8話 まさかの再会!?
俺は今、目の前に起きている事で頭がいっぱいだった。
今現状の事を一言で表すなら―――――――
「どうしてこうなった……」
どうやら俺は、地球でも異世界の魔法が使えるようになってしまっていた。
いや、どういうことだってばよ!?
なんで使えるようになってしまってるんだよ!?
もしかしてドッキリなんですか?
そうだとしたら早く出てこいや女神様!
「あぁもう、さっきまであった眠気が全部なくなっちまったよ。」
この際ドアだけじゃなく、今どうなってるのかを根掘り葉掘りしていくか。
その前に、部屋の電気をつけるか。
「光魔法が使えたって事は……“ファイア”」
部屋の電気をつけてからもう一度ベッドに座って、最初に覚えた魔法を唱えると、手のひらに野球ボールの大きさの火の玉が出た。
「マジで使えるのか。じゃあ今度は……“スパーク”」
火を消して今度は雷を出すと、手のひらに雷が出た。
それから後も、“ウォーター”“アイシクル”“ストーン”“ウインド”っと、異世界で最初に覚える初級基礎魔法を使っていったら、全部使える事が分かった。
「――――やっぱ夢じゃなかったか。」
まさかこの世界でも魔法が使えるなんて思いもしないよな。
しかもこの様子だと、俺が編み出した魔法も剣技も全部使えるのかもな。
「魔法が使えたって事は、スキルも使えるのか? 『鑑定』」
鑑定の対象は……机にある俺のバッグでいいか。
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肩下げバッグ
四年前に白崎零が購入したバッグで今なお活用している。
日本には250個ほど売られており、バッグ自体の丈夫さが売りになっている。
防水機能があるため、雨や雪の日には最適のバッグだ。
購入金4000円 売却金1000円
所持者 白崎零
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おぉ、ちゃんと鑑定してくれている。
しかも購入した金額とか売却もわかるのか。
これって、ある意味こっちでは活躍しそうだな。
「あとはそうだなぁ……収納庫の中身とかも確認しとくか。」
異世界ではかなり活躍してくれた収納庫先輩の中身は、多分あのまんまなのかな?
そんな事を思いつつ、中身を全部確認していった。
「金貨に地図、ポーション,食料,調理器具,衣服,寝具,医療品,ランタン,武器が複数……後は魔物の素材とかか。」
あっちで手に入れたアイテムを一つ一つ確認をして言ってたら、聖剣や聖遺物、神器などがあったのを思い出した。
ヤッバ! これって返さないといけねぇやつじゃん!
神器のほうに至っては聖剣だけしか使ってなかったから、完全にこれの存在忘れてた!
そう言えば誰も聖剣や聖遺物を返してほしいとか言わなかったし、ティファニスさんも神器に至っては、まったく言わなかったし、これってマズいよな。
でも返すといってもどうやって返そうか分からないし、あっちにはもう行けそうにないだろうし、どうしたもんかな…。
「――――――あっそうだ。向こうに連絡すればいいのか。」
確か俺の携帯からティファニスさんに連絡ができるって言ってたはずだし、こうゆう時に使うべきだよな。
そうと決まれば早速するか。
そう思い携帯に手を伸ばそうとしたら、向こうのほうから連絡がやってきた。
俺の思考読まれてた?
それとも今の俺を神界から見ている?
いや、偶然だろう。
まぁ向こうから来たのなら、ちょうどいいか。
ただ表記がそのまんま『女神』なのがアウトな気がするけどな。
「はい、もしもし。」
『レイさんが聖剣や神器などの返却を悩んでると思ったので、電話をしてみました♪』
前言撤回、やっぱ見られてるな。
地球にいる俺を向こうから覗き見してるな。
「なんで知ってるのかは敢えて黙っておきますね。それより話が分かってるなら、どうしたらいいですか?」
『そうですね。今日は遅いですし、明日夢の世界に来ますので、神器だけ用意しておいてください。』
「え? 聖剣と聖遺物は回収しないのですか?」
てっきり勇者の役目を終えたら聖剣は神に返されると思ってたけど、そうじゃないのか。
しかも聖遺物も同じとは。
何かしらの意味でもあるのか?
