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第159話 東の町

 西の町を解放しサルガスの港に戻ってきたが、すっかり整備されていて滑走路も完成していた。


「ユヅキさん、自分達は司令部へ報告に行きます。ユヅキさんも来ていただけますか」

「そうだな獣人達の事を話さないとな」


 帰り道に立ち寄った町や村から、町長や人族に加勢したいという大勢の獣人冒険者達を連れて来ている。司令部を訪れ戦車部隊の報告が終わった後、相談に乗ってもらった。


「ユヅキ君、思っていたよりも早く帰って来れたね」

「途中の町で冒険者の協力がもらえたのでね」

「その獣人の事について話があるそうだが」


 西地方の町や村から、人族の庇護を受けたいと代表者から依頼されている。今までの状況を説明し、人族として判断してもらう他ないな。


「完全に帝国から離れて、我々に付くと言う事かな」

「そうだ。助けを求めると同時に、帝国との戦争に参加するとも言っている。彼らは冒険者で戦力になるはずだ」


 今までの戦いでも、活躍できている者達だ。帝国軍との戦争でも十分戦力としてやっていける。


「確かに今の我らの人数では戦力的に苦しくはあるが、本国とも相談しないといけない。獣人の代表と話はできるかな?」

「代表者は連れて来ている。どのような形になるにせよ、東側にいる犬族や他の種族達の町を解放するのに、軍の力を借りたい」


 今回も迷惑を掛けないよう、少数精鋭で行くつもりだ。


「戦車4輌程度でいいのであれば、すぐにでも出せるが」

「助かる。人族の侵攻に合わせて町の解放をしていこうと思っている」

「グライダーによる偵察によれば、帝国軍は東海岸のミアプラの町に向かい撤退中だ」


 地図を広げて説明してくれた。砂漠を迂回して南部地方へ入るための、東端にある細長い緑地帯。その南の町ミアプラが帝国軍の後方基地になっていると言う。その北の帝国本土側には補給基地もあるようだ。


