『実質でなにも答えない』対応が流行しすぎた結果
「授業をはじめます。では君から」
「はい」
「7足す8は?」
「その質問は、意味するところが必ずしも明らかではなく、答を留保したいと思います」
「わからないのですか?」
「そうは言っておりません。私は誠実に答える用意がありますし、現にそうしています。いちいち揚げ足をとらないでください」
「では7と8を足して、その合計した数字を答えてください。この質問の意味はわかりますか?」
「いいですか? ふたつの数字を足した場合、その数字の合計になることはあきらかなのですよ。これは誰にでもわかる事実だと言っているんです」
「では7足す8を答えてください」
「あなたはさっきから同じことしか言ってませんよ? 私はすでに答えているのに、そうやって同じことを何度も聞いて、授業を遅らせているんです。私は生徒として常々、算数への興味を深め、たゆまぬ努力も続けてきました。生徒として教師の質問には誠実に答え、自らの能力を研鑽するためにほかなりません。あなただって教師として、授業を効率よく進め、私たちの学習を妨げない義務があるんです。そういった責任感をしっかり持った上で授業にのぞんでいただきたい」
「7足す8を答えたくないのですか?」
「なんでわかってもらえませんかねえ? その質問は整理されていないため、答えようがないんですよ。私としてもいいかげんな答を返して評価を下げられたくありません」
「あなたは7足す8には答えないのですね?」
「ですから、そんな風に決めつけないでください。私がいつそんなことを言いましたか? 一度も言ってませんよ? あなたの思い込みを押しつけないでください。私はちゃんとした質問さえしてもらえれば、必ずすべて丁寧に答えます」
「『7足す8』のどこが質問として不適当なのでしょう?」
「それを考えるのはあなたの仕事です。自分の無責任を棚に上げて、こちらを非難するような言葉は謹んでいただきたい。それは問題のすりかえでしょう? そもそもあなたはそのような質問をできるほど立派な人間ですか? あなたのような人の質問に、私が答える必要があると思いますか? あなたは私へそのような質問をするより、もっとやるべきことがあると思いますよ? そんなことだから、あなたはそんな人間のままなんです」
「そんな答え方をどこで学んだのですか?」
「言っていいの?」
「……………………」
「あ、チャイムだ。ドッジボールやろうぜ~」
あとがき
ひどい不祥事が確定した企業すら「事実を確認中のため、今はコメントできない」から「係争中につき、コメントを差し控えたい」とつないで話題の鎮火を待つ『実質でなにも答えない』対応が流行しています。
『できる謝罪や説明すらしていない』で『相手を完全無視する最悪の失礼』のはずが、なぜか指摘する報道は少なく、失う信用も少なくて済む国柄のようです。
「それなら使わないと損だ」と思う方も増えているようです。
皆様も活用してみましょう……同じ程度の人間性と見られてもかまわなければ。