『これは教えていなかったので話しておきますね。聖剣というのは精霊と同じようなもので、宿り主を見つけて契約を果たしてしまうと、死ぬまで永久的に体の一部になって宿ってしまうのです。それは聖遺物も同じなのです。』
「そ、そうだったのですね。」
俺の精霊との契約は一つだけ。
それがこれから永遠に消滅しないのか。
確か俺の精霊は、従者になってた彼女の加護だったから、風の精霊の加護になるのか。
風の場合は何の意味を成すのかはあんまり知らないけど、多分俺の体に風が纏うとか何かかな。
まぁこれはのちのち知っていくか。
あ、聖剣はまだしも、聖遺物は大丈夫なのか?
「あのティファニスさん、聖遺物って確か肉体が老けにくくするものなのですけど、そっちのほうは大丈夫なのですか?」
『それなら大丈夫ですよ。元々聖遺物の役目というのは、対象者の肉体を老けにくくするだけですし、聖剣の持ち手としての意味を示すものですので、人体にはあまり大きな影響はないですよ。別に寿命は延びたりしませんし、変わるとするなら、周りがおじいちゃんおばあちゃんでも、自分だけはナイスガイなおじさんのままって考えればいいと思います。』
聞いてて正直あてにはならないけど、まぁそういった捉え方をすればどうにかなるか。
実際母さんはもう40に近いけど、見た目が20代に見えてしまってるから、親の遺伝なりなんなり嘘を言っとけば何とかなるか。
あ、でもそうなると華怜はかなり不憫になっちゃうな。
自分だけ将来おばあちゃんになっても、若く見られないだろうし。
その辺りは将来的に恨まれるかもな。
『まぁ何かあっても明日会いますので、その間に何かあったら明日聞いてくださいね。あ、ちなみに私との連絡の履歴は存在しないようにしてるので。それでは失礼いしま~す。』
「あぁ! ちょっ!…切れたか…」
まだあの時言ってた「彼女」の事を聞こうとしていたのに、一方的に切られたな。
しかも言ってた通りに履歴書には存在していないし。
よく見たら連絡先の名前が隠蔽のせいなのか、異世界の文字でもなければ、こっちの文字でもないような存在しない文字で隠してやった。
しかも編集もできないようにしてるとか、何でもありだな。
「しゃあねぇ、近い日に来るみたいだし、その時にどうかすればいいか。」
それにちょうどまた眠気もやってきたし、今度こそちゃんと寝よう。
てか明日が土曜日でよかったわ。
この状態のまま学校になんて行けないもんな。
ピピピピピピ
「んん……ふぁぁ……朝か……」
少し早めに寝ていたおかげか、早めに起きれた。
体力も回復してると思うし、二人の分の朝食も一緒に作ってやるか。
体を伸ばしてからベッドを出て、部屋着に着替えて一階に下りた。
今日の料理当番は俺だったから、顔を洗ってか早速取り掛かった。
昨日の白飯と味噌汁の残りをメインにして朝飯を作っていくとして、後は冷蔵庫の中にあった魚を焼けばいいかな。
今日は土曜日だし、少し凝ったのを作ってやるか。
「しっかし、彼女って一体誰のことだ? 地球に来るっつー事は、転生者か?」
あぁいや、転移者の可能性もあるのか。
「転移者」と「転生者」はまったく意味が違う。
「転移者」は、異世界から召喚されたり、その世界に行き着いたりする存在。
簡単に言えば、俺のような勇者が一番該当するな。
対する「転生者」は、別の世界で死んで、その世界で第二の人生を送っている者を表す。
その場合4代目勇者の人がそれに該当するな。
「転生者か転移者のどっちなのかは分かった。でも俺の関連してるっていうのは未だ謎だ。」
いや、そもそも関連性ないしでこっちに来たいって可能性もあるのか。
そうなるとあり得そうなのは、アイリスかメリッサか?
でもあんな別れ方しておいて俺に会うとなると、気まず過ぎないか?
