良も進み、ほぼ完成に近づいている。


「今日は魔道弓を生産できる形で持ってきてもらった。皆で確認してもらいたい」


 弓職人のルフトが改良した矢をテーブルに並べて説明する。


「前回から葉の部分を改良した矢を持ってきている。後で試射してくれ」

「弓本体については、ほぼ完成している。今、耐久試験をしているところだ」


 木工職人のグラウスも完成した本体を見せる。俺もその弓を持って確かめたが、最初に比べてかなり軽くなっているし、作りもしっかりしているな。


「魔道部品の調達も目途が立ちました。いつでも量産に対応できます」


 シルスさんも最初のオドオドした態度じゃなく、皆の前でしっかりしゃべっている。自分に自信が持てたのかもしれないな。

 その後、裏庭で試射したが改良された矢は速く威力も増していた。風属性付与に対応した専用の矢ということになるな。


「今回の試射を見ると、中型弓と同等の威力のように俺には見えたが」

「魔道弓になって威力も増したからな。今より1段強くすると中型弓と大型弓の間の威力になる」

「今後使い方によっては、弱い弓よりさらに弱くして、弦を引きやすくした物がいるかもしれん」

「力の弱い者や連射する事に特化した使い方をする者が出てくるかもしれんという事か」


 新型弓のラインナップも考え直さないといけないようだな。だが対応は簡単だ。本体は変えず弓の部分だけを変えれば済む。

 誤発射防止も手動で解除できるように改良され、魔道部品が壊れた際にも対応できるようになっている。


「壊れた部品の修理はどうなる。エギルの工房で部品交換はできるのか」

「金属部品は取り外せるようになっているが、魔道部品の銀の糸が繊細だ。修理の際は専門店での修理になるだろうな」


 販売後の対応なども検討され、製造から修理まで一貫した態勢が作れそうだ。

 ギルド長のボアンがまとめる。


「これで完成と言っていい状態だな。実際に使用してからの改良はあるだろうが、これで商業ギルドと話をして売りに出すようにしよう。正式名称はまだだが、魔道弓として出していきたい」


 俺が最初に持ち込んだクロスボウとは、機能や威力など段違いだ。売りに出しても恥ずかしくない商品になっている。さすが玄人の職人達だな。


「では、3種類のタイプの魔道弓をそれぞれ20台製造してくれ。今後何かあればこちらから連絡する。今日はこれで解散としよう」


 開発が終わって製造段階に入ったということだな。これで俺の仕事も終了だ。後は職人達に任せよう。

 会議室を出て事務所に向かおうと思った時、エギルが俺に声をかけてきた。


「ユヅキよ、この完成した魔道弓をお前さんに渡しておく。自由に使ってくれ。他の連中もそれでいいと言っている。ボアン、それでいいな」

「ああ、結構だ。販売前だが使ってもらえれば宣伝にもなるだろう」

「そうか、それじゃありがたくもらっておくよ」


 完成品の第1号を俺がもらえる事になった。苦労して改良を重ねた弓は、美しいフォルムと驚異的な威力を持つ。今後の冒険者としての仕事に役立つ逸品だ。


「みんな、ありがとう。大事に使わせてもらうよ」

「いいってことよ。これからも何かあったら声をかけてくれ」


 そう言ってエギル達は帰っていった。



「ただいま、アイシャ」

「おかえりなさい。今日は何だかニコニコしてるわね、ユヅキさん」

「作っていた新型の弓が完成したんだ。魔道弓って名前だけど、その完成品をもらえたんだよ」

「職人さん達と作っていた弓よね。クロスボウじゃなくて魔道弓って言うの?」


 俺は持ち帰った弓をアイシャに見てもらう。今まで苦労して完成させた新型の弓だ。その喜びをアイシャとも分かち合いたい。


「風属性の魔法を利用しているんだ。早く実戦で使ってみたいよ」

「新しい武器が手に入るとそうなるわよね。明日は獣を狩る依頼を受けてみましょうか」


 うん、うん。それがいい。


 その後、魔道弓のお披露目を商業ギルドに対して行うと連絡が入った。それに俺も参加するが、それまではアイシャと一緒にいられそうだ。



 2週間後のお披露目会。ギルドの事務所に出向き、商業ギルドが来る前にボアンと打ち合わせをしておく。


「相手は何人ぐらい来るんだ」

「この前来たギルドのふたりと、販売店側から5人来るそうだが増えるかもしれん」


 新型の弓という事で、興味を持ったこのアルヘナの町に店を構える武器屋の店主が来るそうだ。売る前に販売店としても色々と見ておきたいだろうからな。


「それとユヅキ君、弓の説明で詳しい内部構造だったり、魔道部品の取り付け方法など技術的な事は説明しないでくれ。図面は非公開だが、真似するような連中も現れるから注意してほしい」

「質問されても、『それは答えられない』と言っていればいいか」

「ああ、それでいい」


 魔道弓の見本を3台と、試射用に俺がもらった弓を会議室に運ぶ。机などはすでに用意されていて見本品などを並べていく。


 しばらくすると、ボアンと商業ギルドの人達が会議室に入ってきた。予定よりも多く全員で12人、俺が前に行った専門店街にある大きな武器屋の店長さんも来ているようだ。

 ミアンがお茶をテーブルに置いていき、ボアンが立ち上がってみんなに向かって話しだす。


「今日は集まってくれてありがとう。我が職人ギルドで開発した新型の弓が完成したので、ここにお披露目したい」


 まだこの弓を見たことのない店主達のために、ボアンが概要を説明していく。

 それに対して、商業ギルドマスターの狐獣人のシェリルさんが質問する。相変わらず美しい人だな。


「ボアン。部品表と生産コストの資料をもらったけど、少し高くなりすぎていないかしら」

「部品として魔道部品を使用している。そのため少しコスト高となっているのは認めよう。だがそれに見合う性能を有していると思っている。その説明を開発者のユヅキにしてもらう」


 ここからは俺の出番だな。


「開発を担当したユヅキだ。この新型弓は弓の扱いに慣れていない者でも簡単に扱うことができる。逆に扱いを誤ると自分や他人に危害を与えるため、誤発射防止の装置を取り付けるなどの配慮をしている」


 単純な今までの弓とは違い、色んな機能が盛り込まれていることを強調して説明していく。


「弓の威力を増すための装置が内蔵され、小型ではあるが一般の弓と大差ない性能を有している。これらには魔道部品が使用されており、我々はこの弓を魔道弓と呼んでいる」


 説明はこれぐらいでいいだろう。実際に見てもらった方が早い。


「では裏庭で試射を行なうので、来ていただこう」


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