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第10話 治療 アイシャ

 ベッドの上で目が覚めると、私を助けてくれた冒険者がいた。

 あのまま死んでしまうかと思ったけど、治療をしてもらえたのか命は助かったみたい。まだ足は痛むけど、あの深い傷で助かるとは思わなかった。


 冒険者が近づいて体を起こしてくれた時、布団が私の体からずり落ちる。治療のためか私は裸だった。


「キャッ!」


 胸を見られた! 胸を見られた! 胸を見られた~~。


 咄嗟に胸を隠してキッと睨んでしまったけど、アタフタしている冒険者を見ていると、少し笑えてきた。


 でも裸のままじゃ恥ずかしいし何もできないじゃない。

 服を取ってもらおうと衣装ケースを指差して、簡単に着れる部屋着を持ってきてもらった。


 上から首と手だけ通せば着れるけど着替えているところを見られるのは恥ずかしい。と思っていたら、後ろを向いていてくれたみたい。なかなか紳士な人なのかな。


 服を着終わると椅子に座って私に何か話し掛けてくる。外国語でよく分からないけど、名前を教えてくれているみたい。


「ユリュキ ニュキャーシェ?」


 少し違ったみたいだ。

 もう一度。


「ユヅキ ミュカゥシェ?」


 なかなか難しい。


「ユヅキ?」 


 ユヅキって言うのね! 変わった名前だけど外国人だもの、それに人族みたいだし。私の知っている人族とは違って優しそうだけどな。


「○△※※☆※△?」


 私の名前を聞いてるみたい。


「私は、アイシャ」

「アイシャ?」


 ウンウンそうだよ。

 私はお父さん以外の男の人は苦手でなかなか話せないけど、この人はなんだか違う感じがする。



 ユヅキさんが水を入れたコップを持って来てくれた。

 何、このコップ! 薄くて軽い! まん丸だ! すご~い!


 ユヅキさんが食料庫からお肉を持ってきた。


「△※※☆※△X□□※?」


 料理をしてくれるようだ。ウンと頷くと隣りの部屋で料理をしてくれる。


 怪我した足を少し触ってみる。サーベルの爪で引き裂かれた方の足は綺麗に包帯が巻かれている。

 痛みはするけど出血は止まっているみたい。


 右足はあまり動かせない。足首を木で固定しているみたいで、こっちもズキズキするけど骨折じゃないと思う。

 腰回りを触ってみる。ん~、やっぱり下も裸だよ~。全部見られちゃったかな~。



 クンクン。しばらくすると隣の部屋からいいにおいがしてきた。

 ご飯を作ってここまで持ってきてくれた。


「※☆。※~△」


 って、ムリ、ムリ、ムリ~~!

 スプーンを手に持って口に運んでくる! それって恋人同士がするやつでしょう。


 仕方ないなという顔で、器を渡してくれたけど。あれは恥ずかし過ぎるよ~。でも外国じゃ普通なのかな? こことは風習が違うのかも。


 手渡された器の中のスープはドロッとしてるけど、このご飯とてもおいしい!

 ユヅキさんは私が食べる様子を見て何かニコニコしてるけど、ちょっと恥ずかしいよ。


 食べ終わってお腹は満腹になったのはいいけど、今度は白い小さな石みたいな物を手渡してきた。


「この白いの、少し軽いけど石ですよね?」


 えっ、これを飲むの? 魔法の薬?? まあユヅキさんがそう言ってるんだし大丈夫だよね。白い石を口に入れて水と一緒に飲み込んだ。



 その後、ぐっすりと寝て起きたら、昼を過ぎたぐらいの時刻だった。


 身振りで食事をするか尋ねられたけど、お腹は減っていないので水だけもらうことにした。

 するとどういう訳かユヅキさんが不思議な踊りを踊りだした。

 もう一度ちゃんと見てみると、


「分かった! 水瓶の水が無いんだ」


 それにしてもさっきの踊りは面白すぎだよ、ユヅキさん。


 水くみの方法を教えたら、ちゃんとやってくれた。樽を押しながらこっちに笑顔を投げかけてくる。ユヅキさんって面白い人だな~。


 日が落ちてきた頃、またご飯を作ってくれた。朝とはちょっと違って大きな肉がいっぱいでボリュームのある食事だ。

 これもおいしかったので2杯も食べちゃった。


 ん~、これはマズイかも。トイレしたくなってきちゃった。食べ過ぎたかな?

 でもこの足じゃ行けないし、ユヅキさんに頼らないと。


 恥ずかしいけど思い切って「ダッコして」と、手を伸ばした。

 ユヅキさんは抱き上げてくれて、トイレまで連れて行ってくれたけど、恥ずかしかったよ~。


 寝室に戻ったら、朝飲んだ石を渡してくれた。やっぱりこれって魔法の薬かな?

 その後、熱を見てくれたり、傷を確認したりしてくれた。やっぱりこの人が治療してくれたんだよね。


 命の恩人だよ。


 夜、私の頭をなでて部屋を出て行こうとしたユヅキさんに、


「行かないで! ここで一緒に寝てください」


 そう言ってしまった。

 隣のベッドに、毛布と掛布団を取り付けてもらった。お父さんが使っていたものだけど、ユヅキさんに使ってもらいたい。

 ユヅキさんの腕をギュッと引っ張ってベッドに座ってもらった。


 ユヅキさんは隣のベッドで寝てくれるようだ。

 少し寂しくなったのかな? 何となく照れくさいような、安心するような気持ちになって、隣のユヅキさんを見つめる。


「おやすみなさい、ユヅキさん」

「○☆※○、アイシャ」


 夜はゆっくり更けていった。





 お読みいただき、ありがとうございます。

 今回は、第6話, 第8話, 第9話(治療1~3)部分のアイシャ視点となっています。


 ブックマークや評価、いいね など頂けるとありがたいです。

 今後ともよろしくお願いいたします。


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