燃えない石
「これじゃ、燃えないね」と、Naomiは思います。
おばあちゃんが戻ってきました。
ぽんぽんぽん、と軽快に
煙を吐いて回るエンジンの軽自動車に乗って。
「あーにしてっかな。ああ、燃してんの。ゴミ?」
都会だとゴミなんて燃す事がないけどと
リサも思います。でも
そんな事を言うのは、おばあちゃんに失礼なので
言いません。リサも優しいキモチの子。
「機関車の石炭をね、燃してみたの」
おばあちゃんは何か思い出したように
「んだなー、ずっと燃してたんでねの。ストーブで」
ああそうか、とNaomiも思います。
スキーで山小屋に泊まった時も、そういえば
朝になっても囲炉裏は燃えたままで
灰を被して寝たんだっけ。春は。
「じゃ、ずっと燃えたままにしてたのかな」と、リサ。
国鉄の機関車はそうみたいだけど。
「まあ、今日は蒸気上げるのは無理ね」とNaomiは諦める。
計画的に考えるのが、良い整備士である。
れーみぃと、めぐが戻って来て
「あ、焚火だー。なんか焼こうよ、おいもとか」と、れーみぃ。
「それ以上太ってどうする」と、リサ。
「あ、ひっどー。傷つくな、えーん」と、れーみぃは楽しそう。
「ふんわりしてて可愛いよ」と、めぐ。
「ものは言いようだ」とNaomiは的確。
そう、同じ事を言っても
聞いた人が喜ぶような事を言うのも
お人柄。
「接客の心得でもあるね」と、リサは
国鉄職員が代々続いて来た家柄の娘らしい言葉。
接客、と言っても
御座なりではなくて
心使いをするのは
職員、と言うよりは人柄。
忙しいと言っても、尖った対応をしても
しなくても時間はあまり変わらない。
刺々しい態度で車掌が接すれば、乗客だって苛立つ。
それが、思わぬ事故を呼ぶ事もある。
発車時刻を過ぎたから、ドアを閉じる。
そんな時、言葉の掛けかたで
ドア挟み事故が起きたり、起きなかったり。
声の感じ、なのだ。
命令っぽく聞こえる言い方をすると、過敏な人は逆らいたくなるので
優しい口調で言うのが、国鉄流。
ドアスイッチを自分が持っているから従え、ではないのだと
リサのおじさん、車掌さんは
国鉄で
そんな風に教わったそうだ。
その事を、リサに話したりするのは
鉄道の仕事を好きだから。
そういう人が、国鉄を支えていた。




