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第29話:8日目② ~無口なエレメンタル~

「出でよ! 土のエレメンタル!」


 お馴染みの魔法陣から出てきた土のエレメンタルは、見た目はファクトより少し若めの『お父さん』といったイメージを抱かせるダンディな中年の男性。

 身長はやはり100センチあるかないかといったところで、短く揃えられた髭をこさえている。

 眼光は鋭く、その表情は凄みすら感じる。


「⋯⋯」


「⋯⋯」


「⋯⋯」


 今まで召喚してきた精霊達は魔法陣から出てきてまず何かしらの挨拶をしてきた。今回も何か言ってくるだろうと待っていたが、何も言ってくる気配がない。


「⋯⋯初めまして。俺が貴方を召喚したレインという者だ。よろしく頼む。」


「⋯⋯」


 こちらから挨拶しても特に返事はない。ただ小さく頷いてはいた。

 うーん⋯⋯怒っているのだろうか。7回目の召喚にして初めてのパターンなので正直戸惑っている。


「す、すまないが少しここでこのまま待っていてくれるか?」


 土のエレメンタルが頷いたのを確認して、俺は前方で作業をしているファクトに声をかける。


「おーい! ファクトー! すまないがちょっと来てくれー!」


 するとすぐにファクトが気付き、小走りで来てくれた。


「主殿、どうされたかの?」


 ファクトが小首を傾げながら尋ねてくる。俺は新しい土のエレメンタルに聞こえないように小声でファクトに話す。


「作業中に呼び立ててすまない。まぁその⋯⋯今しがた新しく土のエレメンタルを召喚したんだが⋯⋯」


 と言って後方に佇んでいる土のエレメンタルに視線を流す。


「⋯⋯ふむ。同族ながら良い眼をしておる。」


「まぁそうなんだけど⋯⋯その新しい土のエレメンタルが何も喋ってくれないんだ。俺が自己紹介しても僅かに頷くだけで⋯⋯。精霊はいきなり召喚されて怒るということもあるのか?」


 するとファクトは後ろの土のエレメンタルを観察するように見て、意を得たように頷き


「⋯⋯ふむ。なるほどの。主殿。アヤツは怒っているわけではないようじゃ。我ら土の一族の中にはあのように極端に無口な者がたまにおるのじゃ。我ら土の一族は物を作ることを第一としておる。職人気質とでも言うのかの⋯⋯基本的に皆総じて無口な傾向にあるのじゃが、アヤツは特に無口なようじゃ。」


 なるほど。少し驚いたが、怒っているわけではないようで安心した。

 ⋯⋯ん? 待てよ?


「ファクト⋯⋯土の一族は基本的に無口な傾向にあると言っていたな?」


「そうじゃな。ワシなんぞはまだ喋る方だと思うがの」


「じゃあカイエはどうなるんだ? カイエはマシンガンみたいに喋り倒すだろ?」


 話しながら(マシンガンとか言っても伝わらないだろうな〜)と思っていたが、他にいい表現が思いつかなかった。

 するとファクトは少し苦い顔をして


「ふむ⋯⋯。土の一族の中でもカイエ殿は極めて珍しい。異質といってもいいような存在じゃ。あのようにベラベラ喋る土の精霊はそう居ないがのぅ⋯⋯」


 と言って頭をポリポリとかいていた。

 なるほど。まぁどんなことにも例外というものは存在する。カイエはその例外そのものなのだろう。


「ふむ。話が逸れたの。どれ、挨拶がてらわしがアヤツに事の運びを説明してきても良いかの?」


 俺が頷くとファクトは新しい土のエレメンタルのところへ向かって行った。

 そしてなにやら話しをしている。まぁ今までの経緯やこれからのことなどを話しているのだが、不思議なのは新しい土のエレメンタルは全く口を開いていないのに時折ファクトが頷いたり質問に答えるような素振りをしているのだ。

 俺のいるここから2人が話している場所は微妙に遠いので話しの内容は聞こえないが、内容がとても気になる。


 ほどなくしてファクトと新しい土のエレメンタルが揃って俺の所へ来た。


「ふむ。終わったぞい。今までの経緯とワシらのやるべきことを説明してきた。コヤツも喜んで手を貸すと言っておるぞ。」


 マジか。手を貸すと“言って”たのか。口を開いてるようには見えなかったが⋯⋯不思議だ。


「そうか。助かる。ありがとう。それでは他の精霊達と同じように名前を付けたいんだが、いいか?」


 すると土のエレメンタルは黙って頷く。

 これで気に入らない名前を付けたら視線だけで殺されそうだ。

 少し悩んで考えた名前は


「⋯⋯よし。マイルス。マイルスって名前でどうだ?」


 土のエレメンタルは変わらず鋭い眼光のままで小さく頷いた。

 頷いたということはその名前でいいということなのだろうが、念のためにファクトを見ると苦笑いしながら


「それで良いようじゃ。」


 と言ってくれたので安心した。


「では改めてよろしく。マイルス。」


 握手を求めるとしっかりと握り返してくれた。⋯⋯表情は相変わらずだったが。


 とりあえずマイルスにはファクトに付いてファクトの仕事を手伝うように指示した。

 というのも、ファクトから簡単に説明は受けたがまだ十分ではないため、ファクトと一緒に仕事をしながら細かい説明などをしてもらうためだ。


 ファクトとマイルスが作業に入るために一緒に去っていった。

 ファクトには引き続き石畳を敷く作業をしてもらっている。先日の時点で南北の石畳は完成したので、今日は東西に伸びる石畳を敷く作業だ。

 ちょうど十字の形になるようにして、交わる部分を少し広げて大きめの広場にする。

 マイルスと2人でやるならすぐ終わるだろう。他の精霊達も各々の作業に入っているし、俺はMPの回復のために少し休んでおくとしよう。


 おっと。休む前にステータスの確認だ。

 いちいちステータスの確認をするのは確かに面倒だが、俺のMPの管理は村づくりやレベル上げに直結するため欠かすことはできない。



レイン

Lv.10

HP 86/86

MP 45/129

攻撃力 46

防御力 61

魔法攻撃力 92

魔法防御力 87

所持スキル 召喚魔法<下級>、ステータス閲覧、鑑定

固有スキル アイテムボックス



 おう⋯⋯ガッツリ減ったな。

 ええと⋯⋯84減ったのか。きっと3人目の風のエレメンタルを召喚する時もこれくらい消費するだろう。

 そうなると、4人目の土のエレメンタルや風のエレメンタルを召喚するよりも2人目の火のエレメンタルや水のエレメンタルを召喚したほうがMPの消費が少なく済む。

 今後の予定としては、次は風のエレメンタルの召喚、それから火のエレメンタルと水のエレメンタルの召喚になるだろう。

 レベルも上げたいところだが、村を形にすることが急がれるため後回しにせざるを得ないだろう。

 しかし食料の確保もしなければならない。先日オークは確保したとはいえ、まだ量と種類が必要だろう。


 やるべきことが山積みで多少の目眩を覚えながら俺は家に入ってベッドに体を沈めた。


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