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第157話 猫族の町へ

 これから向かう先には猫族の村が1つと町が2つある。次の村と町は二手に分かれて一気に帝国軍を叩く。山ヤギ族の冒険者も増えたし、分かれても充分戦えるだろう。


 村には戦車1輌とタティナ、それと村出身の冒険者で対応してもらう。町へは戦車3輌と残りの獣人で向かうが、それほど大きな町じゃない。城門も木の門が1つあるだけだ。


「カリン。町の門の破壊は戦車でするから、お前は魔法を撃つなよ」

「ちっちゃな門なんでしょう。そんなのに興味ないわ。昨日の町だって頑丈な城門だって言うから王都みたいな門かと思ったら、アルヘナの町より小さかったわ。全然歯応えがなくて、がっかりよ」


 巨人族が通れると言う王都の門と比べるなよ。この近くじゃ、そんなの帝都ぐらいしかないだろうが。

 この先の猫族の町にいた獣人に聞くと、帝国軍は1つしかない門のところに集中していて、住民達とは離れているらしい。


「戦車で門を突破した後、正面は戦車を盾にして侵攻してくれ。俺達は左右に分かれて城壁沿いに攻撃していく」


 今回は手練れの冒険者達が多い。それぞれに分かれて対応してもらおう。


「城壁は歩哨が歩くスペースも無いからな、上からの攻撃を心配しなくてもいい。一気に攻め落とすぞ」


 3輌の戦車を前面に押し立てて前進していく。俺達に気づいて門の辺りが騒がしくなっているが好都合だ。戦車からの砲撃と魔法攻撃で門を破壊する。

 正面の敵はそれほどいないようだ。門を入ってすぐ戦車は正面と左右に分かれて砲撃してくれた。そこに魔法攻撃と弓による攻撃で固まっていた帝国兵を倒していく。

 騒ぎを聞きつけた兵士が門に近づいてきたが、戦車後方からの弓と魔法で寄せ付けない。


「よし、俺達冒険者は左右に分かれ、町にいる敵を排除していくぞ」


 城壁沿いを進み敵を倒した俺達は、戦車と撃ち合っている帝国兵の側面を突く。よし、反対側からも側面攻撃をしているな。三方を包囲されて攻撃を受けた帝国兵は、成す術もなく倒れ息絶えた。


「ここもなんとか解放できたな」


 夕方前には隣の村へ行っていたタティナ達とも合流できた。


「村はどうだった」

「帝国兵も少なかったし、すんなりいったよ。それとユヅキ、港から補給の馬車が来ているぞ」


 門の方に行ってみると、人族が3人で馬車2台分の物資を運んできてくれた。


「あんた達、すごいな。もうこんな奥地まで来ているなんて」

「ああ、あと1つ町を解放すれば終わりだ。その前に補給ができて良かったよ。ありがとう」


 港の方は着々と基地化が進んでいるようだが、まだ出兵できる状態じゃないそうだ。残していった獣人達も手伝ってくれたようで、もうすぐ滑走路も完成するらしい。


「さて、俺達も頑張るか」



 最後の町は俺達が山の谷を抜けて、この帝国南部地方に入って初めて行った猫族の町だ。あの時は帝国兵に追われて見捨てるような形で町を出たが、今度は俺達が町を取り戻しに行く。待っていてくれ。


