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9話 魔王の来訪

俺は昨日に続いて、今の状況が全く掴めずにいた。

だってティファニスさんが言ってた「彼女」の正体が、魔王だったからだ。

分かるか―――――!!

魔王なんて思えるか―――――!?

落ち着け! まだ慌てる時間じゃない!

そもそも違う可能性がある!

女神が人間になった魔王の世話をしろ何て、そんな事言う訳ないもんな。


「お前は、何でここに来たんだ? 何で人間でいるんだ?」


「あれ、聞いてなかった? 近いうちに「彼女」が来るからよろしくねって言われてないの?」


「―――――――マジかぁぁぁ……」


最後の最後におっそろしい案件が舞い込んできた。

相手が魔王なんですよ。

どうしろと?

異世界では天敵だったんですよ。

気まずいでしょうどう考えても。

昨日まで血を流しあうような戦いしてたんですよ。

話が嚙み合わないと思うんですけど。


「あの―――――できればそっちの家族に会わないといけないので、お邪魔してもいいですか?」


「あぁぁ……念のため聞くけど、戦う気はないんだね。」


「そうだよ。というより、あの時も戦う気はなかったんだもん。」


「え? それってどうゆう―――――」


「お兄ちゃ―――ん。遅いからお茶用意したけど、誰だった………だれ?」


後ろから華怜の声が聞こえて振り向くと、彼女を一目見た瞬間固まって、そのまま石像になってしまった。

まぁ、いきなり金髪美女が訪問してきたらそうなるだろうな。


「お…お兄ちゃん……その人……だれ?」


「え? あぁ…その……えっと…」


どうする? 素直に魔王って言うべきか?

いやダメだ。

ここで魔王って言っても誤魔化しきれないし、俺自身が異世界で勇者だったなんてバレてしまう。

それはできるだけ避けたい。

でも、この状況はどうするべきだ?

他に何かないか?

俺とコイツの接点で他にないのか?


俺が必死に考えていると、横にいた彼女が俺の横に来て華怜に話しかけた。


「初めまして。実はある用事でここに来たのですけど、この家の家主の方はいらっしゃるかしら?」


「え? あぁはい。母が二階にいらっしゃいます。」


「じゃあ申し訳ないけど、その人を呼んできてもらってもいいかしら?」


「わ、分かりました。」


華怜が母さんを呼びに行ったけど、この後はどうしたものか。

家に上がらせるか?

相手は魔王だった女だぞ?

いや、ティファニスさんが俺に頼んで来たって事は、何かしらの理由があるのかもしれんな。

警戒しつつも、彼女を中に入れるか。


「ここで立ち話もなんだし、とりあえず上がってくれ。」


「それじゃあお言葉に甘えて、お邪魔します。」


彼女……神崎を中に入れ込んでからリビングに行き、華怜が用意してくれていたお茶を彼女に渡してソファーに座らせた。

俺は神崎が何もしてこないように反対に座って、警戒しつつもお茶を飲んだ。


しかし、なぜ彼女が人間に転生してここに来た?

復讐かと思ったが、さっきから何もしてこなければ、殺気も全然ない。

むしろそれどころか、こっちの世界に馴染み過ぎてる(・・・・・・・)ようにも見えた。

普通なら地球は彼女に取って異世界でしかない。

でも何も聞かずに普通にお茶を飲んだし、慣れた感じでリビングにいる。

もしかして彼女は、この世界を知ってる?


「――――――…なあ。」


「ん? 何かしら?」


「何故ここに来たんだ? そして、お前は誰なんだ?」


「さっき言ったじゃない。私は神崎真莉亜って――――」


「そうじゃない。お前は魔王だ。悪魔の親玉が、何で地球に、しかも人間に転生してるんだ? それもあの女神も関わってるみたいだし、何が目的なんだ?」


自分でも頭が混乱してるし、正常を保とうにも保てなかった。

華怜がいなくなるまでは何もしていないが、ずっと聖剣を収納庫(アイテムボックス)の中から出せるようにはしていた。

それぐらい俺には余裕なんてなかった。


「そうね…。どこから話そうか迷うけど、まず最初に言えるのは、私自身は異世界で支配なんて全く()()()()()()()()()。」


「―――――は?」


神崎はお茶を飲んでいるけど、俺はそれどころじゃなかった。

今彼女の口からは、「支配なんて全く考えていなかった」と言った。

つまり最初から略奪とかに興味が無かったっていうのか?

でもそしたら、なんで幹部たちは襲ってたりしたんだ?

目の前の魔王が言ってるのが真実だとしたら、辻褄が全然合わない。


俺の判断で信じていいのか?

――――――ダメだ、信じる事が出来ない。

仮にそれが答えだとしても、魔王という概念が大きすぎて信じるに信じれない。

でも、嘘を言ってるようには見えない。

だとしたら本当なのかもしれない。

ここは慎重に事を進めていった方がいいな。


「お待たせしちゃったわね。あら可愛い女の子。私に何か用かしら?」


母さんが華怜と一緒に二階から下りてきて、神崎を見るなり、笑って歓迎していた。

そして神崎も、母さんがリビングに入ってきたのと同時にソファーから立って、母さんの近くに行った。


「初めまして、私は神崎真莉亜と言います。実はある人から手紙を渡すように言われまして、それを渡しに来ました。」


「私に? 何かしら?」


母さんは神崎から手紙を貰って中身を見た。

読んでいくうちに母さんの顔は笑った顔から真剣な顔になっていき、手紙を読み終えたのか、折りたたんで封筒の中に戻した。


「母さん、中身は何だったの?」


「……今日の仕事は休みにするわ。零くんに華怜ちゃん、母さん少し用事ができたから、夜まで家を留守にするわね。晩御飯は任せてもいいかしら?」


「あぁ…うん。それはいいけど、何だったの?」


「彼女の事で用事がね。帰ってきたら教えるよ。」


母さんはそう言って二階に上がって行って、わずか三分で着替え終えると、そのまま出かけに行った。


ていうか着替えるの早くね?

