24話 波乱から始まる転校初日
「ねぇねぇ、白崎君とはいつ頃から付き合い始めたの?」
「もうデートとかはしたの?」
ホームルームが終わり、先生が教室を出たのと同時に真莉亜の周りに女子が集まり、俺との馴れ初めを聞き始めた。
ただ全員じゃない。
数は3,4人程度だ。
さっきの先生の話を守ってくれていた。
他の女子?
ずっと黙って聞き耳を立ててるよ。
「付き合い始めたのは一昨日だよ。デートは私のために服を選んでくれたり、楽しい思い出にしようとゲームセンターに行ったんだよ。」
「どんなとこに惚れたの?」
「私がどん底にいた時に、零君が私を助けてくれたの。その姿に見惚れちゃって……それに……。」
「「「「それに?」」」」
「手を差し伸べてきた零君が、ずっとかっこよくて……だから一緒に暮らしたいって決めたの。」
「「「「きゃあああああ!」」」」
真莉亜が顔を赤くして言うと、真莉亜に集っていた女子が一斉に黄色い声を出し、それを聞き耳立ててた女子も顔を赤くさせていた。
「う、初々しい…。」
「尊い。」
「あれが本当の…恋に落ちた女の子の顔……。」
「我が生涯に……一片の悔い…無し…。」
真莉亜の初々しさに衝撃を受けたのか、一部の女子が机に突っ伏したり、心が汚れてる自分に後悔した顔をした者もいたし、中には鼻血を出してグッドサインしていた者もいた。
てか真莉亜さん、それは反則ですよ。
女子が集まりだして自分の机から退散したけど、真莉亜の出した恋の波動の射程範囲にいたせいか、今の俺はただ赤くなった顔を隠すことしかできなかった。
あ、熱い…!
顔が自然発火しそうなくらい熱い!
あれが少し前に戦ってた魔王さんなんですか?
完全に恋する乙女になっちゃってますやん!
「くっそぉぉぉ……すでに白崎に恋してたのかよ!」
「相手が白崎だから何も言えねぇ…! 俺めっちゃ世話になってるから。」
「というより、クラスの大半が白崎に助けられてるからな。主にテスト関連で。」
「しかも神崎さんのあんな顔見せられたら、邪魔する気にもなれねぇよ…!」
「汚したくない…! あの恋する乙女の顔…!」
「「「「禿同!」」」」
男子は俺に対して嫉妬の眼差しをしてくるかと思ったけど、前からテストの予習で何度も助言していた奴らがほとんどだったからか、俺に憎しみを込めた者は誰もいなかった。
よかった、積み重ねた信頼が嫉妬を止めてくれた。
―――でも他クラスからの嫉妬は止めれなかった。
現在、廊下で幼馴染二人に絡まれてる状態。
そして左右からは嫉妬と憎しみを込めた醜い男どもの視線が刺されまくってます。
でも視線は痛くなかった。
なぜなら―――――
「やったじゃねぇか零! 大当たりだろあれ!」
「あんた、このチャンス逃すんじゃないよ!」
幼馴染による祝福のおかげで相殺できていたからだ。
「しっかし、お前っていつ神崎と会ってたんだ? 俺たちは知らねぇぞ?」
「知らなくてもおかしくはねぇよ。何せ一緒にいたのは別の家の時だからな。」
(嘘だけど。)
「案だけかわいいなら、結構印象にあったはずなんだけどなぁ。」
「会ってないから当然だろ?」
(少し前まで異世界にいたからな。)
心の中で隠してるけど、この二人に隠してるのは少し心苦しいな。
でも相手は元世界の魔王なんだ。
しょうもない嘘だなんて言われたくないし、何より痛い幼馴染にされたくない。
だからごめん、俺は前らに真実を隠すよ。
「でもさ、俺が彼女持つのは不安なんだよな。足引っ張りそうだし。」
戦力も向こうが上だし、魔力は同じだけど戦闘経験が違うしな。
前はどうにかなったけど、今度はそうもいかねぇだろうし、サヨリかアストレアに頼んで特訓するのに付き合ってもらおうかな。
「「え? それはないだろう。」」
あれ? 意外な反応が返ってきたけど、これってどんな意味での否定だ?
まさか…こいつら俺たちの招待に気付いているのか!?
「…なんでそう言い切れるんだ?」
「だってお前って成績も学年2位だし、家事料理と得意だし、顔もそこそこイケメンだし、かなり高額物件と思うぞ。」
「中学時代知らなかったと思うけど、あんた結構女子にモテてたのよ。」
違うな、これはそういった意味での否定じゃないな。
え、てか待てよ。
俺って中学の時モテてたの?
