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第49話 武闘大会3

 午後からは、ダークエルフのお姉さんとの試合だ。

 相手はひとりではあるが、強敵だ。ちゃんと試合前に作戦会議をしておこう。


「これから、君達に古くから伝わる作戦を授けよう。その名をジェットストリームアタックという」

「ジェット……なんですって。いいから早く説明しなさいよ」

「まず全員、足に風魔法を発動させて体を浮かせる。一番前にチセ、次に俺、最後にカリンだ。カリンは風魔法で俺達を押し出し全員で高速移動する」

「前に平原で遊んでいたあれですね」

「そうだチセ。まずチセが攻撃して、奴が上に飛び上がったところを俺が切る。その後ろからカリンが魔法攻撃だ」

「なんだか面白そうね。やってみましょう」


 いよいよ、ダークエルフのお姉さんとの対戦。開始のドラの音が鳴る。


「作戦通りいくぞ!」


 開始直後。俺達はチセを先頭に中腰になり、靴に風魔法を纏わせて高速移動で一気に距離を詰める。


「今だ! チセ」

「続いて俺が、ジャンプ……。あれ、いない。グフゥ」


 横から衝撃を受けた。


「師匠。あの人上じゃなくて横に逃げましたよ」


 そんなの反則だろう。距離を取ってもう一度攻撃だ。


「よ、よし、次は横だな。相手は速い、チセは奴の足元に鉄拳を撃ってくれ」


 同じように高速移動する。横に逃げたところを急旋回してチセが足元に鉄拳を撃つと、砕けた石が飛び散る。


「ここか! あれ、いない。グフゥ」

「今度は、下よ!」


 足と腹を打たれて転びそうになった俺の襟首を掴んで、引きずりながらカリンが距離を取る。


「もう! 全然ダメじゃない」

「し、仕方ない。正攻法でいくか」


 チセと俺が前に出て、カリンが後ろから魔法攻撃する戦闘隊形に変える。

 カリンが魔法で足止めしている間に距離を詰めるが、ダークエルフの炎魔法が飛んで来る。俺もチセも火魔法の耐性がある鎧だが、鎧の無い所を正確に狙って撃ってきているな。盾やチセの腕で防御しつつ奴に近づきチセが鉄拳を撃ちこんだ。


「上手いぞ、チセ」


 鉄拳を躱して、俺の前に来たダークエルフに渾身の横なぎを打ち込む。剣1本で受け止めて横に飛んだところへ、後方からカリンが炎魔法を撃ちこむ。連続攻撃だ。

 間一髪で躱されたが、体勢が崩れたところを袈裟切りに剣を振り下ろす。

 剣で受け流され宙を舞って俺の後方へ回り込もうとするが、チセの撃ち出した石が顔と腹に当たり攻撃せず飛び退いた。


「師匠、大丈夫ですか」

「素早い奴だ。なかなか剣が当たらんな」


 カリンが連続の魔法攻撃を仕掛ける。初級魔法なら連続しても反則にならないと、左右の杖から無数の風の刃を飛ばす。これだけの数を飛ばせば、大魔法と同じじゃないのかと思ってしまうが、ルール上は大丈夫だ。

 奴は2本の剣で風の刃を切り裂き、身を躱しつつ攻撃を防いでいる。奴にはこの風の刃が全て見えているのか! 俺とチセが前方に走り出し攻撃に参加する。

 今度は身を翻して俺達とすれ違い、後方のカリンを狙いに来たな。俺が後ろから追いかけて挟み撃ちの形になる。


「サンドシールド」


 カリン、いいタイミングだ。土の壁に行く手を阻まれたダークエルフの背中に斬りつける。


「なに! 三角飛びだと」


 奴は壁を足場にして俺の上空を舞って背後を取りに来る。カンフーの映画俳優かよ!

 振り下ろした剣を、燕返しのごとく素早く振り上げるが剣で弾かれ、もう一方の剣で首から背中を打たれて倒れてしまった。


「師匠!」


 追いついてきたチセが攻撃しようとしたが、顔を炎魔法で攻撃され防御した瞬間に鎧ごと腹を打たれて背中を地面に着けてしまう。

 ひとりになったカリンは降参し敗北した。チセにもひとりになったら降参するように言っている。無理して怪我してもつまらんからな。


「完敗だな」


 ダークエルフに握手を求めると、怖い顔をしてうわべだけの握手で応じると、さっさと引き上げて行った。


「何なのよ、あいつ」

「まあ、いいじゃないか。面白い試合ができた」

「今回はユヅキの指示で降参してやったけど、1対1でも私なら負けないわ」

「素早い動きでしたね。あたしはちっとも当てられる気がしませんよ」


 俺達はこれで3位となる。反対ブロックにも3位がいるが決定戦は行わず、どちらにも賞金が出るようだ。


 アイシャや村の人達も駆け寄ってきて、労いの言葉をかけてくれた。

 この後村の人達は、町のお祭りを見て今日のうちに帰るそうだ。

 俺達は表彰式もあるし、この後の決勝戦を見て今日はこの町に泊まってゆっくりするつもりだ。


「ユヅキさん、これ露店で買って来たの。みんなで食べましょう」

「ありがとう、アイシャ。おお、この串焼き美味いな」

「ほんと美味しいわね。こんなの食べながら観戦できるなんて贅沢ね」

「そうですね。負けたからなんですけど、こういうのもいいですね」


 決勝戦はあのダークエルフと、相手は騎士と剣士と弓使いの3人組だ。

 弓使いが大型弓でダークエルフを攻撃する。


「あの弓使いの人、昨日的当てで優勝した黄金ランク冒険者だわ」

「ほほう、アイシャに勝った人か。見ものだな」


 鋭い矢を連続で撃ちダークエルフを攻撃しているが、両手の剣でことごとく落とされる。それどころか剣を振りながら魔法攻撃で騎士を集中攻撃して足を止めている。


「すごいな、あのダークエルフ」

「私の風魔法を全部落とすぐらいだから、あの程度はできるでしょう」


 前衛の剣士が接近して攻撃を加えたが、弓の射線に入って矢が止んだ瞬間に倒された。瞬殺かよ。


「あの人、周りが良く見えてますね。私達の時も左右に広がった瞬間にカリンを狙ってきました」


 弓使いを魔法で牽制しつつ、走って来る騎馬とすれ違いざまに攻撃した馬が倒れ、落馬した騎士の喉元に剣を突き刺した。

 騎士が降参し、ひとり残った弓使いも降参した。

 ダークエルフの優勝である。


「あのお姉さん、強いな~。でも面白かったな」

「ええ、黄金ランク冒険者の弓さばきも見れて楽しかったわ」

「あの二刀流を躱して、魔法を当ててみたいわね」

「あたしは、あの体さばきを見習いたいです」


 まあ、みんな楽しめたし参加して良かったな。


「表彰式の後は、また広場に行って大道芸人達を見に行こうか」

「ええ、いいわね」


 俺達は2年に1度の武闘大会のお祭りを堪能するのだった。


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