表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/16

恋煩い(後)

 お見舞いに来てくれた皆が寝静まった頃、私は身動きがとれなくなっていた。

 何故なら私の動きを封じるように彼が覆い被さって居たからだ。

 私の上の彼はまるで布団のように軽く現実味がなく、一言も話さない。ただ私を優しくくすぐっているだけだ。


「や……」


 やめてほしいと口を開こうとしたが、今度はその口までもが彼に塞がれてしまった。

 口のなかには温かくて唾液に濡れた舌が絡んできて、気持ちいいと言うことさえできない。

 キス以外はただ体を擦られているだけなのに、次第に私はそれに快楽を覚えていた。

 身体中から汗が吹き出して目元も涙が貯まるほど。

 ちゅぱんと口を引き離してもなお撫でることを止めない彼の指先に私は酔いしれてしまう。

 このまま最後までしてほしい。

 他人には見せられないようなことをしてほしい。

 ピンク色に茹で上がった脳内は興奮のあまり焼き切れて、果てるように意識が断たれた。


「夢?」


 カーテンから溢れた朝の光に照らされて、私は一日ぶりに目を覚ました。

 昨日は何度かベッドを降りたとはいえよく覚えていない。

 余程熱を出していたのかパジャマもすっかりグショグショで、ベッドも湿ってしまうほどだ。

 どうやら彼にキスされたのは寝汗が運んだ夢のようだ。

 ベッドから飛び起きて寝ぼけ半分のまま服を脱ぎ散らかし、私は真っ裸でシャワールームに向かって歩く。


「おはよう。随分と早いんだね」

「な、なな?!」


 そんな私は急に声をかけてきた彼に驚いて跳び跳ねてしまった。

 寝ぼけていたので昨夜彼がお見舞いに来たことを忘れていたどころか、彼が泊まったことも忘却の彼方である。居ないと思っていた彼の声など予想外なのは当然だ。


「そ、そんな驚くことはないじゃないか」

「ごめんなさい。昨夜は意識が朦朧としてて、ヨハネさんが泊まっていたの忘れていましたので」

「それは失敬。でもその様子だともう熱も下がったようだね」

「はい」

「それは良かった。学校もあるだろうから、僕らは登校時間にあわせてお暇させてもらうよ。それまではもう少し居させてもらってもいいかな?」

「それくらいは構いませんよ」


 私は小さな声で「むしろずっと居てくれても」と続けた。


「それでは私はシャワーを浴びてきますね」

「うん。それがいい」


 その後、シャワールームに閉じ籠った私は朝から張り裂けそうになった胸に手を当てて少し休む。

 思いがけぬ朝チュンは瞼に浮かべる度にニヤニヤが止まらなくなり、随分と私もとんらんしているようだ。

 何故ならこの時の私はあることにも気づいていない。

 そう、彼と朝の会話をしたときの私は布一枚もない裸だったと言うことにも。

 私がそれを自覚したのはシャワーを浴びて体を拭いたとき。着替えがないどころか脱いだ衣服すらない状況でのこと。

 普段ならひとりなので気にしないこの状況と、耳まで赤くなる思いだし恥ずかしがりで身動きが取れなくなった私が救われたのは、アマネさんが目を覚まして歯磨きをしに来た三十分も後の事だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