55話 髑髏の奇襲
俺と桜さんは、仮初の形ではあるが、同じ神の加護を持ってる者同士として、姉弟になりました。
まぁ俺からしたら姉という存在はいなかったからか満更でもないし、桜さんも桜さんで顔には出してないけどかなり喜んでいるようだし、良しとしよう。
「は…はっくしょん!!」
そんな些細な事を思っていたら盛大にくしゃみをしてしまった。
というか外寒ッ!
さっきまで暖まっていたはずなのにもう寒い!
ヤバイ…風邪引きそう。
「ん、流石に外に居りすぎたな。では部屋に戻ったら、お姉ちゃんが暖めてあげよう。」
「ちょ、流石に彼女持ちの俺が他の女性と暖をとっていたらまずいですよ!」
「別に問題ないであろう、姉弟で暖め合うのは当たり前ではないか。」
どうしよう…姉弟になった瞬間すごい距離感が狭まったのですけど。
桜さん、本当は弟か妹が欲しかったのかな……
「それに零、妾と姉弟になったのなら、妾のこの尻尾を触り放題なのだぞ?」
「なん…だと…!?」
え、それってマジですか!?
触っていいんですか!?その尻尾!
この人…ついに自分の尻尾を使って誘惑して来やがった!
「じ、自身の尻尾で誘惑するとは…卑怯な!」
「焦らずとも良い、とにかくまずは体を暖めるのが先だ。尻尾を触るのはそれから考えるが良い。」
桜さんはそう言って庵の方へ歩いて行き始めた。
というかなんだろう……この負けた感は。
いやまぁ確かにその尻尾は触りたいけど、触りたいけど、せめて心の準備はくださいな。
まぁ今言ったってもう桜さんは庵の方に行ってるし、俺も早く戻って暖を取り直すか。
『……けて。』
「ん?」
俺が庵の中に入ろうかと歩き始めた瞬間に、誰かの声が後ろから聞こえた気がしたので、後ろを向いた。
「……誰もいないな。」
「どうしたのだ零、早く入らないのか?」
「あ、いや…なんか子供の声が聞こえた気がしたので。」
「子供?」
『助けて。』
「! 今度は確実に聞こえました!子供の声です!」
今度は確実に聞こえた。
だけど声の主は何処にも見当たらないし、なんて言うか…この声って…
「声?…声……っ!いかん零、この声はー」
桜さんが俺に何かを叫ぼうとしていたが、何故か途切れてしまったので振り返ってみると、庵はなく、全く別の場所に移動してしまっていた。
「え?…これって、『空間転移』!?」
しかもここって、結界の外じゃねぇか!?
まさか、さっきの声って俺を帯寄せるための罠か何かだったのか!
というかマズイだろうこの状況!
運良く結界石を持ってたからこそいいけど、俺のHPは半分以下の状態だったし、ここが何処だかも分からない時点で完全に詰んでるんじゃないかよ!
「いや、よく見たらここは村だった場所みたいだな。だったら『飛行』を使って空から見れば、庵の場所が分かるかもしれないな。」
『ソレハ無理デスネ。何故ナラアナタハ、ココデ死ヌ運命ナノデスカラ。』
「っ!?」
俺がスキルの『飛行』を使おうとした瞬間に声が聞こえて、その声が聞こえた方向を向いてみると、そこには数多くの怨霊が塊となった化け物が、俺の後ろに佇んでいた。
『初メマシテ、私ハ妖ノ頭ノ最後ノ一人、髑髏コト暗暴骸香ト申シマス。』
「へぇーわざわざそっちから呼んでくれるなんてな。ありがとね、探す手間が省けたよ。」
『余裕ヲ持ッテイラレルノハ今ノウチデスヨ。何故ナラアナタハココデ死ヌノデスカラ。』
「そうかよ。なら先手必勝、くたばりやがれ!『禁じられし氷槍の雨』!」
俺は先手を取ってからゴリ押していく戦法で行くために、初手からいきなり氷の槍を限界まで出して、それを一気に髑髏に向けて放った。
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「みんな大変だ!」
「おわっ!?こら桜、いきなり戸を開けて叫ぶでない!」
私たちは初めて声を荒らげた桜さんに驚いて、しかも何か慌てた感じだったので、疑問を持ちながらも久遠さんの言葉に内心同意した。
正直言ってビビりました……はい。
「荒らげてしまったのは謝る!だが今はそれどころではない!零が髑髏の所まで連れて行かれてしまった!」
『!?』
零君が連れて行かれたという言葉に、その場にいた全員が驚きと焦りが渦巻く気持ちになってしまった。
「それってどういう事ですか!?零君が髑髏にやられたって事ですか!?」
