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シンデレラ⑧

 

 あの後、家にたどり着いた頃にはどっぷりと日が暮れており、笑顔で待ち構えていたお義母様にこっ(ぴど)く怒られたのは言うまでもない。

 そして私はあの日から「何時(なんじ)何処(どこ)へ行って何時(なんじ)に帰ってくるのか、きちんと報告しなければ外出は禁止します」と小学生(しょうがくせい)顔負(かおま)けの厳しい規則(ルール)が出来てしまった。


 お義母様に子供ができたら間違いなく溺愛(できあい)しそう…



「シンデレラー! 私シュネーヴァイスとラプンツェルのドレス、そしてゼーユングファーの宝石屋に連絡しといてー‼」

「私はヴォルフのドレスとブンダーラントの宝石屋ね!

 まさか舞踏会が二晩もあるなんて、王子様も気合が入ってるわよね~ あ、新しい靴も買わなきゃ!」

「私も私も~‼」



 話は変わるが、今我が家は()れに()れている。

 理由は先日、この国の王から街の女性に向けて【王子の妻となる存在を見つけるため舞踏会を開会する。参加する者の身分は問わない。舞踏会は二晩続けて行う。参加希望の者は十日後の満月の夜、城へ集まるように】とザックリとした立て札が張り出されたのであった。


 その知らせが張り出されから我が家、いや我が家だけじゃない。街中がお祭り騒ぎだ。

 まさかの貴族だけではなく、庶民の女性も王子様の伴侶(はんりょ)になれるとは…夢見ることはあっただろうが、まさかその夢が現実になるだなんて誰も思わなかっただろう。


 そんな中、私はその知らせを聞いてホッと胸を撫で下ろした。



 “やっと物語が進んだ”



 転生してからなんだかんだで半年近く経過したが、一向に進む気配がない物語に内心ずっと冷や冷やしていたのだ。



 ――コンコン―



「お義母様、失礼いたします」



 お義姉様達の要望を書き(つづ)ったメモを持ち、向かったのは義母であるリヒトお義母様の部屋。

 部屋に入るとOFFモードなのか、かつらを外し、眼鏡をかけたお義母様が本を読んでいた。



「お義姉様が舞踏会で使用するドレス等の一覧をお持ちしました」

「ありがとう、どれどれ…」



 長々と綴られたメモを渡す。

 それを見たお義母様は眉間(みけん)にしわを()せた。



(あき)れた、あの娘達(こたち)どんだけ買うつもりなのよ」

「ははは…ま、まぁ、一世一代(いっせいいちだい)の日ですからね…」

「正直、あんな見た目しか見繕(みつくろ)わない娘達(こたち)が王子の目に(かな)うとも思わないけどね………あら?」



 実の妹なのになんて辛辣(しんらつ)な…



「シンデレラ?」

「はい?」

「貴方はドレスを買わないの?」

「え? あー…っと…」



 確かに渡したメモの中には私のドレス等はない。

「シンデレラがドレスを注文するなんて、なんて烏滸(おこ)がましい!」と怒られると思っていたので全く考えていなかった…

 それに例え美しいドレスを着た所で顔面がThe和顔の私ではドレスに負けてしまう。



「私みたいな平凡(へいぼん)な娘が行ったところで追い返されますよ」

「あら、そんなこと無いんじゃない? あの娘達(こたち)より貴方の方が可愛い…」



 か、可愛い…⁉

 普段言われることの無い、その言葉に思わず反応してしまう。



「あ、か、可愛いって言うのはその、動物を愛でる時と同意義(どういぎ)よ!

 い、一番可愛いくて美しいのは私なんですからね! 調子に乗らないのよ!」

「も、もちろん分かってますよ!」



 分かってるけど…そんなこと言われたらやっぱり照れてしまう。そして言葉を放った張本人(ちょうほんにん)も「まだ夏本番じゃないのに、今年は暑いわね~」と赤くした顔を扇子(せんす)(あお)いでいた。



「と、ということで本日はこれから仕立て屋等に予約の連絡しに行って参ります!

 帰宅は…日が暮れる前には帰れるかと…

 他のお嬢様方の予約もありますし、仕立て屋はいま大盛況(だいせいきょう)でしょうから、明確(めいかく)な時間はお伝えできませんが…」

「分かったわ、でもあまりにも遅くなるようなら宝石屋はゲシュヴィスターに行きなさい」

「ゲシュヴィスター…ですか? 初めて聞くお店ですね…良いのですか、いつものお店でなくて?」

「いいわ、ここのお店はそこら辺の宝石屋と比べても軍を抜いて素晴らしいの

 色んなお店を回るより一つに(しぼ)ったほうが時間もかからず効率的(こうりつてき)でしょう?

 もしあの娘達(こたち)文句(もんく)の一つでも言うようであれば私から説明しておきます」

「確かにそうですね…ありがとうございます、お義母様!」



 なんて頼もしいお義母様なんだ!

 やっぱり私は舞踏会に行かなくても、現状の生活で充分(じゅうぶん)幸せです。



「あ、シンデレラ」

「なんですか?」

「くれぐれも、この前の様に遅くならないようにね」

「ふふ、分かってますって!」



 心配症(しんぱいしょう)だなぁ、お義母様。

 それにこの前のお義母様が怖すぎて、流石に同じ思いはもうしたくない…

 たとえ黒猫を見つけたとしても絶対に追いかけない、絶対にだ!



 そして私は修正されたメモを持ち、街へ向かうことにした。


今回“あえて”お店の名前にルビを振りませんでした!

今後の軽い伏線です(*_ _)

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