「誰にしたって、俺がどうにかしないといけないのは変わりないか。」
冷蔵庫にあった鮭をフライパンで焼いていたら、母さんと華怜が眠たそうに目を擦りながらリビングに入ってきた。
「おはよう二人とも。」
「おはよう……零くん…」
「おふぁよぉぉ……おひいちゃん…」
母さんならまだしも、華怜はまだ眠たいのなら寝ていればいいのに。
後なんだよおひいちゃんって。
欠伸をしながら言ってるけどなんだよそれ。
「もう少ししたらご飯できるから、その間に顔でも洗ってきて。」
「「ふぁぁい。」」
あぁいったもの見てると、母さんと華怜はそっくりだよなぁ。
俺は父さん似で、華怜は母さん似。
実際華怜はいつも元気だけど、母さんと同じで朝だけは弱いからな。
「よし、いい感じに焼けたな。」
フライパンで焼いてた鮭がキレイに焼けて、朝食の準備ができたところで二人が洗面所から帰ってきた。
顔には眠気はなく、いつもの二人になってた。
母さんは朝飯を食べたらまた仕事だろうなぁ。
「「「いただきます。」」」
全員が椅子に座ったところで一緒に食べた。
まずは昨日と同じように味噌汁からだな。
うん、美味い。
そして焼いたばっかの鮭も美味い。
我ながら自分で作っておきながらいい出来だな。
それにこういったゆっくりでいる時間は、白飯と味噌汁が一番しっくりくる。
こだわりすぎだと思うけど、異世界で生き抜いてきた者からしたら、こういったものが体に染み込んでいくものなんだよ。
朝飯を堪能して、歯を磨いて華怜と一緒にリビングでのんびりテレビを見ていた。
母さんはいつものように二階の自室で小説作成。
そんな当たり前のような休日を満喫していたら――――――
ピンポーンッ
「ん? 誰か来たな。」
「朝からなんて珍しいね。」
10時になったあたりで、インターホンが鳴った。
しかもこんな早い時間に来客が来るのは珍しい。
もしかして母さんの小説の担当者でも来たのか?
「ちょっと行ってくるわ。」
「うん。お茶か何か用意しておいたほうがいいかな?」
「とりあえずいつでも出せるように準備はしときな。」
華怜に言ってから俺は玄関に向かった。
部屋着だけど外に出られるような服装だし、恥ずかしがる事は別にないか。
「はーい、おまたせし…まし…た。」
玄関のドアを開けると、そこには母さんの担当者じゃなく、雑誌のモデルに出てきそうな赤い眼をした金髪少女が立っていた。
えっ……誰?
もしかして、昨日ティファニスさんが言ってた「彼女」なのか?
てことは、客は母さんじゃなくて俺か?
いやでも、こんなかわいい少女に知り合いなんていない。
それどころか異世界でも見かけた事がない。
「え――――っと……どちら様でしょうか?」
多少の疑いながら聞いてみると、目の前にいた彼女は笑うと衝撃の一言を言った。
「久しぶりだね、勇者。」
「!!?」
俺は秒もかからない勢いで右手に雷魔法を纏わせた。
今確かに、俺の事を勇者って言った。
俺の事を勇者と知っているのは、ごく僅か。
一般人で知ってるのは王都にいる人間だけ。
もしくは他国の王族か側近。
それ以外には勇者という名は隠していた。
今目の前にいるのは、俺の知らない人物。
一度会ってる人物は知ってる。
特に国の王や王女などの王族の顔は、鮮明に覚えてる。
それは仲間だったべレナスの国の獣人王も、ハンドレッドの国のエルフの王も知ってる。
でも今目の前の彼女は、どれにも当てはまらない。
つまり今の状況で明かされる答えは、彼女は魔族サイド。
「もう一度確認する。――――――お前は誰だ?」
今度は呑気な言い方じゃなく、警戒した言い方で言った。
そして僅かながら殺気も出して言った。
というより、この状態はかなりマズいな。
この辺り一帯は、住宅が並ぶ場所。
ましてや今は家の玄関。
ここで争うとなると、甚大な被害が出るのは間違いない。
俺一人で戦うとなると、軽傷から重傷は確実。
しかも幹部となると、最悪「死」だな。
「殺気は出さないで。戦いなんてしたくないんだから。それにあの時、ちゃんと「また会おう」って言ってたんだしね。」
彼女は笑ってそう言うと、一度頭を軽く下げて自己紹介をしてきた。
「初めまして。私は神崎真莉亜。貴方に倒された、魔王マリアベルよ。」
「―――――――――は?」
俺の予想をはるかに超える答えが返ってきたのに愕然とした。
どうやらティファニスさんが言ってた「彼女」の正体は、俺が異世界で最後に戦った魔王本人だった。
ということでこの作品のメインヒロインである魔王さん登場です!
いやメインヒロインなら登場させるの遅すぎだろう俺!!
もうちょっと早めに登場させろよって思いました。
ホント登場させるの遅くなってごめんなさい。