「いや、奴の罠に掛かってしまって、そのまま奴の所まで連れて行かれた!恐らく妾たちから分離させて殺すためだろう。」
「そんな……!」
今の私たちは髑髏の場所を把握していない上に、鬼との戦闘で魔力を消費している状態だから、零君の救出は絶望的な状態になっていた。
「い、今からでも髑髏を探せばまだ間に合うのでは!」
「しかし場所が…!」
「待ってください!髑髏の場所でしたら分かるかもしれません!」
「! リラちゃん、それって本当なの!?」
私はリラちゃんからの言葉に、少しだけ希望が見えた気がした。
いや、たとえ気がしたであっても、まだ助けられる可能性があるのなら、どんなやり方でもやってみせよう。
「稲荷神社に行きました時に、橘花様から、髑髏はかつて人が集まっていた場所にいると言われてました!」
「なら恐らく、ここから西の方にあった集落におる可能性があるな!」
「確かめて見ます。『神術 千里眼』!」
リラちゃんは自身の神の加護で手に入れたであろう神術を使って、捜索を始めた。
どうやらリラちゃんもそうだけど、零君の従者はみんな零君が好きなんだな。
リベルたちも私の事は大好きみたいだし、なんだかんだ色々似ているみたいね、私と零君は。
「! 見つけました!ここから西の集落に、レイ様がいました!今は髑髏と交戦中みたいです!」
「なら早速向かうぞ!真莉亜、リラ、妾たちで向かうぞ!」
「「はい!」」
「久遠、冬華、二人の事を任せたぞ!」
「承知した!」
「わかりました!」
「『神術 栄光の箱舟』……こっちです、付いて来てください!」
「よし、行くぞ!」
私と桜さんは、リラちゃんの後を付いて行くようにして、零君がいる集落に向けて走った。
(待ってて零君。必ず助けるから!)
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『ドウシマシタ、全然当タリマセンヨ?』
「チッ…オラ!」
俺はしばらく氷の槍を何本も作りながらは投げての繰り返しをしていたのだけど、さっきから全然当たっていなさそうな感じに見えてしまい、今は炎や雷などで攻撃をしている。
(これもハズレ……やっぱ亡霊だからすり抜けてるのか?)
『モウ諦メタラドウデスカ?ツマンナイデスヨ?』
クッソ……ずっと当たらないからって煽って来やがって…!
マジでムカつくな…!
仕方ない、後はコレに賭けるか。
『オヤ?攻撃ヲ止メマシタケド、モウ諦メタノデスカ?』
「生憎だが、俺の辞書に諦めるって言葉はないんだよ。」
『デシタラー』
「だから悪いけど、切り札の一つを使わせてもらうぜ!」
『切リ札?』
(さっきまでずっと煽られまくったせいでかなりムカついているんだ。さっさと終わらせてやる!)
それに、真莉亜たちも心配しているだろうからな。
そう思いながら俺は『収納庫』から聖剣を取り出して、あるワードを言った。
そのワードは、本来の聖剣の力の解放として持ち合わせてるんだけどな。
「真名解放 聖剣…フォーマルハウト!」
俺が聖剣の名前を言ったのと同時に、刀心は銀色から宵闇色に変わっていき、疲労で重かった体が一気に軽くなった。
俺の切り札の一つ、聖剣の真名解放は、自身のステータスを二倍にするのと、聖剣が大気中にある魔力を吸収してくれて、自身の魔力消費を削減、体力回復をしてくれるというチート機能なのだ。
だけどデメリットとして、これはいつでも発動できないわけであって、月に一,二回しか使えないという回数制限がある。
そのためこれを使うときは、一気に終わらせたい時しか使わないようにしている。
「鵺の時にも言ったけど、悪いが、こっからはずっと俺のターンだぜ!」
『ナラヤッテミナサイ。私ニ当タルカシラ?』
まだ煽ってきているけど、その余裕の顔を歪ましてやるよ!
何故なら俺は、ものすごく怒ってるんだからな!
「だったらそのまま突っ立ってな!『常闇を掻き消す神剣』!」
俺は髑髏に向かって走りだし、とりあえず光魔法が効くだろうという安直な考えで攻撃を仕掛けた。
『! コノ光ハ……『無月紫爪』!』
髑髏はまたそのまんま何もしないかと思っていたら、妖術を使って防御の体勢になった。
(あれ、もしかしてこれが当たりか?)
攻撃が相殺されて、少しだけ考えるため一旦距離を置いた。
アイツ…避けるじゃなくて防御した。
しかも相殺するかのように。
……これだ!
