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第6話:3日目① ~風の精霊召喚と精霊の特徴~

 夜が明けた。長く、地獄のような夜だった。

 結論から言うと、俺は眠れなかった。


 まず第一に怪我がひどく痛む。全身の擦り傷切り傷打ち身ももちろん痛いが、折れた左腕が特に酷い。

 時間がたつにつれてパンパンに腫れてきて、心臓の鼓動に合わせて強い鈍痛が襲ってくる。

 第二に寒さが厳しかった。

 俺もマナトも満身創痍の中で何が一番恐いかというと、魔物に襲われることだった。

 夜の暗い中で煌々と焚き火の明かりが横穴から漏れていたら魔物が寄ってくるかもしれない。

 寒さの懸念はもちろんあったが背に腹は変えられない。死ぬくらいだったら辛い目にあうほうを選ぶ。

 ただ、完全に火を消していたわけではなく、小さな火を断続的に点けたり消したりしていた。それでも凍える寒さには変わりなかった。

 そのおかげもあってか、幸いにも夜中に魔物に襲われることはなかった。


 以上の理由から俺は眠れなかったのだ。

 まぁ完全に眠れなかったわけではなく、何度かウトウトとしたくらいは休めたが、質の良い睡眠とは程遠かったためMPも10くらいしか回復しなかった。



レイン

Lv.4

HP 8/50

MP 34/83

攻撃力 25

防御力 49

魔法攻撃力 56

魔法防御力 51

所持スキル 召喚魔法<下級>、ステータス閲覧、鑑定

固有スキル アイテムボックス



 まぁ34あったら風の精霊を召喚できるだろう。⋯たぶん。


「主様!夜が明けたので焚き火を全開にします!暖をとってください!」


 完全回復とはいかないが、元気を取り戻したマナトがそう言い火を着けた。

 ちなみにマナトを鑑定しようとしたら「鑑定不可」と出た。どうやら精霊は鑑定できないらしい。

 なのでどれくらいマナトのMPが回復したかはわからないので、元気そうに見えてもそれはマナトの空元気の可能性もある。

 でも昨日と比べれば格段に表情が良くなっているのでまぁ良しとしよう。


「ありがとうマナト。さて、早速だけど風の精霊を召喚しようと思う。MPに若干の不安はあるが⋯」


「了解です。召喚中はしっかり警護しておきます!」


 一刻も早くこの状況から脱したい。召喚に取り掛かろう。

 今回は二度目なので前回ほどの不安はない。俺は目を閉じて集中し、頭に浮かぶ呪文を詠唱した。



「風の精霊王シルフィードよ。我が魔力を糧とし汝の下級眷属をここに顕現させよ。」



 前回と同様に地面に直径2メートルほどの魔法陣が浮かび上がってきた。

 と同時に脱力感に襲われる。しかしこれは耐えられる。この後だ。この後の最後の詠唱が終わった瞬間に耐え難い脱力感に襲われるのだ。

 俺は気合いを入れ直し、覚悟を決めて最後の詠唱をする。



「出でよ!風のエレメンタル!」



 詠唱を終えると魔法陣に中心から緑のモヤモヤしたものが出てくる。

 同時に懸念していた極度の脱力感が襲ってくる。

 思わず片膝をつくとマナトが「主様!」と駆け寄ってくるが、視線で「来るな。大丈夫だ」というアイコンタクトを送る。マナトは正しく理解して周辺の警戒に戻る。

 MPの減少によっての脱力感はあるが、前回ほどではない。意識を失わない程度のMPは残ったようだ。


 そうこうしているうちに緑のモヤモヤは次第に人の形を成していく。

 そして一瞬の強い光を放つ。

 反射的に目を閉じ、再び開くとそこには全体的に緑色をした少年が浮いていた。

 そう。宙に浮いていたのだ。予想外の光景に一瞬声を出すことを忘れていると


「こんちは!あんたが主のあんちゃんかい?オイラは風のエレメンタルだよ!よろしくな!」


 ふよふよと浮きながら風のエレメンタルが自己紹介をしてきた。

 見た目はマナトより更に幼い少年だ。日本でいうところの8歳くらいだろうか。小学校の低学年を脱するかどうかという年齢に見える。


「初めまして。俺がキミを召喚した者だ。レインという。よろしく。」


 本来ならここで握手でもしたいが、身体はボロボロ。左腕はパンパン。MPも使い過ぎてまともに動けない状態であったため風のエレメンタルに近寄れなかった。


「あんちゃん!なんか死にかけてるじゃんか!ちょっと待っててな!」


 風のエレメンタルはそう言うと何やらブツブツと詠唱を始めた。おそらく回復魔法を使ってくれるのだろう。


「ヒール!」


 風のエレメンタルが詠唱を終えると、俺の身体を柔らかく優しい青と緑の光が包む。

 なんとも言えない心地良さに浸っていると、全身からスーッと痛みが引いていった。

 思った以上の効果に驚いて体を動かしてみる。いきなり動かした体は所々がまだ痛みはしたが、先ほどと比べると雲泥の差だった。

 折れてた左腕も動くようになった。だがこちらもまだ若干の痛みと腫れは残っていた。


「あれー⋯あんちゃんだいぶ痛みつけられてたんだなー。ヒール一発で全快しないとはなー。」


 と言いつつ再度詠唱をしてヒールをかけてくれた。同じように柔らかい光が俺を包み、今度は痛みのかけらも残さず文字通り全回復した。


「ありがとう。本当に助かったよ。改めて、俺はレインという。よろしく!」


 ちゃんとした形で自己紹介をして握手する。

 すると後方から


「主様ー!お体の方はもう大丈夫なのですかー!?」


 と大きな声を出しながらマナトが駆け寄ってくる。


「ああ。もう大丈夫だ。ありがとう。⋯こっちはキミの前に召喚した火のエレメンタル。マナトと名付けた。仲良くしてくれると助かる。」


「火のエレメンタルです!主様からマナトという名前をいただきました!よろしくお願いします!」


 こちらの自己紹介を済ませる。風のエレメンタルは不思議そうな顔をして


「よろしくな!レインのあんちゃんにマナトのあんちゃん!⋯でもレインのあんちゃんも変わってるよなー。呼び出した精霊に名前を付けるなんてさー。」


 と言った。そうか、まだこの子には俺の目的を話してなかった。この子はきっと俺を回復させるために呼ばれたと思っているのだろう。すぐに帰還させられると。まずは説明しておこう。


