地蔵
拝啓 愛する家族へ
私が今から話すハナシは本当のことです。信じてもらえないと思いますが聞いてください。
先生にも話したのですが脳に問題があると片付けられてしまいました。
まぁ急にこんな話しても信じてもらえないですよね。でも家族にはわかってほしいのです。
あれは大学の友人の実家がある九州の田舎に泊まりに行ったときです。
友達の車で高速にのって行くことになりました。
「なぁ、伸二。お前の故郷ってどんな感じなんだ?」
「うーん。なんか開発進んでない感じかな。お前の家の方とは天と地の差だよ。ただ、自然がそのままって感じで都会で暮らしてるとたまに帰りたくなるよ。」
「なるほどなー。で、なんで俺連れていきたいんだ?」
「さっきもいったけどお前都会育ちだろ?自然見せてやりたくてさ。後お袋に会わせておきたいんだー、あっちでしっかり友達出来たって」
「あ、お前のお母さん会ってみたかったんだよ。楽しみになってきたよ」
「そりゃよかった。じゃ、少し時間かかるから寝てて良いぜ?」「言葉に甘えさせてもらうよ。」こうして僕は眠りにつくのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「起きろー。ついたよ?」
「ん。ついたかぁ…。よく寝た」
大欠伸をして背中を伸ばす。
「熟睡だったなwよく人の車でそんな寝れるよなw」
「寝て良いって言ったのお前だぜ?」
五時間位たっただろうか。すっかり太陽が上っていた。
友人の実家についた。大きな日本風の家だった。
回りには大きな木がたくさん並んでいた。友人の親は不在のようだ。
「家でかいなー」
「ま、田舎だからみんなこんなもんだろw」
「そんなもんなのか。俺生まれも育ちもアパートだからなー。」
「俺はそっちの方が羨ましいけどな、近くにお店いっぱいあるしさ、遊べるとこもあるだろ?こっちなんか田んぼしかねーよw」
本当にそんな感じである。
「そう聞くと都会でよかったのかな?w」
「きっとそうだね」
「きっとそうかw」
「あ、そうだ。少しゆっくりしたら散歩いこうぜ?案内するよ」
僕も行きたかったとこである。寝てたとはいえ長い間車のなかにいたのだ、すこしくらい動いた方がいい。
「わかった。」
「俺もちょっと見て回りたいんだ。久しぶりだしな、後わかってると思うけど勝手に冷蔵庫開けんなよwお母さん怒るからそれと一人で外出歩くなよwここら辺は道がしっかりしてないから迷子になるし」
「んなこと言われなくてもwそんなことしないよw」
「まぁ一応だよ。一応」
伸二は念を推すように言っていた。車の音がした。
伸二の親が帰ってきたのだろう
「伸二帰ったのねー。」
「お袋、帰ったぜ。友達連れてきてるよ。」
「知ってますよ。いつも伸二がお世話になってます。仲良くしてもらってるみたいでー」
「お邪魔してます。そんなことないですよw俺の方がいっつも遊び誘ってもらっちゃって」
「お袋やめろよw恥ずかしいからw」
「伸二、お前のお母さん良い人だな」
僕は肘で伸二のことをつつきながら小声で言った。
伸二のお母さんは笑いながらゆっくりしてってねといって台所にいったのだった。
少しして僕らは散歩にでた。
そこの村は田んぼか木か畑、限界集落なのかほとんど人はいなくて、いても腰の曲がったおじいちゃんおばぁちゃんだった。
「確かにのどかだし自然があるけど楽しくはないなw」
「だろ?ここで青春過ごしたんだぜ?カラオケ通いたかったよ」
「だからあんな音痴なのかよw」
「やめろよw怒るぞ?」
こんな会話をしながら伸二の家の裏山へ向かった。
「ここさ、よく学校の友達と集まって秘密基地作ってたんだー」
「そうなんだ。」
「あ、あのほこら残ってるのかな」
「ほこら?」
「ああ。なんか首がないお地蔵さんでさ、不気味だから誰も近寄んなかったんだよw親に聞いても知らないって言うんだよな。」
「なんだよそれw怖いじゃん」
「それがさどうもイワクツキらしくてよ、秘密基地で遊んでたときにさ。家の向かいに住んでるおじさんが来て俺らにいったんだよwあのほこらは触るなって」
「触ったら?」
「そのおじさん触ったらしいんだけど首つって自殺したってさ。ま、元々病んでたらしいからさ。触った触ってない関係ないらしいけどさw子供そういうの気にして信じるじゃん?そっからちょっとずつみんな秘密基地にいかなくなったんだよw」
「こっわ…」
「行ってみない?wそのほこら」
伸二はこういい始めると止まらない。
「え?やだよ怖いじゃん」
「子供かよw行くだけだよw」
「うん…」
僕はついていくことにした。
「いやー、やっぱりあのおじいさんがここ管理してたんだなー、荒れ放題だわ」
「で、ほこらはどこだよ」
