19話 契約召喚と彼女の過去
「いててて……リラ、俺の体が倒れるほどのタックルを急にするなよ。」
俺は倒れた状態でリラの頭を撫でてると、胸にずっと顔を押し付けてたリラが俺を見てきた。
リラの顔は涙と鼻水でぐしゃぐしゃになっていて、俺の顔を見た途端にさらにぐしゃぐしゃになって悪化した。
「だっで……だっで……レイざまががえっだっで言われで……ざびじがっだんでず………なんでがえっだんでずが!?」
「あぁ……すまん、あのままお前たちと会って別れるのは悪いんじゃないかって思ってしまったな、許せ。」
こればかりは俺が勝手に決めた以上、俺が悪いんだ。
素直に謝るのが吉だな。
確かリラや他のみんなと最後に会ったのって、王都に魔族が襲来して援護に行けと支持した時だったから、ざっと二ヶ月前になるんかな。
「えーっと…零君、その子って、零君の従者の子なの?」
「あぁ、妖精族のリラで、俺の最初の従者だ。」
真莉亜の顔を見てみると、明らかに戸惑いと焦りが見て分かるし、後ろにいる真莉亜の従者たちも、何が起こってるのか困惑していた。
ごめんね、うちの子が泣いちゃって。
少し長くなるだろうけど、待っててね。
「ほらリラ、他の人もいるんだから、一旦泣き止みなさい。」
そう言って後ろからリラの背中をポンポン叩いているのは、同じ俺の従者である、ウサギの獣人族のシーナだった。
シーナはリラの次に俺の従者になった子で、リラとは付き合いが長いからか、今では親友の関係になってる。
「でもじーなぢゃんだっで……ぎゅうにわがれるなんでいやでじょう……!」
「まぁ確かに急な別れなんて悲しいですけど、マスターにはマスターなりに、私たちへ気遣ったんだと思うよ。ですよね、マスター。」
シーナは俺に何も気にしてない感じで聞いてきたけど、微かに怒りと悲しみが感じれたのが分かった。
やっぱり間違ってたんだな。
素直にアイリスの言葉に従って会っとけばよかったな。
でももう後の祭りだ、正直に話そう。
「さっきも言ったけど、お前たちと会った後に別れを告げるのは悪いんじゃないかって思ったからだけで、リラやみんなの事が嫌いになった訳じゃないからな。その気遣いで傷ついたようだったら、素直に謝るよ。」
上半身だけ起こして、みんなに向かって謝った。
悪いのは自分だ、みんなは悪くない。
勝手に決めて、勝手に行動したのは俺だ。
だから正直に謝ろう。
そして決めるのは、彼女たちに決めてもらおう。
零が頭を下げて謝ると、シーナは分かっていたかのように笑って口を開いた。
「ほら言ったでしょ? この人は絶対に私たちを裏切らないって。」
「そうですね。三年もそばにいてこの方は、拙者たちを裏切る事はしなかったんですから。」
「やっぱり、あなたの言う通りだったね、シーナ。」
他のみんなも一緒に笑いだして、さっきまでの空気とはまるで最初からなかったかような雰囲気になった。
それを見ていた零や真莉亜たちは、ただその光景をポカンとして見ていた。
その異様な光景を見て最初に口を開いたのは、零だった。
「お前ら、まさか最初から知ってたのか?」
「知ってませんよ。ただマスターなら、そうするだろうなって予想してたんです。」
「じゃあシーナ、さっきのはつまり……。」
「はい、少しだけ鎌をかけました。案の定、期待していた言葉を言ってくれたので安心しました。」
あぁ成程、すでに俺の行動は把握済みだったんだな。
そりゃあそっか、なんせこいつ等は、俺と三年も一緒にいたんだからな。
たとえ冒険の途中で離れてしまっても、信頼はずっと変わらない。
俺たちの絆は、一度も切れた事はなかったもんな。
「さて、そろそろ泣き止んだらどうなのよリラ。」
「ばなじまぜん……まだばなれだぐない……。」
「まったく……その涙だけは本物だから言えないけど、マスター以外にも人がいるんだから、早く自己紹介をしないといけないでしょ?」
「ヴぅぅぅ……」
あの…リラさん、そろそろ離れてくれませんか?
