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夢の鉄道

「国鉄」と直裁に書かれたトラックが工場に停まる。


「ああ、来たよ」と、KKRであった工務の若者、丸坊主頭でにこにこ。

おじさんは四角い顔で、白髪交じり。


「ああ、お仕事いいんですか?」と。Naomi。


「ああ、駅近いからね。今日は非番さ。」と若者は言う。


その割に公用のトラックを使っているが、まあ国鉄はそんな感じのところで

これはゆくゆく、国鉄の仕事になる可能性もある。



国鉄は55歳で定年、この国はすぐに年金がもらえるが

お金だけで人は生きていない。


何かをして、結果が出て。


報酬を貰うことが仕事。



年金を貰えるから、働かない。


そういう考えもあるが、結局人間の頭は

何かを考え続ける。


元々、動物だからで、ジャングルやサバンナで

食べ物を探し、敵に食われないように

いつも考え続ける。

人間とて、危険のなくなった社会でも

何も考えないと言っても、何もしないと飽きてしまう。


そういう時、やっぱりなれた仕事に似ている事をするのが

楽だ。


そういう意味で保存鉄道は、ドイツやイギリスでも

廃線になった国鉄の施設を利用して作られたが

ここは、その小さな実験だ。



「まだ、水道も電気もないの」と、めぐが言うと


ああ、じゃあ、と若者は

慣れた感じで、工場から伸びている電線を見つけ

一番近い電柱に登る。

するすると登って。


降りてきて「これで点く」


見ると、事務所の入り口にある門灯が点いた。



「どうやったの?」と、リサ。



「内緒」と、若者はにこにこ。


「でもさー、ここに住むのはちょっとなぁ」と若者は

工場に入っていった。




れーみぃは、社長さんに

話を聞いていた。


「活性白土と、酸性白土は違っていて。どちらも硫酸を原料に入れて

沸騰させると出来ます。それで、国鉄の駅からパイプラインと

タンク貨車で運んでいた。それが週に1回かな。

積み出しは朝、昼、夕。時間はまちまちで。20kgのセメント袋に入れて

手積みしていました。レールの跡を見ると判るでしょう。」と


分岐したレールの先は、いくつかの工場建屋に向かっていた。





「どちらもまだ、需要はありそうですね。」と、社長。


閉鎖になったのは、単に会社の方針です。


そういう事らしい。



石油はともかく、酸性白土は胃酸なんかで見かけるあれだから

結構高値だろう。


「うーん。」と、れーみぃは考えた。

SL再生と関係ないけど、産業再生は出来ないだろうか?なんて

妙なアイデアを考えたりした。



吸着剤なら、コスメに応用できないだろうか?

オリジナルコスメなら、そこそこ高値で売れるかもしれない。

なんて、女の子っぽい発想だった。


「パイプラインはまだ埋まっているのですね。」とれーみぃ。


社長は頷く。

「まだ、採掘場もそのままです、と言うかこの付近はどこを掘っても

原料になります。」と笑った。



「ご当地コスメってのも面白そう」と、れーみぃが言うと


社長は「それも面白いですね。」と笑った。


酸性白土でなく、中性なら使えそうかも、と

めぐも聞いていて思った。


普通、珪藻なんかの土であったり、二酸化チタンだったりする。




リサは戻ってきて「宿舎もいいけどね、直せば。でも

広すぎて怖いよ。誰もいないってのも」と。


「俺たちが住んでやろうか」と、若者が言ったが


おじいさんは「それも危ないだろう」と。


そっか、と、若者は笑った。


本人は別にして、そう言われる事もあるから。



田舎って妙に潔癖なのだ。



下町もそうだけど。





「じゃ、そうだな、じぃさん、レールの草刈でも」と、若者。


「おお」と、おじさんは、トラックの後ろから

エンジンつきの草刈を出して、オレンジ色のガソリンと

オイルを混ぜて。



よーく振る。それを持っていって

国鉄の駅のほうにある引込み線を探しに行った。



しばらくして、エンジンの音が軽やかに。




草刈が始まったらしい。



Naomiは「引込み線は最近、使ってなかったんですか?」



社長は「ああ、操業が停まってからは。趣味の人たちが

SLを運転するには、岸壁の線路の方が見栄えがするし。」と。



れーみぃは「それも面白いですね。レンタル線路とか、趣味のSL運転会。」


社長は「はい。それは無償でしたが。彼らは台湾のSLを持ってきたり、そこにある

DLも彼らが置いていったもので。不要だそうです。」と




不要。



Naomiは「動きそうですけど。」と言うと



社長さんは「レール代に、と言って。元々、置くところまで運ぶのが大変で

こういった産業用機関車って、その場で分解されてしまう事が多いんですね。」と。



なるほど。保存車庫もいいな、なんて。れーみぃは思った。


線路が分岐していて、それぞれの工場が木造の

趣ある建物だから

博物館にもなって。


宿舎も直して、ホテルにするのもいい。



そんなプランは、どんどん膨らむ。



めぐに話すと「ああ、面白いね。国鉄から列車走らせて。

遊園地の豆汽車みたいに。」と。



トレインビュー・ホテルにもなるね、とNaomi。



そういえば、工場から見える国鉄の線路は

時折、貨物列車が通る。



大きな機関車は、結構勇壮だ。




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