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リボリータ

 使い込まれていない小鍋を綺麗に洗い、金気を飛ばしたそれに水を張って湯を沸かす。

 手元に用意したのは売れ残りのパンと粉末スープの素。出来ればトマトや玉ねぎがあると嬉しいのだが今日のところは仕方がない。


「マリーは寝たようだね」

「そうね。まったく強情なんだから」

「ところでそれは何を作っているんだい?」

「パンのお粥よ」


 湯が沸いたところでコンロの火を弱めると、わたしは粉末スープと千切ったパンをそこに投げ入れた。

 追加の具は残念ながら無いので後はパンを煮立ててスープに馴染ませるだけ。手抜きなので出来上がりも早い。

 うろ覚えのレシピではあるが、味見をする限りでは大丈夫そうだ。一口噛み締めれば染み込んだスープがじゅわっと溢れ出す食べるスープの完成である。


「出来たのは良いけれどぐっすり寝ているわね」

「このまま寝かせておこうか?」

「そうね。ついでに今日は泊めさせてもらいましょうか。幸い寝る場所には困らなさそうだし、なにより勝手に出ていったら鍵もかけられないから無用心だし」


 部屋を見回すとリビングには手触りのいい絨毯が敷いてあるし予備の毛布もあるようだ。

 わたしの提案にヨハネも頷いて、わたしたちはマリーちゃんが起きるのを待つこととした。

 考えてみれば他人の家なので失礼だが、そこが妙に心をくすぐってくる。新鮮な気持ちがなにかいいアイデアを生みそうな予感を運んできて、喉からでかかったそれがもどかしい。

 わたしたちはお粥の余分をつまみつつ、本来ならホームに戻ってからやる予定だったミーティングを開始した。

 今日の売上金を集計したり、お客の傾向を分析したりしている間に鍋のお粥は冷めていく。

 わたしが時間を忘れて没頭していたのもあるし、マリーちゃんがぐっすりと寝ていたため静けさが邪魔をしなかったのもある。

 すべてが片付いたところで時計に目をやると、時刻は八時を回っていた。


「もうこんな時間。流石にお粥は冷めちゃったわね」

「マリーのぶんは新しく作り直して、こっちは僕らで食べてしまおうか」

「それでも良いけれど、すぐに起きると思って有り合わせで作ったのよね、このお粥。どうせ作り直すのならちゃんと材料を用意して作ってあげたいわ。ヨハネ、ちょっと材料を買ってきてよ」

「それは構わないけれど、アマネはどうする?」

「わたしはお留守番をしているわ。この様子じゃマリーちゃんもしばらく起きそうにないし」

「わかった。念のため僕が出掛けたら鍵はすぐかけてくれ」

「りょーかい」


 ヨハネに欲しい食材を伝え、出発する彼を見送ったわたしはドアに鍵をかけた。

 卵、ご飯、鳥挽肉、椎茸、ネギ、醤油。

 滋養たっぷりの鳥雑炊が早くも頭の中で出来上がった。

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