「『聖女の矢』!」
ちょうど距離が空いているのを気に、俺は数本の光の矢を髑髏に放った。
『マ、不味イデス!』
髑髏は焦りながらも避け続け、運良く全部を神回避しながら避けた。
(弱点発見☆)
俺は奴の弱点がわかった瞬間、間髪を入れずに連続攻撃を実行する事にした。
『マ、マサカ光ノ妖術ガ使エルトハ!ココハ一旦逃ゲタホウガ吉トー』
「逃がさんよ☆『神術 封洞 天岩戸』!」
何だか髑髏が逃走を謀ろうとしていたので、新しく手に入れた神術を早速使って動きを封じた。
ちなみにこの神術は、対魔族・魔性特攻の封印術みたいなもので、これを使えば、その敵の行動を封じる事ができるらしい。
『ナ……カ、体ガ!』
そしてどうやら奴には効果はあったらしく、地面から囲うように岩が出てきて、髑髏の行動を完全に封じる事ができた。
「あれ〜どうしたのかな〜?逃げるんじゃなかったのか?」
『グッ……クソッ…!』
「長引かせる気は無いからトドメを刺してやるぜ。『常闇を掻き消す神剣 究極』!」
もう時間も掛けたくないし、見た感じ鵺と比べたら思ってたよりも雑魚だったから、つまんないしもうトドメを刺す事にした。
そしてさっきと同じ技を出したけど、一発目のほうは文字通りの光を纏った剣だったけど、今から出すほうのやつは、聖剣の真名解放をしているから威力は倍になり、色は今の聖剣と同じで宵闇色の光を纏っていた。
「これでゲームオーバーだ!」
『マ、待テ!頼ム、待ッテクレーー!!!』
「やれやれ困ったものだのう…」
「!?」
俺が振り下ろした聖剣は確かに髑髏に当たっているはずだった。
だけど何処からか声が聞こえた瞬間、髑髏の姿がいなくなっており、後ろから気配が感じ取れたから振り返ってみると、少し離れた所に髑髏と一人の老人があった。
そして俺は瞬時にその老人が誰かなのかわかった。
何故ならその老人は、鵺の記憶に映っていた老人と一致していたからだ。
つまり結論に至ると、今髑髏の隣にいる奴が、ぬらりひょんだって言う答えにたどり着く。
『ア…アアア…ヌラリヒョン様、助ケテクダサリアリガトウゴサイマス!』
「貴様がやたらとボコボコにされていたからな。少しだけ手助けしてやろうと思ったんじゃ。」
『アア……感謝ノ極ミ。マサカアナタ様カラ助太刀ヲシテイタダクトハ!』
「……お前がぬらりひょんか?」
俺が声を掛けると、向こうも気が付いたのか、ニヤニヤしながらこっちを見てきた。
「お主と会うのは初めてじゃな。いかにも、儂がぬらりひょんじゃ。」
「…そうか……『聖女の矢』。」
俺は何も考えずに30本の光の矢を作って、目の前にいる元凶に向けて一斉に放った。
『ヌラリヒョン様!』
「心配するな……ほれ。」
髑髏がぬらりひょんに叫んだけど、ぬらりひょんは何故か避けるそぶりをせず、持ってた杖を前に出した。
そしたら杖の先から黒い渦が現れて、『聖女の矢』は全部その渦の中に吸い込まれていった。
「ふむ……こんなものかのう。」
『流石デス、ヌラリヒョン様!トテモ素晴ラシイ!』
髑髏がぬらりひょんをおだてていたが、俺はそんな事を気にしないで、さっきぬらりひょんが使った技について考えていた。
(何だ今のは…?まるで黒い渦に取り込まれていくような感じに見てたが?)
俺の中で、それはブラックホールに近いものにも見えたし、巨大な口みたいにも見てた。
だからこそぬらりひょんの妖術がどんなものなのか分からなかった。
「さて暗暴骸香、儂は元の場所に戻る。後は好きにしろ。」
ぬらりひょんが髑髏に何かを渡し、それを髑髏は躊躇い無しに取り込んだ。
『オオオオオオオ!!』
取り込んだ瞬間、『神眼』で髑髏の中の妖力が膨れ上がっていくのが分かり、俺は内心マズイなって思いながら聖剣を構えた。
『コレハ素晴ラシイ!力ガ漲ッテクル!』
髑髏の姿はどんどん変わっていき、腕が二本増えて四本になり、図体もさっきよりも大きくなっていた。
『サア、再死合ヲ始メヨウジャナイカ、人間!!』
今日から仕事……億劫だな…
次回は金曜日の昼12時に投稿します。




