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第47話 武闘大会1

 今日はトリマンの町に買出しに来ている。村の自警団用の魔道弓や鋼の板金など村に必要な物を買いに来たが、広場で武闘大会が開催されるというチラシを見た。


「ゴーエンさん。この町で武闘大会が開かれるらしいが、どんな大会なんだ」

「1ヶ月後に首都のレグルスで武闘大会が行なわれるんだが、今回のはその大会に出る者を決める地方大会になっているんだよ」

「面白いのか?」


 武闘大会と言われても、今まで見たことも無いしな。殺し合いのようなものだったら少し嫌だな。


「この辺りの強者が参加して実力を試す。黄金ランク冒険者や騎士団長なんかも参加して、すごい魔法や剣技など見れて面白いぞ。2年に1回の大会だしな、人も集まって町全体がお祭りのようになるんじゃよ」

「それはいいな。アイシャ達も見に行こうか」

「そうね、黄金ランクの人達の技を見てみたいわね」

「ユヅキ君よ、君達は参加する方だろう。あんたらほどの実力なら充分上位にいけるじゃろう」

「いやいや、黄金ランクの人達が参加するんだろう、俺達じゃ無理だよ」


 王国で黄金ランク冒険者の戦いを見た。あの人達は強かったからな。


「魔法や剣などの部門に分かれていてな、魔法と弓は的当ての競技もある。アイシャさんは参加しても面白いと思うぞ」

「的当て。それなら参加してもいいかもしれないわね」

「魔法で実際に戦うのはあるの?」


 カリンは的当てよりも対戦したいようだ。だがカリンの大魔法を使うと大変な事になってしまうぞ。


「確か中級魔法までの制限付きで、1対1で戦うのがあったはずだ」

「それ、いいかも」

「3人までのメンバーで戦うチーム戦もある。お祭りだしな参加しても面白いと思うぞ」

「怪我などしないのか?」

「剣は木刀か鞘付きのものを使うし、降参したら終了じゃ。怪我がないとは言えんが危険なものではないよ」

「それならみんなで参加してみようか」


 大会を主催する商業ギルドに行って、参加を申し込んだ。大会の開催日は10日後。開催日程は2日間。みんなそれぞれ参加したい競技や武闘会に参加費を支払いエントリーした。

