水入れ
「あ、国鉄さーんっ」と、れーみぃは
「国鉄」と書かれたトラックを見つける。
「おーい」と、あの、丸顔の工務部の青年。
「雨あがったからさ、いろいろ持ってきたよ」
工具類とか、オイル差しのような細かいもの。
「これは電気機関車には要らないからね」
「ありがとうございます、本当に」と、リサは礼を言う。
その中に、給水ホースもあった。
「あ、これ!」と、めぐ。
工務部の青年は「それが珍しいの?」と、不思議そうに見るので
Naomiは「あ、ホースが無かったの」
青年は「そうだろうと思ってね。これも電気機関車の時代には
要らないものだし」
れーみぃは「国鉄で蒸気機関車が無くなってから、どのくらいですか?」
青年は「さぁ、僕が入った時はもうディーゼルだった。から、7年くらいじゃないかなあ」
リサは「それでもここの工場は蒸気だったんですね」
青年は「そうそう。このあたりのね、点検とかで来ると。
煙の匂いが懐かしかった。僕も、子供の頃は蒸気機関車を
見て憧れたんだから。」
国鉄の本線を、黒い煙を吐いて走る蒸気機関車。
なんとなく、有機的で愛着を感じたりする。
工務部の青年は「発電所だって結局蒸気なのにね」と、笑顔
そこは機械部である。
原子力発電だって、蒸気タービンで発電しているから
蒸気機関車だって、めぐの想像みたいにタービン発電車にすれば
熱効率は50%くらいになるはずなのだ。熱を利用すれば。
熱差発電や、熱電発電。
レイケ管熱音響。
色々な方法を使えば、熱効率はもっと上がる。
発電所で電気を作って送る、なんて非効率な事をしなくてもいいのだ。
「水、入れてみようよ」と、めぐ。
「あ、じゃあ」と、工務部の青年は不思議な箱のようなモノを
持ってきた。
給水ホースがつながる。
「なに、これ?」と、リサも知らない。
青年は「ああ、これね、電気がないところで
水を送る。まあ、サイホンと言うかポンプと言うか。」
「そんなものがあるの」と、Naomi。
理屈は単純で、石油ポンプの手で押すタイプと一緒である。
「まあ、それでも何時間かかかるから。つないで置いておくしかないね」
と、青年。
機関庫の脇にある、蒸留水タンクから、ホースを引いて来て
機関車のそばに。
そこから、機関車のボイラーに水を入れて
ホースをつなぐと
大気圧で押されるので、流れが維持されると言う
おもしろ理科実験。
石油ポンプを手で押した人は判ると思うけれども
流れがそのまま続く。通路が大気圧101.325kpaで
押されているからで
通路に空気を入れると流れが止まる。