 俺は風のエレメンタルに俺の目的をとこれまでの経緯を話した。


「そういうことかー。それならオイラは役に立っちゃうぜー!なんせオイラは何でもできるからなー!」


 とイタズラ小僧のような笑顔を見せて言った。


「なんでもできるとは⋯具体的にはどんなことかできるんだい?」


 浮かんだ疑問を投げる。すると風のエレメンタルは難しい顔をしてマナトに向き直り


「⋯マナトのあんちゃん。もしかしてレインのあんちゃんにオイラ達精霊の特徴を説明してないんかい?」


 問われたマナトは微妙な表情を浮かべて無言の肯定をする。


「はぁ、これだから火の属性は⋯まぁいーや。まずはオイラがレインのあんちゃんに精霊の特徴を説明するよ!」


 と言うとどこからかメガネを取り出してかける。ついでに片手でクイッと持ち上げて見せた。いろいろツッコミどころはあるがとりあえず説明を受けよう。


「まずは火の精霊。マナトのあんちゃんだな。火の精霊の特徴は何と言っても高い戦闘能力だぜー!武器での肉弾戦も強いし、攻撃魔法もいけちゃうからな!攻撃魔法を詠唱無しで使えるのは火の属性だけだし、強さはピカイチだぜー!まぁその代わりに考えることが苦手で、考える前に即行動!みたいな所が玉に傷だなー。」


 うん。思い当たる節がある。マナトは猪突猛進的な所がある。本人も自覚してるのか居た堪れない表情をしている。


「次は水の精霊いっとくかー。水の精霊の特徴はやっぱり回復魔法だなー。回復魔法なら詠唱なしで使えるんだぜ!回復魔法以外にも補助魔法も使えるし、攻撃魔法もいける。その代わり武器を使っての接近戦闘は苦手だから、人間で言うところの魔法使いってやつかなー。他にも生活魔法が使えて、飲み水が出せるしお湯や氷もだせるんだぜ!あとは人間にとっては浄化なんかが重宝するんじゃないかなー。」


「浄化?道具とかをキレイにする魔法か?」


「道具もキレイにできるけど、人間をキレイにするんだよ!あんちゃんはよくわからないかもしれないけど、この世界は上流階級か金持ちくらいしか風呂なんてもん持ってないから、結構重宝されてんだぜー!」


 おもわず「おお!」と声を出してしまった。

 この世界に来てから今日で3日目。もちろん風呂なんか入ってない。頭は痒いし臭いもそろそろ気になってきていた。これは早く水の精霊を召喚せねば。


「次は土の精霊だなー。土の精霊は攻撃魔法や回復魔法、補助魔法も使えないし接近戦闘も苦手だけど、特徴は何と言っても形成魔法が使えるってことだ!これは魔力を使って物を作るすごい魔法なんだぜー!材料は必要になるし大きい物や複雑な物はその分使う魔力も多くなるけど、武器や防具、家なんかも作れちゃうんだぜ!村を作ろうとしてるあんちゃんにはウッテツケの魔法じゃないかー?あとは農業なんかも得意だなー。」


 俺は衝撃を隠しきれなかった。その形成魔法ってのはまさに俺の目的に完全に噛み合っている。

 道具はまだともかく、家なんかは専門の人間をどこかからか探して連れてこないとと考えていただけに形成魔法の存在は非常にありがたかった。

 次は水の精霊を召喚するつもりだったのに気持ちが揺らいでしまう。水と土どちらにすべきか⋯


「よっしゃ!最後にオイラの属性、風の精霊だぜー!さっきも言ったけど、オイラ達風の精霊はなんでもできるんだぜ!攻撃魔法も補助魔法も回復魔法も形成魔法も使えるぜ!武器を使っての攻撃もできるし、各属性のいいとこ取りなのが特徴だー!すげーだろー!⋯まぁどれもこれも得意属性と比べると性能は落ちるけどなー。」


 最後の一言が小さい声だったことにクスッとした。

 なるほど。つまりは器用貧乏なわけか。器用貧乏大いに結構!俺は日本でゲームをする時は、某大作RPGでは賢者を好み、別の某大作RPGでは赤い魔導師を好んで使っていた。


「風の精霊すごいじゃないか!具体的にはどれくらい性能が落ちるのかな?」


「魔法は全て詠唱が必要なんだ。威力も多少落ちるなー。武器は弓とかパチンコといった遠距離のものしか得意じゃないんだ。形成魔法は木や草とかの植物系にしか効果がないんだ。」


 軽く自分を悲観しているような物言いだが、じゅうぶんだろう。風の精霊は一人居れば安定感がグンと上がるタイプだな。

 それに植物系で形成魔法が使えるということは、木で家も作れちゃうということだろう。まさかこんなに早く家が持てる環境になるとは思わなかったので素直に嬉しい。


 俺は広がる選択肢に心を弾ませるのであった。


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