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第145話 グライダー完成

 翌日、グライダーの風防を作ってもらおうと、今度はイザール市の工場に機体を持ち込んだ。

 首都の工場は戦争準備で忙しそうだが、ここなら大丈夫だろうと翼を外して胴体部分だけを馬車に乗せて持ってきている。


「工場長のイブキさんを呼んでくれないか」


 イブキはすぐに工場入り口まで来て、俺の相談に乗ってくれた。


「この部分に曲がったガラス板を取り付けたい。できるだけ軽く透明な物を作ってもらいたいんだが」

「これは少し難しそうだな。なぜ軽くないとダメなんだ」

「これで空を飛ぶんだ」

「空を飛ぶだと。お前はドラゴンを作ったのか!」


 空を飛ぶ鳥や動物がいないこの時代、空はドラゴンの独壇場だ。皆そんな反応になってしまうのだが、驚きすぎだろう。


「試験飛行は成功している。ちゃんと完成させたいんだ。完成したらイブキも空を飛んでみるか」

「空をか!? いやいや俺はいいよ。この歳でまだ死にたくないからな」


 そんな危険な物ではないんだがな。その後、ガラス職人とも相談して風防を作ってもらえることになった。


「そういえば、前に言っていた、爆裂砲弾はできたのか」

「砲弾を軽くするため形状を変え、先端の空洞に低圧の水素を詰める事にした。今はそれに合わせて砲塔を改造しているが、ほぼ終わったところだ」


 コンプレッサーを使わず水を利用した方法で、水素と酸素を詰めたようだな。砲弾の射程が伸び、破壊力もあがったと軍関係者も喜んでいたそうだ。


 数日後。頼んでおいたグライダーが完成したと連絡が入った。

 今回風防以外にも、操縦席を軽量化したり椅子をスライドして位置変更できるようになっている。車輪も安定して走れるように改良してくれて、勿論火魔法ジェットも2個取り付けている。


「ユヅキ、できたぜ。乗ってみてくれ」


 できた風防は後ろにスライドさせて開くタイプだった。曲面のガラスは6枚に分割され、鉄枠にはめ込まれている。それを機体のレールに沿って後ろに移動する仕組みだ。昔のゼロ戦の風防にも似ているが、もっとスマートで洗練されている。


「このガラス、上手くできているな」

「そうだろう、苦労したぜ。こんな大きなガラスを曲げたのは初めてだ」


 機体の曲面に合わせて曲げていて、閉めると外側に出っ張りが無いように仕上がっている。このガラスは強化ガラスで、チセが作った完全に透明なガラスではなく、少し緑がかっているが問題ないな。座って見える範囲も広いし、頑丈にできている。

 ここのガラス職人はすごい技術の持ち主のようだ。


「ありがとう、すごい出来じゃないか」

「俺達も空飛ぶ機械の部品が作れてうれしいよ。一度飛んでいる姿を見たいんだが」

「今から試験飛行をするんだ。湖近くの広くて平らな道まで来てもらう事になるがいいか」

「それなら、他のみんなも連れて行くよ」


 グライダーの機体を引き取って、滑走路に運ぶ。翼を取り付けて早速試験飛行をしよう。


「まずは、俺ひとりで飛んでみるよ」


 魔力電池付きの火魔法ジェット。これなら誰でも小さな魔力でジェット推進が使える。だが俺の魔力では、離陸速度まで機体を加速できなかった。滑走路が長ければ離陸もできるだろうが、実用的ではない。


「すまないタティナ、馬1頭で引いてくれ」


 最初だけ馬で引っ張ってもらうと加速して離陸する事ができた。飛び立てばジェットの推力で上昇もできる。

 上昇、旋回、そしてエアブレーキで減速して着陸。一連の動作を確認する。見に来ていた、イザール市の工場の人達がすごい歓声を上げている。


「すごい、すごいじゃないか。あんな大きな物が人を乗せて飛んだぞ」

「昔この地にいたと言うドラゴンのようじゃないか。まさかこんな光景を見ることができるとは思わなかった」


 乗った感じでは、各部品の動作に問題はないようだ。降りて点検したが、壊れている箇所はどこにも無いな。


「カリン。次はふたり乗りで、離陸テストだ」

「ええ、今日はもっと高く飛んでもいいのよね」

「ああ、風防もジェットもあるからな。スピードを出せるが、出しすぎると壊れちまうぞ」

「分かってるわよ。やっとユヅキが完成させた空飛ぶ魔道具なんだから、壊しはしないわよ」


 カリンがジェットに魔力を流して加速すると、すぐに離陸できる速度になる。滑走路の4分の1も走っていない、さすがカリンだな。離陸後も高度をぐんぐん上げて地上の人が小さくなっていく。


「これはすごいわね。風も受けないし外がよく見えるわ。気持ちいいわね、ユヅキ」


 カリンはこんなに高く飛んでも怖くないみたいだ。俺はちょっと怖いぞ。

 だがこれだけ安定して飛べれば充分だ。試験飛行を終えて、滑走路に着陸する。車輪ブレーキもよく効いて、スムーズに停止できた。


 滑走路に集まる工場の人達は、俺達の高高度の飛行を見て驚きながらも称賛してくれた。


「人がこれほど自由に空を飛べるとは思わなかったよ。これはすごい機械だぞ」

「これに俺達が作った部品が使われているなんて信じられんな」

「いい出来だ、作ってくれてありがとう。あれだけ高く飛べるのもあんたらのお陰だ。本当にありがとう」


 よし、これでグライダーも完成だな。さあ今夜は工場の人達と一緒に、どんちゃん騒ぎでもしようか。


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