ぶっちゃけ言いますけど、俺の服があなたの涙と鼻水で濡れて気持ち悪くなってきてるんで着替えたいんですよ。
お願いだから気付いてくれない?
「リラ、メイドなんだったら今の状況を見なさい。マスターの服、アンタの涙と鼻水で酷い事になってるんだよ。」
「…ふぇ?」
リラは顔を上げて俺の顔を見て、そのまま自分の顔を埋めていた場所を見ていって、自分のせいで服が大惨事になってるのにようやく気付いたのか、我に返って俺から離れた。
「うわあああ!! ごごごご、ごめんなさいレイ様! お召し物がぐしょぐしょに!」
「あぁいや、別にいいよ、服は変えれば済む話だからな。それより、もう大丈夫か?」
「……は、はい。申し訳ございません、うちに隠してた感情が抑えきれずにこのような醜態をさらしてしまって。」
「ホントだよ。あっちがずっと待っててくれてるから良かったけど、マスターや他のみんなに迷惑をかけないでよ。」
「うっ……ごめんね、シーナちゃん。」
リラがシーナに謝ったのを見てから、俺はリラに声をかけた。
「さてリラ、もう泣き止んだんなら、俺たちの横にいる真莉亜に自己紹介しな。」
「はい、分かりました。」
リラはその場から立って真莉亜の方を見ると、いつもの調子に戻って挨拶をした。
「初めまして、私はレイ様の最初の従者であり、妖精族のリラと申します。先ほどはお見苦しい姿を見せてしまい、申し訳ありませんでした。」
「あぁうん、大丈夫よ。私は神崎真莉亜、知ってるかどうか分かんないけど、私は魔王…マリアベルよ。」
真莉亜が自分の正体を教えると、リラは一瞬驚いた表情をした。
それはリラだけじゃなく、シーナや他のみんなも同じだった。
「やはり、魔王だったのですね。」
「え…? もしかして、私を知ってるの?」
「いえ、ただ何処となくレイ様と同じ魔力を感じ取れたので、もしかしたらと思いました。」
さすが、リラの目と勘の良さは変わらないな。
リラは観察力がよく、スパイや内通者を探るのにはピカイチだ。
現に王都でも、内通者がいた時には誰よりもすぐに気付いて、そいつを捕らえる事ができたからな。
すると後ろにいた俺の従者の一人であるヨルムが、申し訳なさそうな顔で真莉亜に質問した。
「あの、確認ですけど、もしかして魔王……いえ、真莉亜さんは人間になっているのですか?」
「ええ、そうよ。でも一つ付け加えるなら、私は元人間だったのよ。」
「えええ!?」
ヨルムはさっき真莉亜が魔王だというのを明かした時の表情とは打って変わって、今度は本当に驚いた顔をしていた。
それはみんなも同じで、こればかりは全員気付いていなさそうだった。
「魔王が……元人間!?」
「主君、本当の事なのですか!?」
「あぁ、本当だ。その真実を、これから聞くんだからな。」
真莉亜が何で魔王になったのか? 過去のしがらみが何なのか?
それをようやく、知ることができるんだからな。
彼女の過去は、果たしてどんなのか?
もしかしなくても、俺の過去と同じ経緯があるのか。
どうであれ、本人の口から発せられるんだから、全部真実であるのは間違いない。
「それじゃあ話したいけど、流石にこの人数で家に入るのはキツイね。」
「それもそうだな。リラ、アストレア、少し準備を手伝え。」
「分かりました。」
「了解。」
俺の頼みでリラは俺や真莉亜が持ってるスキルである“収納庫”からティーカップや菓子を出して、アストレアは自分が持ってるスキル、“創造作成”を使って大きめのシートをいくつか作り出して、広い草原に広げてみんなが座れるようにした。
「それじゃあみんな座ったし、私の過去を話そうか。ただ先に言うけど、あまりいい話じゃないからね。」
「…あぁ、分かった。
俺の返事に頷くと、お茶を一口飲んでから話し始めた。
「それじゃあ、私のいままでの人生を話していくね。」
仕事をこなしながら小説を書いているけど、最近は小説に関与ができずにそのまま就寝が続いていた。
第一章が終わったら一旦今の状況を改善したほうがいいかもな…