「この南側の町や村はどうなっているか分かるか」

「町を占領している帝国兵は撤退していないようだが、我らの進軍ルートから離れているので詳しくは調査していない」


 地図上に描かれた記号や矢印。その作戦ルート上から遠いこの犬族の町なら行けそうだな。


「ここを解放しに行きたいが、いいか」

「その先、この範囲までならいいだろう。但し短期間で攻略してくれ。長引くと本隊の帝国兵が出てくる可能性もある」


 地図を指差しながら、町の解放が可能な位置を示す。


「その先の町は我らが進軍した後になる。そちらに貸す戦車部隊を選出したら君のテントに行かせるようにしよう」


 俺は獣人達が集まるテントに行き、町長たちを司令部へ案内する。その後、犬族の者達と町の解放について打ち合わせをする。


「この町と村、3つについての攻撃許可が下りた。戦車4輌を手配してくれるそうだ」

「そうか、やっと町のみんなを助けに行けるのか」

「それなら俺達も手伝うぜ」


 猫族と山ヤギ族の冒険者達が、町の解放に手を貸すと集まってくる。実際に町の解放を成し遂げた実力者で、町に家族を残しここまで来てくれた連中だ。

 その日の夕方、俺達に支援してくれると言う軍人もテントにやって来た。


「ここに、ユヅキさんはいるか? 今回の作戦に参加する第08小隊だ。よろしく頼むぜ」


 最新型の戦車6輌を引き連れてやって来たのは壮年の15名の兵士達だ。前の若い兵とは違い、ベテランばかりのようだが。


「戦車は4輌だと聞いていたが」

「俺達の小隊には戦車が6輌あるんでな、補給係も含めて全員を連れてきた」


 こんな戦力を貸してくれるとは気前がいいな。その隊長さんは無精ひげを生やし、俺と同年代だろうか気さくに話し掛けてくる。


「第102小隊の連中の話を聞いたが、何でもすごい戦闘経験ができるそうじゃないか。ぜひとも参加したいと志願したんだ。よろしく頼むぜ」

「訓練じゃなく実戦だ。獣人を守りながら戦わないといけないんだぞ」

「分かっているさ。あの新米の102小隊にできた事だ。ひとりとして住民を傷つけずに成功させてやるよ」


 歳の割には、血気盛んな連中だな。まあ、いいか。戦車が増えればその分やり易くなる。

 ここから1日半の距離にある町と、そこから半日の距離にある村を一気に攻め落とす作戦でいこう。



「ほほう。あれが町を守っている城門か。訓練以外で本物を見るのは初めてだが、この戦車なら突破可能だな」

「いいか、タイミングを合わせて門を破壊してくれよ」

「了解した。タイミングはそちらに任せる。2列に並べ砲撃が連続するようにしよう」

「戦車の隊形は隊長さんに任せるよ。じゃあ、行こうか」


 有効射程に戦車を並べて、左右の森に冒険者達を待機させる。俺の合図で町の門を戦車6輌で一気に破壊する。さすがベテランの戦車乗りだ、全弾を門に命中させやがった。続いて戦車3輌を町中に突撃させ、冒険者達による掃討作戦を行なう。


「よし、後は任せろ。外の戦車と馬車で次の村に向かってくれ」


 ある程度帝国兵を倒したのを確認し、3輌の戦車と馬車に乗せた半数の冒険者で村に急行してもらう。第08小隊の活躍もあったが、町も村も早く解放する事ができた。


「どうだい、俺達第08小隊の力は」

「確かに戦車6輌の突破力はでかいな。早く解放できたよ、礼を言う」

「しかし魔法での戦闘ってのはすごいもんだな。特に虎のねーちゃん、すげ~威力だ。ビビッちまったぜ」


 カリンの事だな。まあ、あいつは規格外だからな。


「俺達も魔法が使えたら良かったのにな~。19歳以上は使えないんだってな」

「そうみたいだな。今いる魔術師部隊は16歳が中心だからな」


 この戦車隊のメンバー全員は、イザール市で行なった魔法講習会に参加したようだ。魔法が使えない事をすごく残念がっていた。だが隊長さんの子供は魔法が使えるようだ。


「俺の娘が今10歳なんだが、魔法を教えたら使えるようになってな。将来は魔術師部隊に入るんだと言ってたな」

「俺の息子は6歳だが、どうも指を弾く動作が難しくて魔法が使えなかったよ」

「あれ~、小さな子供だったら違う方法で魔法発動できますよ~」


 戦車部隊の話を横で聞いていたハルミナが、簡単な指の弾き方を教える。ハルミナとは面識があるせいか、部隊メンバーが取り囲み魔法の事をあれこれ聞いていた。


「しかしまあ~、俺達人族が魔法で戦争するとは思ってなかったよな」

「あの戦車だけで勝てると思っていたのか」

「軍からは、古来より改良が続けられた最高傑作だと教わっていたからな」


 現在でも蒸気で自走する兵器は、他国には無い物ではあるのだが……。実際の戦争はこれが初めてだ、簡単にはいかないと身にしみているようだな。


「戦力が足りんとは言え今回の戦争では、子供まで戦場に駆り出しちまった。あいつらを死なせる訳にはいかん。俺達オッサンが頑張らんとな」

「ああ、次も頼むぜ」



 人族の本隊はこのまま東に進み帝国軍がいる海岸近くまで行くようだ。俺達は物資を補給して、まだ占領されている獣人が住む町を、第08小隊と共に解放しながら進んでいく。


「ハルミナよ~。お前は俺達の戦車部隊の後方から攻撃しろよ。前に出て怪我すんじゃね~ぞ」

「分かっているわ。あなた達もしっかり動き回って回避しないとダメよ。こんな戦車、魔法ですぐ壊れちゃうんだからね」


 第08小隊の連中は俺達や獣人達とも仲良くなって、連携も良くなり町の解放もスムーズに進んでいった。お陰で東端にある大きな町1つだけを残して、全て解放する事に成功した。


「残りはこの先の、帝国軍本隊がいる町だけだな」


 町の城壁の外には、帝国軍は駐屯地を置いて陣を構えている。兵士も増員されているようで、3000人を超える帝国兵が待ち構えていた。

 そのミアプラの事を犬族の人が教えてくれた。


「あそこは南部地方で一番大きな町だ。クロウサギ族が住んでいる」


 クロウサギ! あの絶滅危惧種か。それは是非とも会いに行かないとダメだな。

 占領しているあの帝国軍が邪魔だ、なんとかせんとな。


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