第52話 冒険者パーティー
「アイシャ、今日の薬草採取はどうだった?」
「うん、採れたけど報酬が少なくて銀貨4枚だったわ」
夕食を食べながら今日の出来事を話す。
「それだと俺が手伝っても、あんまり意味がないな。俺にも薬草を見分けられたら役に立つんだけどな」
「ユヅキさんは職人ギルドの方で仕事ができてるんだから、こっちは私がなんとかするわ」
「明日は俺のギルドの仕事もない。一緒に冒険者ギルドに行って相談してみようか。何かアドバイスしてくれるかもしれない」
「そうね。まだ初心者だものね。色々聞いてみようかしら」
前回のカエルの捕獲と、俺のギルドでの収入で充分余裕はあるが、今のうちに安定的に稼ぐ方法を見つけておかないと先々困ることになる。
翌朝の朝食後。アイシャと一緒に冒険者ギルドに行ってみる。
受付には前に登録してくれた狐の獣人さんはいなかったので、空いた受付窓口で聞いてみる。
「私達、薬草採取以外でできそうな依頼はありませんか? 採取だけでは収入が少なくて」
「冒険者プレートを見せてくれますか? なるほど登録したばかりですね。それでこれだけ成果を上げていれば充分なんですが……猟師だったというのであれば、魔獣の討伐がおすすめです」
「討伐の仕方がよく分からなくて……」
「それであれば、先輩冒険者とパーティーを組んで、実戦で教えてもらう方法がありますよ」
パーティーを組むのか……だが知り合いはいないしな。
「ギルドで先生として登録された信頼できる人達を紹介しますので、その人達とパーティーを組んで学んでください。報酬の半分をそのパーティーの人達に支払う形となりますが、初心者の人にとっては早道になると思いますよ」
なるほど実地研修という訳か。なかなかいい制度があるじゃないか。
「慣れてくれば自分達でパーティーを探してもいいですが、たちの悪い人もいますので注意してくださいね」
トラブルになればギルドが介入するそうだが、明らかな違反がなければ処分できないと言う。このあたりは自己責任という事のようだな。
「分かりました。ユヅキさん、紹介してもらってパーティーを組んでもらいましょうか」
「ああ、それがいいな。俺達ふたりが一緒に入れるパーティーを紹介してくれるか」
「はい。今日すぐには無理ですので、いつからがいいですか?」
「明後日からだな。それで頼む」
「承知しました。パーティーを組む相手にはおふたりの名前と、今までの実績をお伝えすることになっています。ご了承ください」
まあ、その程度の情報を渡すぐらいはいいだろう。相手も俺達の力量は知っておきたいだろうしな。
「明後日の朝、鐘3つになったら、そちらの掲示板左奥の広いところでお待ちください。先方から声をかけてもらえます」
相手が見つからない場合もあるそうで、来なかったら受付に言えば、再度手配してくれるそうだ。
「分かった。それではよろしく頼む」
俺達は受付を離れて掲示板に行って、今日受けられる依頼を探したが薬草採取しかないようだな。
無いよりましだろうと、依頼を受けて山で薬草を探す。指定量の薬草が採れ鐘5つの頃には家に帰ることができた。
「明日、俺は仕事だが、アイシャは休んでくれ。明後日パーティーを組んで実地の指導となるから、万全の体調でいてほしいんだ」
「ユヅキさんは大丈夫なの?」
「俺はデスクワー……、いや図面を描くだけで体は動かさないから大丈夫だ。アイシャは連日山に行っているんだから、ちゃんと休んでくれよ」
「分かったわ、弓の手入れをしておくわ」
翌日、アイシャを家に残して、俺は職人ギルドへ向かう。
その日1日かけて新型の魔道弓の図面を仕上げる。パソコンなら前の図面を修正するだけだが、紙の図面なので最初から描き直さないといけない。
何回も描いているから慣れてはいるが、やはり時間はかかるな。
図面を描きあげてから事務所を出て、家に帰る頃には少し暗くなっていた。
「ただいまアイシャ、少し遅くなってしまった。すまない」
「おかえりなさい。街中だから大丈夫と思うけど、やっぱり暗くなると心配になるわね。夕飯できてるから一緒に食べましょう」
夕食を食べて、今日は早めに寝ることにする。
翌日、準備を整えて鐘3つの前にギルド掲示板の左奥で待っていると、俺と同じ歳位の冒険者が声をかけてきた。
「君達がユヅキ君とアイシャさんかな?」
「ええ、そうです。あなたが今日パーティーを組んでくださる方ですか?」
アイシャが振り返り、笑顔で答える。
「そうだ、向こうに仲間達がいる。一緒に来てくれ」
その冒険者は体の大きな虎の獣人で、上半身と足に白いライトアーマーを身に着け、胸には白銀のプレートをかけていた。
俺達より2つもランクの上の冒険者だ。その人について行き、仲間のいるテーブルに座る。
「俺がこのパーティーのリーダーをやっている、ニックだ」
「オレは剣士のロボス」
「私は神官のリアトルです」
「ボクはネト、魔術師です。よろしく」
紹介されたのは年齢もバラバラの4人のパーティー。
「私はアイシャです。よろしくお願いします」
「俺はユヅキだ。アイシャとこの前、冒険者として登録したばかりの半人前だがよろしく頼む」
最年少のネトは青銅のプレートだが、それ以外は鉄のプレートをつけている。ワンランク上の人達ばかりで、これぐらい上なら安心してパーティーが組めそうだ。
「君が町で噂になっている人族だね」
剣士の鹿獣人が話しかけてきた。
「そうなのか? 町に降りてきて間がないのだがな」
「この町では割と有名ですよ。あなた」
ウサギ獣人の神官の女性が興味深そうに話してくる。
「ボク16歳なんだ。アイシャさんの方が年上かな?」
羊獣人の男の子は人懐っこく尋ねてくる。
「こらネト、女性に歳を聞くなんて失礼でしょ」
神官のリアトルに怒られていた。
パーティーを組んで長いのか、気の合った者同士という感じで和気あいあいとしているな。
「さて挨拶も済んだことだし、早速だが今日の仕事の話をしよう」




