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雑炊

 戻ってきたヨハネから食材を受けとると、わたしは早速調理を開始した。

 先程のパンのお粥を暖めてから器に開けて小鍋を空にし、もう一度水を入れて湯を沸かす。沸騰したら挽肉を茹でて灰汁をすくい、筒切りにしたネギとごはんを入れて一煮立ち。

 固形のスープと醤油で味を整えた後は火を止めて、流し入れた溶き卵が余熱で固まるように軽くかき混ぜた。


「ばっちり」


 味見をしたのは最後の一匙だけだったが、想定通りの味で雑炊は完成した。

 ネギや醤油を使ったからかパンのお粥よりも匂いが強く、どうやらマリーちゃんも目を覚ましたようだ。

 わたしは深皿に雑炊を取り分けると、寝ぼけ眼な彼女に差し出す。


「起きたようね。食欲はある?」


 マリーちゃんは無言のまま皿を受けとると、虚ろな瞳でスプーンを持ち上げた。そのまま一匙口に含めた彼女はゆっくりとそれを咀嚼する。


「ごくり」

「お口に合うかな」

「うーん……」


 自分では上手くいったと思いつつも念のためわたしは確かめた。だが彼女のリアクションはどうもいまいちで、あまり美味しくなかったのだろうか。

 それでもマリーちゃんは必要だからと妥協しているかのようにスプーンを止めず食べ続けている。口に出さないだけでやっぱり大丈夫なのか?

 結局彼女は雑炊をペロリと平らげて、最後にはスポーツドリンクを一気に煽った。考えてみればまともに食事を取っていない様子の彼女の事だし、味はともかくおなかが空いていたのだろう。


「ごちそうさま」

「待って待って! 食べた終わったら軽く歯も磨いておかないと。桶と歯ブラシをとってきてあげるから」

「こくん」


 食後も黙りこくっていたマリーちゃんはそのまま寝ようとしていたので、わたしは歯磨きを促した。

 いくらなんでも風邪で億劫だからと歯磨きを怠り、それで虫歯になったら損だろう。

 洗面所から歯ブラシや桶、それに水を酌んだコップを運んでくると、彼女は言われるがまま歯を磨き始めた。黙っているよりも返事をしてほしいとはいえ素直な彼女はどこかしおらしい。


「ぺっ!」


 口を濯いだ水を桶に開けたところでようやく一段落だ。

 横になったマリーちゃんに布団をかけると、わたしはその横で彼女にこう伝えた。


「元気がないようだしそのまま聞いてね。もうだいぶ遅くなってしまったし、今日はこの部屋に泊めさせてもらうけれどいいかな?」


 マリーちゃんは小さく頷く。


「ありがとう。それじゃあ、お休みね。あとそうそう……ヨハネも一緒だけど、変なことはさせないから心配しないでね。わたしとヨハネは向こうで寝るから」


 聞き方によっては「アナタが寝込んでいる部屋の隣でわたしたちはイヤらしいことをします」と聞こえそうな言い方になってしまったが、まさか勘違いはしないだろう。

 そう過信したまま寝室の明かりを消したあと、わたしたちは隣の部屋でパンのお粥を夕飯に食べた。

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