全然そんな雰囲気感じたことなかったんだけど?
「明日香、それってホントなのか?」
「ホントよ。あの時はイジメの後遺症が酷かったから知らなかったと思うけど、トモと一緒であんたのファンクラブがあったんだよ。」
「マジで…?」
俺の知らなかったとこで、そんなのが存在してたのかよ!
確かに中学の頃はイジメの後遺症で周囲とは関わりを持とうとはしてなかったけど、何時どうやってできたのかすら知らんから少し怖いんだけど。
「ど、どうしてそんなのがあったんだ?」
「たしか出来始めたのは2年の最初のほうだったけど、あの時は―――――あっ、調理実習が終わった二日後辺りだったわね。」
「あっ、俺もう予想できたわ。多分零の作った料理がよかったから、それを食べた女子が零に好感を持つようになったんだろ。」
「当たり。それから菓子作りとかで菓子が出る度に増えていって、最終的には30人はいたはずだよ。」
「――――そういえば菓子作りの時にやたらと多く作ってとか言ってた女子が多いなって思ってたけど、まさかそれだったとはな。」
中学は俺の家の事もあってすぐに料理が覚えたかったから、部活も「調理実習部」に所属していて、菓子から普通の料理などと、とにかく基本的なものを1年の間で覚えていった。
そのおかげか、高校に入るまでにはすでに料理の基礎は完全に覚えることができ、今では料理人と同じスキルを身に着けることができている。
「お前の作る料理がうますぎて、何度も体重が増えたのはいい思い出だよ。」
「去年の文化祭の時にやったメイド喫茶の料理なんか、ほとんど零に頼りっきりになって、料理がうますぎるって話題になったせいで行列になって、三年や二年を押しのいて貢献度トップになったもんね。」
「くじでスーツ姿のまま作ってたのを思い出したよ。」
あの時はマジで謎だった。
何故か裏方の仕事なのにスーツに着替えさせられて料理をする羽目になって、結局意味の分からないまま最後までそれで通したんだっけな。
「そういえば生徒会や先生の間じゃあ、俺専用の屋台をさせようとか噂になってるみたいだぜ。」
「「最高じゃん。絶対やれよ!」」
「お前らって、食に関しては正直だよな…。」
俺の身内って、何故か「食」に弱いんだよなぁ。
現に俺の従者は全員即オチだった。
もちろん、あの勇者の仲間も。
「でもまぁ……零に恋人かぁ……あの子の苦労が全部無駄になったわね。」
「ん? 何か言ったか明日香?」
「別に。それより、恋人さんを早く助けていったら?あれ、質問攻めで疲れてるわよ。」
「え? ……うわっマジだ。ちょっと助けに行ってくる。」
真莉亜の方を向いてみると、質問に答えるのに疲れたのか、こっちを見てSOSをしていた。
慌てて真莉亜のとこに行って女子たちに質問は終わりと言ってその場から退散させて、真莉亜を二人のいる廊下に連れて行った。
「つ…疲れたわ。」
「どれくらい質問されたんだ?」
「6個目あたりで数えるのをやめたわ。」
「転校初日から災難だな。」
すでにぐったりした状態になっていて、俺が支えてやらんといけない状態になってた。
それを見ていた女子はグッドサインを出し、男子はさらに嫉妬の目線を強くさせていて、その場がもう修羅場にしか見えなかった。
「ところで、零君の横にいる二人は誰なの?」
「俺の幼馴染のトモと明日香だよ。」
「相川智也だ、よろしく。」
「加藤明日香よ。これからよろしくね。」
「あぁ、零君の幼馴染だったのね。神崎真莉亜です、どうぞこれからもよろしく。」
なんか思ってたより軽い挨拶だな。
アストレアの挨拶よりかはマシだけど。
チャラ男みたいによろぴく☆って言わない限りマトモか。
「しかしこの興奮は、しばらく収まりそうにないかもな。」
「多分2,3日はかかるかもね。」
「うへぇ~……そんなに耐えられないよ~…。」
まぁ家庭事情があるって言っておきながらのこれだからなぁ。
さすがに俺も黙って見守るのはできない範囲だな。
だとしたらどうするか……。
「――――あっ、そういえば明日香。お前って新聞部の中に知り合いがいたよな?」
「え? いるっちゃいるけど、どうして?」
「俺たちの事情を取材してもらって、明日の掲示板新聞に貼ってもらう。それで少しは収められるができると思うからだよ。」
新聞部は面白いネタには食いつきやすい。