上がって三分で着替え終えれるの?

俺でも五分はかかるのに、それより早いとかどんな技使ってるの?

というよりこの状況、かなり気まずいんですけど。

華怜がいるから話ができないし、ここで夜まで待てなんてできないんですけど。


「えーと……ど、どうしようか?」


「そうねぇ……時間も10時半だし、二人で話したい事が山ほどあると思うし、せっかくだから二人でデートでも行きましょうか。」


「「えっ!?」」


突然デートって言ってきて驚く俺と、そんな事はありえないって感じで衝撃を受けていた妹がいた。

ていうかデートって!

人生で一度もない出来事なんですけど!?

しかも相手が元魔王だからか、内心かなり焦っている俺がいます。


「え、えーと……か、神崎サン……お、お兄ちゃんとデデデ…デートって、何かしら弱みでも握られているのですか!?」


「おい待て、その言い方は酷くね?」


何で兄が弱みを握ってるって前提で話すんだよ。

俺そんなに信じられねぇのか?

それとお前のその顔、何だまるで兄に彼女なんて出来ませんって顔は!

失礼だろお前のその顔!


「ふふっ、弱みなんて握られてないよ。強いて言うなら、まだ(・・)恋人同士じゃないから、デートとは言えないかもね。」


……ん? まだ?

まだって何だよ。

まるで俺たちが付き合う前提ですよって感じにしか見えないじゃないかよ!

逆に気になってしまうわ。


「あの……『まだ』ってことは、お兄ちゃんと付き合っているわけでもないのに、デートをするってことですか?」


「うん、そうなっちゃうね。」


「――――やっぱり何か弱みを握られているんですよね!?」


「だから何でお前はそんな発想にいくんだよォ?!」


ふざけんじゃねぇぞこの愚妹風情が!

実の兄に対して戯言を言ってんじゃねぇ!

そんなに俺が悪者に見えるのか!?

そのケンカ売ってやるぞ!


「お前ええ加減にせぇよ! どんだけ俺を犯罪者にさせてーんだよ!?」


「だって今日あったばっかの人が急にお兄ちゃんの事を好きになるなんてありえないもん! だとしたらそう考えるしかないじゃん!」


「だとしても小6の女の子が言っていい事じゃねぇだろ! 少しは言葉をキレイにしろよバカたれが! それにな、俺は父さんと約束を守って生きてんだぞ!?」


父さんは亡くなる前に、「これからの人生は、人に迷惑を掛けない真面目な生き方をしていけ。」と言い残していって、俺はその約束を守って今まで生きてきたんだ。

それを汚すとはいい度胸をしてるよな、我が妹よ。

その言葉は万死に値するぞ。


「アハハッ! あなたたち兄妹って本当に面白いわね。」


「いやいや、笑い事じゃないからな。俺からしたら妹は言ってはいけない事を言ったんだからな。」


「でもそれでも、そうやって言い合える相手がいるのは羨ましいわよ。」


羨ましい?

家族はいないのか?

転生したのなら、その肉体の親は……いや、もしかしたら人間になってきたから家族が存在しないのか?

でもそうなると、それは『転生』じゃなくて最早『来訪』。

生まれてきたんじゃなくて、人間の体を貰ってこっちに来たって方が正しく見えそう。


「それよりも、デートは決定事項だから、準備してきてくれないかしら?」


「あ……あぁ、うん、分かった。」


俺も話したい事はあるし、ここで話し合いはできない状態じゃあ、デートを受け入れるしかないようだな。

仕方ない、向こうの提案を受け入れるか。

服装自体は別に何時でも外に行けそうな恰好ではあったし、まだ五月だから少し風が冷えるくらいだから、パーカーさえ羽織ればどうにかなるな。

あとは貴重品を入れるようにいつものバッグを持っていけばいいな。

さて、もう準備はできてるようなものだったし、一階に下りますか。


そうして一階に下りると、何故か二人は意気揚々と笑いながらしゃべっていた。


え? 何があったの?

あんなに気まずそうだったのに、どうしてもう仲良くなってるの?

ハッ! もしや新手の術式を使って洗脳したのか!?

……いや、ないな。

敵意がないのにそんな事しそうにないしな。

まだ半信半疑だけど。


「お兄ちゃん! 絶対にこのチャンスを逃がしちゃだめだよ!」


「は? なんでだよ? お前さっきまで俺を犯罪者にしようとしたのにか?」


「それはなかった事にして水に流してください。私が悪ぅござんした。」


「いや手のひら返し早すぎるだろう。何があったし?」


いやホントに何があったし。

俺がいない一,二分の間にどうしてこうなったし。

逆に気持ち悪いわ。

こんだけ早い手のひら返しは初めて見たわ。


「さぁ準備もできた事だし、レッツゴー!」


「えっ…ちょまっ、て、手を引っ張って急に走るんじゃねぇぇぇぇぇ!!」


神崎に手を引っ張られながらのスタートに、俺は不安しか感じれなかった。


というより、力が明らかに強かった。

簡単に引っ張れてるんですけど。

絶対魔王の概念残ってるよな。

……俺、初めてのデートがこれでいいのか?

もう今日がうまく行けない気分しかないです。

そしてもう完全に向こうのペースに飲まれてしまってます。


大きすぎる不安を抱えながらも、俺と神崎は恋人(仮)のデートを始めた。

行き先は市街地。

このデートがどんな結末を迎えるのかは、今の俺には想像もできなかった。

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