「多分ここら辺だと思うんだけどなー」
「しっかりしろよ…」
「あ、あったあった。あれだよ」
「あー。あれか…見るからにボロボロだな」
「じゃ、首なし地蔵拝んで帰ろうぜ?w」
「んー」
どうやら首があるようだ。
「あれ?首あるな。なかったはずなんだよなー。代わりに手がないや」
「記憶しっかりしろよw」
「いや。絶対首無かったからwえ?直したのかな」
「とりあえず拝んで帰ろうぜ?こわいし」
「そうだな。」
僕たちは拝んでそのほこらを後にした。
でもそれから僕はそのお地蔵が頭から離れなかったのだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
夜は伸二のお母さんが作ってくれた山菜の天ぷらだった。。
「うっま…それに懐かしい感じ…」
「だろ?w家のお袋料理上手なんだぜ?」
「いや、羨ましい…」
「そんなに美味しい美味しい行ってくれるなんてうれしいね。もっと食べてね。伸二も、もうちょっとみらなって美味しいって言いなさいよ。」
「オイシイデス」
伸二がロボットのような声でいう。
「ほんとにうちのこは…」
ゲラゲラ笑いながらご飯は終わった。
「そういえば親父は?」
「あー、そういえば見てないね。挨拶したいです。」
「あ、今日は町内会の集まりで遅くなるそうよ。そんなにかしこまるような人じゃないから大丈夫w安心してくださいね。」
「親父いっつも酔っぱらってる感じだよwだるいけど許してなw」
「俺のお父さん厳しいからいいなー、そういうの」
「さっきからw羨ましいばっかだなお前w」
「だっていいじゃんか。」
その日伸二のお父さんは帰って来ないと連絡があったので帰りはまたず12時には寝た。
布団につき、目を閉じた。頭の中に鮮明にお地蔵が残っていた。睡眠に落ちていく薄れいく意識の中で「羨ましい」
そう聞こえた気がした。
朝起きて僕は横で寝る伸二を起こさないように独りでに裏山へと向かっていた。
何か呼ばれている気がしたのだ。
お地蔵の欠けた手を触ったところで気がつく。
背中に違和感を感じ、またここまでほとんど意識もなく来たことに気づくと僕は急いで山をかけおり再び何事もなかったかのように布団に潜り目を閉じた。そしてすぐに寝てしまった。
「おーい、起きろー。」
伸二が耳元で怒鳴っている。
「もうちょっと優しくおこせない?」
「優しくして起きるか?w」
「確かにwおかげさまで起きれました。」
少しして山に行った記憶を思い出したがあまりに非現実的なので夢だと解釈した。
「あ、親父」
伸二のお父さんが笑いながら部屋に入ってきた。
「おーうw伸二久しぶりだなw横のあんちゃんはお前の彼氏かい?w」
「親父また酔ってんな?w俺はゲイじゃねーっつの。大学の友達!」
「これは失敬w始めまして伸二の父親です。いつも伸二が迷惑かけてるだろう?w仲良くしてやってな」
「お袋と同じこと言うなよ…」
「ハハハwふーふは似るんだよw」
「こちらこそ仲良くさせてもらってます」
「ゆっくりしてってなw」
「それもお袋と一緒だよ親父…」
「愉快な家族だねw」
「だろ?w」
「羨ましい」羨ましい」
頭の中で声が鈍った気がした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
その日も僕らは散歩にでることになった。
「いやー、こっちになれると都会かえれなくなりそうw」
「そんなこと言ってー、都会育ちのお前には刺激足りないからすぐ帰りたいって言うと思うぜw」
「どうだろうなw」
「じゃ、行こうかw」
「うんw」
靴を履いた僕はすぐに足にある違和感を感じた。
口が泥だらけなのだ。
「あ、泥だらけじゃん。さては親父のやつ寝ぼけて履いて歩いたな。悪いな。洗えば落ちるかな」
「そんな気にしないで大丈夫だよw古いしこれw」
僕はここでやっとさっきのが夢じゃないと気づく。
「…伸二やっぱり帰らないか…」
僕は怖くなり伸二に帰りたいと告げる
「え?あ、まぁいいけど…なんでさ」
「…後でいう。とりあえず早く…」
「お、おう。しゃーないな」
そうして僕たちは帰路につくことになった。
伸二の両親は驚いていたが笑顔で見送ってくれた。
車の中で僕は伸二にすべてを言うことにした。
「なぁ伸二…」
「どうした?」
「俺朝な…、山一人で行ったみたいだわ…」
「は?」
「夢だと思ってたんだけど…」
「一人で歩くなって言ったよな?迷子になったらどうするんだよ。無事帰ってこれてるからまだいいけど。」
「違うそこじゃない…お地蔵に触ったんだ…俺。呼ばれてる気がして」
「…ん?」
伸二は不思議な顔をする。
「なんだよ。その顔…」
「いや、お地蔵ってなんのこと?」
「は?ほら裏山のほこらの腕のないお地蔵」