 解放したこの町の冒険者ギルドには、多数の冒険者が軟禁されていた。激しく抵抗したらしく、殺された者も多くいるようだ。

 隣町から派遣された冒険者が多くいたが、最初から占領するつもりで攻めてきた帝国軍に対抗できなかったと言っている。


「今から隣町に行くのか。あそこは俺達の町だ、手伝わせてくれ。ここで受けた帝国軍への恨みを返してやる」


 次に行く最後の町は城門が2つある。城壁は大きくないが城壁内にやぐらが3つあって、そこから攻撃できるようになっているらしい。


「できるだけ町への被害を少なくしたい」

「それなら夜間に攻撃するのはどうだ。夜に動いている奴は帝国兵だけだ」

「やぐらへの攻撃も暗い中、火魔法を使わなければ相手から狙われることもない」


 射程の長い戦車からの砲撃なら、やぐらを簡単に破壊できそうだな。


「門はどうすんのよ」

「戦車の砲撃と攻撃魔法を集中すれば破れるはずだ」

「それじゃ2方向に分かれよう。カリンと俺、もう一方にハルミナとタティナがついてくれ」


 準備を整え、翌日の昼頃に町を出発する。明日の夕方には猫族の町に到着できるだろう。途中で野営をして獣人達と夕食を共にする。


「あの戦車という魔道具は、あんたら人族が作ったんだろう」

「ああ、そうだ。昔の大戦の頃にもあった兵器だな」

「人族の魔道具は恐ろしいと言われていたが本当だな。だがユヅキ、あんたは聞いていた人族とは違うな」

「そうでしょ、ユヅキはかっこいいでしょ」


 おいおい、カリン。こんなところで持ち上げるなよ。恥ずかしいじゃないか。


「虎族と結婚していたのも驚きだが、冒険者をしていて魔法も使うなんてな。それにエルフ族とも一緒にいる。俺、エルフを初めて見たよ」


 今はハルミナも人目を気にせず、白い肌のままでいるからな。みんなから珍しがられている。


「前の町でユヅキ達と一緒に戦ったが、俺達から見ても一流の冒険者だ。赤い目を持つ恐ろしい人族など、噂とはあてにならんものだな」

「今回は俺達の帝国が人族の国に侵攻したそうだな。すまなかった」

「あんたらもその被害者だ。気にするな」

「そうよ、悪いのは帝国軍よ。あいつら許さないんだからね」


 人族の国やこの南部地方を襲った帝国軍に、カリンは本気で怒ってくれているようだ。こいつは、権力や横暴な手段を用いようとする連中を、許しはしないからな。


「そういえば、俺はサルガスの港でドラゴンを見たぞ。やはりドラゴン族は人族の味方をしているのか」

「あのね、あれはドラゴンの骨から復活させたものなの。すごいでしょう」

「復活! ドラゴンをか? 人族はそんな事もできるのか。あんたらエルフ族でもそんな事できんだろう」

「でも生きている本物のドラゴンもいるわよ。キイエっていうの。私といつも一緒にいたわ」

「あんたらの話を聞いているだけで恐ろしくなってくる。こんな人族に手を出すとは、皇帝も愚かなことをするものだな」



 予定通り、翌日の夕方には町の近くに到着した。2ヶ所に分かれて配置につき真夜中までここで待機だ。


「カリン、攻撃するのは門だけでいいからな、城壁まで壊すなよ」

「分かってるわよ。やぐらは壊してもいいんでしょ」

「ああ、戦車の砲撃に合わせて破壊してくれればいい」


 そろそろ時間か。デンデン貝の通信機でタティナと交信する。


「……こちらユヅキだ……準備はいいか」

「感度良好だ。準備……できているぞ」

「では攻撃を開始しよう」


 戦車と共に門に接近する。まずはやぐらからだ。砲撃とカリンの魔法で破壊する。


「門に一斉攻撃を仕掛けろ」


 砲撃と魔術師の一斉攻撃で門は木っ端みじんに吹き飛んだ。


「ユヅキ、光魔法を上に向かって撃てばいいのね」

「ゆっくり落ちてくるように撃ってくれ」


 光魔法で照明弾の代わりをしてもらう。反対側の門からも照明弾代わりの光魔法が何発も撃たれる。


 大きな音と光に驚いた帝国兵が飛び出してくるが、城門の中に突入して待ち構えていた俺達に次々と倒されていく。

 中央の方から門に向かって帝国兵が集まってくるが、冒険者が左右に広がり集中砲火を浴びせて一気に殲滅する。

 これで城門の周りにいた敵兵は掃討できたか。


「戦車を前に出せ」


 戦車を街中に走らせ敵をおびき出す。


「夜間に出てくる奴は帝国兵以外いない。そいつらを倒していけ」

「西地区に敵兵8人確認」


 走っている戦車から魔波通信が入る。


「分かった、すぐに向かう」


 戦車の砲撃では破壊力が大きすぎる。戦車を盾にして魔法や弓で対抗して町に被害が出ないように戦う。

 夜中に奇襲を受けた帝国兵は組織だった行動ができていない。小隊程度の部隊で立ち向かってくるが、戦力はこちらが上だ。小さな集団を倒しながら街中を進んでいく。


 日が昇った頃には全ての帝国兵を倒せたようだ。夜中の騒ぎで家の中に隠れていた住民が外に出てきた。

 戦闘に参加していたこの町の冒険者達も、家族の無事を確かめに自分の家へと向かっていった。


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