 聞くと使役魔獣部門というのがあるそうで、キイエも参加登録をする。こちらの参加費は無料だそうだ。

 村に帰り村長に武闘大会に参加する事を告げると、村の代表として頑張ってきてほしいと言われた。村人も行ける人は当日の武闘大会を見に来るそうだ。



 俺達は大会当日の朝から参加する競技があるので、その前日にはトリマンの町へ行き宿泊する事にした。


「もう、お祭りが始まっているみたいよ」

「すごい賑わいだな。カリン、馬車をゆっくり走らせてくれ」


 大会は明日からだが今日は前夜祭があるそうだ。既に大通りは観光客などですごく混雑していた。


「ユヅキ、早く宿に入ってお祭りを見に行こうよ」


 俺達は予約してるいつもの宿へ行って、荷物を降ろし町へと繰り出す。


「すまんな、キイエ。今日は馬車の中に居てくれ。後でお肉買ってくるからな」

「キーエ」

「ユヅキ。早く、早く」


 街の大通りには露店が立ち並び、大道芸人達もいる。露店に売っていた甘いお菓子を食べ歩きながら街中を巡っていく。


「ほらあっちの広場で何かやってるわ、見に行きましょう」

「おい、カリン(はぐ)れるなよ」

「師匠。こんな大勢の人見たの初めてです。手を繋いでおいてくださいね」

「ああ、こっちにおいで」


 背の低いチセは、人の波で周りがあまり見えなくて不安になっているようだ。肩を抱きすぐ近くを歩いてもらう。チセも腰のベルト辺りにしがみつき安心したようだ。

 俺もこんなに人がいっぱいなのは通勤ラッシュ以来だな。


「2年に1度のお祭りって言っていたものね。他の町からも大勢来ているみたいね」


 俺達のように参加する人も来ているのか、冒険者風の人や普段あまり見かけないリザードマンも大勢いるな。

 広場では音楽を奏でる人や、サーカスのような芸など前の世界と同じような大道芸人達もいる。なかなか本格的でこれは見ごたえがあるぞ。


「面白かったわね。はしごの上でくるくる回っていた人、すごかったわ」

「そうね、ナイフを投げて頭の上の果物に刺さるの、あれはひやひやしたわね」

「あたしは、マジックショーでしたっけ。あの帽子からウサギが出てくるの、びっくりしました」


 レストランで食事を楽しみながら、お祭りで見た催し物の事で盛り上がる。

 こんな見世物は村で見る事はできないし、アルヘナの町でもこんな盛大なお祭りは無かった。これを見れただけでも、ここに来た甲斐があるというものだ。

 美味しい食事の後は宿屋でゆっくり寝て、明日の大会に備えよう。



 翌日、最初はアイシャの弓の競技会だ。弓で遠くにある的を狙って、5本の矢を撃って点数を競っていくそうだ。アイシャは予選を勝ち残って2人で競う本戦に進んだ。


「アイシャ頑張ってね」

「4回勝てば優勝よ。絶対優勝しなさい」


 声援に送られ、アイシャが競技に向かう。相手は兵団の兵士で大型の弓を手にしている。


「あんな大きな弓ってずるくない」


 確かにそうなんだが、前の世界のスポーツではないからな。魔獣などの敵を想定しているから、どんな武器でも的に当てることが重要なんだろう。

 それでもアイシャは相手を圧倒して勝利した。


「すごい、すごい。アイシャ、次も勝ってね」


 カリンは自分が勝ったような喜びようだ。次の試合もアイシャは勝ったが、その次の準決勝で黄金ランク冒険者に敗れてしまった。


「さすが黄金ランクね。全部真ん中に当てるなんて」

「でも、魔道弓を使っていたら勝てたかもしれなかったぞ。惜しかったな、アイシャ」

「ええ、仕方ないわね。3位なら賞金ももらえるしね」


 結局、その黄金ランク冒険者が1位で、このトリマンの町の兵団長が2位だった。

 午後からはカリンが参加する魔術師の武闘会が行われる。村から来た人達も到着したようでみんなで応援する。


「カリン、頑張ってね~」

「任せなさい。あんな雑魚、一発で倒してやるわ」


 そう言って出て行ったカリンはあっさり負けた。


「だって、あんなのが大魔法なんて知らなかったんだもん。アイシクルランスをいっぱい撃っただけだよ」


 カリンは大魔法を使って反則負けになってしまったのだ。


「そりゃ競技場いっぱいに氷の槍を突き刺したらダメだろう。相手が怪我しなくて良かったよ」


 カリンは魔術師学園に通っていないから、どこまでが中級魔法なのか区別がつかなかったようだ。

 じゃあ、いつもカリンが使っている大魔法っていうのは、どの分類になるんだ。あまり考えないでおこう。


「次はキイエだぞ。俺達と一緒に出ような」


 使役魔獣部門というのは戦いではなく、魔獣によるパフォーマンスを見せ審査員の点数で順位が決まる。

 キイエは俺の肩から飛んで、アイシャの手に持っている餌を食べたり、カリンの指示で炎を吐いたりする。

 そのたびに観客から、大きな拍手と歓声が上がる。


 いろんな使役魔獣が参加していて、ユニコーンもいた。美しい白い馬で、頭にある角から電撃を放っている。結局このユニコーンが優勝となった

 使役魔獣自体が珍しく参加者全員に賞品と、キイエを含む上位3名に賞金が送られる。よくやったなキイエ。

 参加賞は新鮮で美味しそうなお肉でキイエも喜んでいる。


「よし今日はこれまでだ。食事して明日のチーム戦に備えよう」


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