「それ夢だろwこっわ」
「は??知らないふりすんなよ」
「知らないってw急にどうしたよwお前おかしいぞ?」
「おかしいのはお前だろうが!お前が俺に教えたんだろう?」
怖がらせようとしているのか。その態度についカッとなってしまう。
「そんなの知らねーよ。おい。やめろよ」
僕は気がつくと伸二の腕を引っ張っていた。
「やめろよ。運転中だろよ、事故るぞ、おい。」
「知らないふりすんなよ。おい。あっ…」
ガッシャーン。。車は中央分離帯に当たり横転し反対側へ転がる。
僕たちは事故にあった。勢いよくガードレールにぶつかり僕は片手がつぶれなくなってしまった。
伸二は無事だったが少し頭を打ったのか事故の前のことは思い出せないみたいだった。
当然地蔵のことも…
病院でいくらその話をしても伸二は知らないと言うし伸二の両親も知らないと言うのだ。
また、僕のことも忘れてしまったのか行くと不思議そうな顔をするのだ。伸二の親も驚いた顔をする。そして駆けつけた看護師と話をするとよそよそ話しかけてきた。
「ごめんね。伸二は忘れてしまったようなのよ。今日はお部屋にかえってください」
なんか変な感じがするが部屋に帰る。
そんなときふと思い出す。そういえばお地蔵の腕もなかったな…と
僕はあのお地蔵に腕をとられたんだと理解した。
耳元で聞こえた羨ましいと言うのはそういうことか…伸二の向かいの家のおじいさんは頭がない地蔵を触ったから首をつって自殺したのか。
腕で良かった。腕で…
ここまで書いた話は本当です。僕は病院を退院したらもう一度お地蔵を見に行きたいと思っています。帰ったら暖かく迎えてください。
そう締め括り家族宛の手紙を書き上げた。
僕は手紙を家族に渡してほしいと先生に託し病院を退院した。
先生が何か言いたげだったのが気になるが薬を数か月分もらった。痛み止めにしては多い気がするがもらっておく。
そのあとあのお地蔵をタクシーを使い見に行くことにした。
夜遅くなってしまった、ホテルで一泊し次の日の朝向かいことにした。
次の朝
確かにそこにはお地蔵があった。
そのお地蔵は手があったのだ
俺の手だと思い頭にきた。だからお地蔵の頭をとってやった。お返しとばかりに…
それから僕はえらくこの町が気に入ってしまい、そこで2年半暮らすことになる。
伸二の実家の向かいに住むことになった。だが伸二たちには会う気にならなかった。あちらも話しかけて来ないことだし…
そんな中お母さんが実家に戻ると言うので僕も実家に戻ろうと思い引っ越すことにした。
その前にもう一度お地蔵に会いに行くことにする。
お地蔵の頭がないことを確認し、帰ろうとすると近くの秘密基地で遊んでいる子供たちがいた。
間違って触ってしまっては大変だと思い僕は子供たち話しかける。子供なんかいたっけ…まぁ。いい、出ていくんだ気にすることじゃない。
「あのほこらにはさわるなよ」
そういって家に返ると何か心が抜けた気持ちになった。
実家に戻る気にならず気がつくと5日ほどたっている。
不意に母の呼ぶ声が聞こえた向かえに来てくれたんだろう。いかなきゃ。。。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
愛する家族へ
先立つ不幸をお許しください。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「警部、これは自殺ですね。」
「ああ、そうだな。この文を読むとそうだろうな。」
「鏡下 志雄って名前で間違いないな。」
「この人2年半ぐらい前に高速で単独事故起こして精神がおかしくなってしまって入院してたみたいですね。」
「というと?」
「お地蔵が手をとったとか。伸二は忘れたとか繰り返していたようですよ。」
「彼に伸二という友人は?」
「いないようです。」
「あれ、伸二ってこの家の近くに住んでる男の子でいなかったっけか?」
「そうですね。向かいの家に住んでる男の子ですね。鏡下が自殺する前に話した最後の子ですよ。ほこらにさわるなとか言ってたようですよ。」
「なるほど、かなりおかしくなってたんだな。」
「そうみたいですね。」
「家族は?」
「今はお父さんたった一人みたいですね。お母さんはつい最近亡くなったようですよ。ガンだったとかで。最後は家で亡くなったんだとか。まとめてある荷物をみるに帰省するつもりだったんでしょうね。」
「なるほど。皮肉にもお母さんがあの世で待ってるんだな。まぁ、この自殺に事件性はみられないな。」
「そうですね」
8年後
「伸二、今からお前の実家行くんだろ?」
友達は笑顔で答える。
「ああ。そうだよ。鏡下。」
初めて書きました。一回読んだ後もう一度読み直してほしいです。






