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シンデレラ④

 

「シンデレラ、きちんと前を向きなさい。

 胸をそらし、(ひざ)は曲げず、つま先から歩くのよ」

「お、お義母様…」

「なんですか、はしたない声を出さないでください。淑女(しゅくじょ)はお(しと)やかにしなさいと何度も言っているでしょう」

「本を頭に乗せる必要はあるのでしょか!」



 本を頭の上に乗せて歩くの行為は漫画の世界(二次元)だけの話だと思ったけど…まさか現実でやる日が来るなんて!

 あれ? でもここは童話の世界(二次元)だから問題ないのかな?

 でも私はこの世界を生きていて、それは現実だから現実世界…?


 ああ、だめだ! 頭が混乱(こんらん)してきた!



「っと、わあ!」

「シンデレラ!」



 悶々(もんもん)と余計なことを考えていた私は、思わずバランスを(くず)してしまった。

 ぎゅっと目を(つむ)り、落ちてくる本の衝撃(しょうげき)を待ち構える。



「……あ、れ? 痛くない?」

「……いったぁ」

「え…?」


 私の目の前には本を被ったお義母様。

 そして私はというと、お義母様の胸の中にすっぽりと埋まっていた。



「こんの、馬鹿! 本を頭に乗せている時は危ないから集中しなさいといつも言っているでしょう!」

「ご、ごめんなさい」

「顔は切っていない? 怪我でもしたらお義父様に顔が立たないわ!」

「だ、大丈夫です!」

「なら良かった…」



 びっくりした。

 それは落ちてきた本に対してだけではない。普段の言動は私以上に女性らしく美しいお義母様だが、抱きしめられた時に感じた感触は女性らしさとは程遠く、予想以上に厚く硬い胸板(むないた)と筋肉質な体だった。



(お義母様って、やっぱり男の人なんだなぁ…)



 転生前、男性と親しくする機会はあったがこんな直接的(ダイレクト)に男性を感じたことは一度もなかった。

 少し顔を上げるとそこには心配そうな表情でこちらを見つめるお義母様。


 あ、改めて現状を考えたら恥ずかしくなってきた…

 間違いなく、今の私は顔が赤いだろう。



「あ、あの…お義母様…」

「え……? し、しししシンデレラ! なんでそこにいるのよ!」



 そして(あわ)てるお義母様に放り出されるように突き放される。

 正直バランス崩したときよりも今の方が痛いです、お義母様…



「も、申し訳ございません…! お義母様も大丈夫ですか? ケガはありませんか?」

「けけけ、ケガなんてな、ないわよ!

 そ、それよりも! 集中できていないようですし、今日のレッスンは終了です! はい、終了‼」

「え、でも…」

「い、いいから! 終了ったら終了なのよ!」

「え、ちょっ!」



 グイグイと両手で私を部屋から追い出すお義母様。

 なんだかんだいって男性。()()(とど)まろうとしたが、私の抵抗(ていこう)(むな)しく、(なか)ば強引に部屋から追い出されてしまった。







「暇になってしまった…」



 ここ最近、午後はお義母様の淑女レッスンの時間だった為、必要な家事や買い物などは午前のうちに終わらせることが多かった。

 その為、特段(とくだん)やることもない私は午後の時間をどのように(つぶ)すか庭で考えていた。



「あ、そうだ!」



 シンデレラ家の敷地(しきち)は広い。

 立派な屋敷の他にとてもとても広い庭があり、その庭は森へ山へと(つな)がっていた。

 こっちに来てから家事に追われて探索(たんさく)という探索も出来ていなかったし、これを機に庭の探索でもしてみようかな!



「せっかくだし、朝作ったクッキーも持っていこう!」



 鼻歌(まじ)じりで準備をし、向かう先は普段行くことの少ない裏庭!

 秘密基地にできそうな、とっておきの場所をみつけられたらいいなぁ~!

 くぅ~! ワクワクしてきた!!



「にゃー」

「ん?」



 聞き覚えのある猫の鳴き声。鳴き声の方向へ振り向くとそこには私が救った“例のあの猫”がいた。



「あ、黒猫‼」



 私が叫ぶと黒猫は“森へ続く道へ”逃げてしまった。

 ど、どうしよう…。追いかけたいけど、さすがに森となると迷って帰って来れなくなる可能性があるし…

 そんな躊躇(ためら)っている私に向かって



「おいでシンデレラ、この世界の秘密が知りたいだろう?」



 と、いつも見せる()()()()()()()()()()三日月の様な笑みで話しかけた。



 (ああ、もう! なるようになれだ!)



 そして私は黒猫を追いかけようにして、森の中へ足を踏み出した。





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