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第125話 黄金ランク冒険者 シルマーン

 オレはシルマーン。黄金ランクの冒険者だ。

 若い頃、英雄に憧れ冒険者になって20年が過ぎた。


 色々な町を渡り歩き、その土地で数々の冒険をしてきた。妻や子供のためにと、この町で腰を落ち着け過ごしてきたが、功績が認められ黄金ランクへのランクアップが打診された。


 黄金ランクの冒険者は貴族と同格に扱われる。貴族街に住むことができ、給金もギルド、領主、王国から出て贅沢な暮らしをしなければ充分食っていける。

 貴族への憧れもあり、家族の安定を望んだオレは、黄金ランクへの昇格を二つ返事で決めた。

 その後は、領主の護衛任務や未開拓地域の調査など、領主からの直接の依頼をこなす日々だ。


 貴族と同格とはいえ、一代限りの下級貴族だ。ミスリルやアダマンタイトのランクになると王都で暮らし王族の依頼などをこなすのだろうが、結局貴族達の下働きになるのが関の山じゃないのか。

 最近そのような思いが強くなり、気力もなくなってきた。白銀ランク時代の方が自由でやりがいがあった気がする。


 そんな折、この町の近くでスタンピードが起こったと報告を受けた。


「おい、ブロックス。スタンピードが起こっているというのは本当か?」


 オレの少し先輩のライオン族の男に確認に行く。


「ギルドの報告によると、どうやらそうらしいな。少し忙しくなりそうだ」


 ブロックスとは、白銀時代に何度か組んで仕事をしたことがあるが、先に黄金ランクへと昇格していった。

 元貴族の四男で、騎士を経て自由を求めて冒険者になり、黄金ランクへ登り詰めた槍の名手だ。

 黄金ランクに上がる時に、「やれやれ、また貴族暮らしになってしまった」とぼやいていたな。


「シルマーン、領主と打ち合わせをする。ついて来てくれ」


 スタンピードの対応は最優先事項となる。オレ達は領主や兵団長と会い、今後の方針を決めていく。

 この町にいる3人の兵団長とオレ達は同格だが、魔獣相手ということで、兵団長や兵士がオレ達の指揮下に入る事となった。

 これが人相手の戦争なら、オレ達が兵団長の指揮下に入る事になっていただろう。


「オレ達は冒険者ギルドに行って、具体的な作戦会議をしてくる。幸い今回は時間がある。兵士達の準備は任せた」

「ああ、こちらは任せろ。後で詰めの打ち合わせをしよう」


 3人の兵団長達と分かれて冒険者ギルドに向かう。

 オレは16年前のスタンピードにも鉄ランクとして参加しているし、4年前、隣町のスハイルで起こったスタンピードにも志願して参加した。

 通常他の町への応援は出さないものだが、護衛任務ばかりの日常に飽きていたオレにはちょうど良かった。


「ブロックス、ここの冒険者の数は分かるか?」

「確か白銀が25、鉄が85くらいだったはずだ」

「オレを最前線で戦わせてくれんか」

「戦うのではなく指揮を執るんだぞ」

「分かっているさ」


 黄金ランクになって変わったのは、戦術を学び戦略を立てて戦うことだ。人との戦争のための(すべ)だが、魔獣相手でも使える。少ない数を補って魔獣に打ち勝つ手段をオレ達は知っている。

 白銀時代は魔獣の弱点を突き、効率よく倒す技を磨いてきたが、それだけでは押し寄せて来る魔獣の群れを倒すことはできない。


「だが、最後尾の巨大魔獣とは戦ってもいいんだろう」

「それはそうだろう。白銀でまともに戦える奴はそうそういないしな。メルフィルが間に合えば共に、俺達3人が主力で戦うことになる」


 久しぶりに巨大魔獣との戦闘だが、オレの腕はまだ鈍ってはいない。充分に戦うことができる。


「それとギルドからの提案で、最前線と第2防衛線に物見やぐらを建設して、魔獣の監視を行うことになった」


 ほほう。誰の提案か知らんが、情報の大切さを知っている者がいるようだな。


「おい、レドナ。冒険者ギルドへ行って、白銀連中の情報を集めておけ、編成の参考にする」


 オレは側近のひとりに、冒険者達の情報を集めるように指示する。



 冒険者ギルドでの作戦会議を終えて、一旦家に戻る。


「あなた、魔獣が押し寄せてきているんですって」

「ああ。だがオレが出るんだ、心配することはない」

「父上、僕も役に立てる事はありませんか」


 息子はまだ10歳だ。直接戦うことはできない。


「お前は母上を守るのが仕事だ。この家にいて、しっかりと守ってくれ」

「はい、父上」


 可愛い息子や妻と共に遅い夕食をとり、少し眠ることにする。


「鐘1つに起こしてくれ。急用があれば遠慮せずに起こせ」

「はい、旦那様」


 準備は、できている。

 いよいよ明日、魔獣との死闘が始まる。


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