多分俺たちの関係にもすぐに首を突っ込んでくるだろう。
だとしたら、このままいっそ勇者と魔王以外の事情をさらけ出して、公認カップルにさせてもらおう。
「なるほど、それは確かに有りかもね。それにこの状況じゃ、取材も時間の問題になるだろうし。」
「だろ? だからお前の言伝で向こうと時間を合わせてくれるように頼んでもいいか?」
「そうね。これから仲良くなる友達なんだし、零の頼みだから一役買ってあげるわ。」
「ありがとう。報酬は次の日に渡すよ。」
「品は零の作ったスコーンで。」
「了解。」
報酬が分かりやすいから助かる。
やはり「食」。
食は人の心を揺るがす最強の武器。
覚えておいてホントによかった。
「なんかごめんね。私のためにそこまでしてくれて。」
「彼氏が彼女のために動くのは当然だろ? それにあん時言ったろ。「ジジババになるまで楽しい思い出を何個も作って、一生後悔しない人生を作ろうぜ」って。困ったことがあるなら、俺がどうにかしてやるんだからよ。」
「でも…あんまり迷惑なんてかけたくないし、私だって、どうしたらいいか分かんないだよ。」
「心配するな。俺はお前を幸せにさせるって決めたんだ。幸せが分かんねぇなら教えてやるし、作れねぇなら作ってやる。だからお前は俺のために、ただ笑ってくれ。それだけで充分だからよ。」
俺は真莉亜の頭を撫でながら、自分の本心を言った。
魔王時代に苦しんだ分、今を楽しく生きることをさせて、少しでも過去を忘れさせよう。
いや、忘れさせるんだ。
俺が絶対にな。
「…うん、ありがとう。」
真莉亜も安心したのか、顔を少し赤らめさせながらも笑ってくれた。
うん、やっぱ笑うのが一番だな。
それが何よりも幸せである証拠だ。
「……なぁ…零。」
「ん? どうしたトモ?」
横にいたトモが俺の肩を叩いてきて、俺はそっちを振り向くと、何故か呆れたかのような顔をしていた本人がいた。
え? どうした?
何で呆れてるんですか?
「お前、ここが生徒がめっちゃ集まる廊下だって分かってるか?」
「なんだよ、そんなの知ってるに決まって―――――あっ。」
俺は真莉亜のほうを気にしすぎてしまったせいで、最大のミスを犯してしまった。
そう、ここは廊下。
生徒が一番集まる場所。
そして今、他のクラスが俺たちに視線を向けている。
もう後はお分かりですね?
現在俺たちの周辺が地獄絵図になってます。
俺たちを見ていた女子の全員が顔を真っ赤にさせていて、男子は嫉妬の視線をやめて敗北のオーラを出していた。
やっちまったな。
盛大にやっちまったな。
黒歴史確定ですやん。
もうネタにされますやん。
「お前、後遺症がなくなって彼女ができた瞬間、一気にイケメンになったよな。」
「イケメンになったかどうかは分かんないけど、これはやらかしたよ。」
「零、今度のコミケのネタ、今のを採用していい?」
「やめてくれ。俺の黒歴史を本にするのはやめてくれ。」
明日香の描く同人誌のネタにされるのは勘弁してほしい。
俺の醜態が全国に行くのだけは阻止したい。
もしそうなったら、記憶から消そう。
遠い歴史に飛ばそう。
うん、そうしよう。
「零君、これからよろしくね。」
真莉亜は周囲の今の状態を全く気にすることはなく俺に笑ってきた。
笑うのはいい。
かわいいからいい。
でも今言われても複雑。
恥ずかしいことをやってしまった俺にとってはかなり複雑です。
…でもまぁ、しょうがないか。
これも試練だ。
ならば受け入れよう。
己の精神を削ってでも!
「まぁこれから大変かもしれんけど、こちらこそよろしくな。」
その後はとにかく大変だった。
俺の醜態が知り合いである生徒会にまで行ってしまい、過去最大の屈辱を味わうことになってしまったし、明日香に頼んでおいた新聞の取材の次の日には、新聞の一面にでかでかと「世界が認めた公認カップル」と載せられて、さらに恥ずかしい思い出になってしまうことになってしまった。
しかも帰り道で真莉亜の頼みで手を繋ぎながら帰ってる所を華怜に見られてしまい、二人からからかわれたりとするのだが、それが懐かしい思い出となるのはまだ遠い先の未来の話。
第一章はこれで完結になります。
次回はキャラクター紹介と従者たちの閑話を投稿します。
そして自分は今日22歳になりました。




