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第28話:8日目① ~朗報~

 ベッドの中で目が覚めた。朝である。

 昨日は流石に精神的にまいっていたので、各精霊に指示だけ出して早々に家で休ませてもらった。

 お陰で疲れは取れていたし、気分もスッキリしている。また頑張ろうという気持ちになれた。よかった。

 ベッドに腰掛け、状況を整理してみる。

 今日でビリーフェさん達と別れてから3日目だ。早ければ明後日には冒険者や商隊が到着する。そろそろピッチを上げて村を作らなくては。

 差し当たって必ず必要なのは、冒険者達が泊まる宿と冒険者ギルドと露店。そして家族連れで来た人達への借家といったところか。

 武器や防具はすでにファクトとカイエに一通り作ってもらってある。グレイストーンを使っての品なので性能はいいはずだ。

 これらを考慮すると、土のエレメンタルと風のエレメンタルを増やしたほうがいいだろう。自衛用に火のエレメンタルの召喚や自分のレベル上げもしたいところだが、村をとりあえずの形にするほうが優先されるところだろう。

 幸いゆっくり休ませてもらったのでMPは満タンだ。有効に使っていこう。


 家を出てグレイケイブに入る。

 最近は精霊達も各自の家で寝ているようだが、ご飯はグレイケイブでとなっている。正式に決めたわけではなく、自然の流れでそうなった。


「主様! おはようございます! 気分はいかがですか!?」


「おやおや? あんちゃん目が腫れてるぜー? さては故郷が恋しくなって一人で泣いてたなー?」


「ほらほら! シャキッとして! シャキッと! そんな辛気臭い顔してないでご飯食べちゃいなさい!」


 グレイケイブに入るなりマナトとブリーズとカイエが茶化してきた。やはり昨日はかなり落ち込んでしまっていたので気を使ってくれているのだろう。


「みんなおはよう。昨日は早々に休んでしまってすまなかった。ゆっくり休ませてもらってずいぶん気分が良いよ。ありがとう。」


 そう言うとみんなが息をつくのがわかる。やはり気を使わせていたのだ。


 円になって座り、ご飯を食べる。なんだかんだで昨日オークを6匹確保することができたので、とりあえずの食料は確保できた。が、たくさんの冒険者や商人に宿屋で出すほどの食料は量も種類もない。どうしたものか。

 と考えながらご飯を食べ終えると、ブリーズとカイエがニヤニヤしながら近寄ってきた。


「ふっふっふ。傷心のあんちゃんにプレゼントがあるんだぜー。な。カイエのおばちゃん!」


「そうだよ! アタシとブリーズちゃんのプレゼントを見たら一発で元気になっちゃうよ! まずはアタシのプレゼントを見なさい!」


 と、カイエが奥のほうからジャガイモを持ってきた。それも大量にだ。まだ蔓に繋がっている。


「⋯⋯カイエ。このジャガイモはどうしたんだ?」


「私が作ったジャガイモに決まってるじゃないのさ! アンタが指示して作らせたんでしょうに!」


 確かに俺がカイエに指示を出して栽培してもらった。が、しかし⋯⋯


「植えてからまだ数日しか経ってないだろう? なぜもう育っている?」


「そんなの簡単よ! 精霊の加護の中でアタシ(土の精霊)が祝福を与えながら育てればこれくらいで育つさね! なんだい、ずいぶんとテンションが低いけど嬉しくないのかい?」


「嬉しいに決まっているだろ! あまりにも吃驚してうまく喜べなかっただけだ! カイエ凄いじゃないか!」


 カイエは見事なドヤ顔を披露する。

 しかし嬉しすぎる誤算だ。まさかジャガイモが3日目ほどで収穫できるとは思わなかった。

 俺の記憶が確かなら、ジャガイモは年に2度収穫できたはずだ。つまり植えてから収穫まで約半年かかる。

 それが3日である。さらに土も痩せない。これは立派な農業チートだろう。二十日大根なら一日で収穫できちゃうんじゃないかな?


「次はオイラだぜー! これ見てくれよー!」


 と言ってブリーズが出したのはブレッドバードだった。それも4羽もいる。


「おおお! これはブレッドバードじゃないか! これは嬉しいぞ! あのスープは美味かったからな!」


 これは以前にサフラがスープにしてくれた鳥だ。スープだけでなく肉も相当美味しい。

 ビリーフェさんや正義の白翼の面々も気に入ってくれたスープだ。これには素直にテンションが上がってしまった。が、ブリーズのニヤニヤはまだ止まらない。


「それだけじゃないぜー! ファクトのじーちゃんと相談して、こいつの尾羽根と昨日マナトのあんちゃんがポイズンクロウラーを解体して取り出した絹糸を使って弓矢を作ることにしたんたぜー! 弓矢はオイラ達、風のエレメンタルが一番得意にしてる武器なのさー! これで戦力アップ間違いなしだぜー!」


「ふむ。弓の素材は丈夫だがよくしなるトレントの腕とポイズンクロウラーの絹糸を頑丈に撚った糸を使う。矢は鏃にグレイストーン。シャフトにトレントの幹。矢羽根にブレッドバードの尾羽根を使う。構造上ではかなり性能のいい弓矢ができるじゃろう。ブリーズ坊とシキナ嬢の頼みじゃ。作ってもいいかの? 主殿。」


 もちろん許可した。戦力アップになるなら拒否する理由なんかない。

 ブレッドバードは1匹につき5枚の尾羽根を持っている。初めて入手した時の2匹のブレッドバードも加えて計30枚の尾羽根がある。つまり30本の矢が用意できるということだ。

 しかも普通なら矢は使い捨てになる所だが、俺たちには使い捨てにはならない。壊れても形成魔法で修理ができ、汚れても浄化魔法でキレイにできる。

 つまり、無くならない限りは再利用が可能だということだ。このアドバンテージは大きい。


「朝からたくさん朗報(プレゼント)をもらった。みんなありがとう。」


 実用性のある朗報はもちろん、俺を喜ばせようとしてくれたことがうれしい。さて、その想いに報いるためにも頑張ろう。


 ご飯が終わり各自に割り振りをした後、俺は外で新しい精霊を召喚することにした。

 まずは今のステータスを見ておこう。



レイン

Lv.10

HP 86/86

MP 129/129

攻撃力 46

防御力 61

魔法攻撃力 92

魔法防御力 87

所持スキル 召喚魔法<下級>、ステータス閲覧、鑑定

固有スキル アイテムボックス



 村づくりのピッチを上げていきたい今、欲しいのはやはり土のエレメンタルだろう。

 風のエレメンタルも欲しいところだが、こと建築に関してはやはり土のエレメンタルに軍配が上がる。

 土のエレメンタルは3人目になるので消費するMPも大きくなるだろうが、今の俺のMPは満タンだ。土のエレメンタルなら枯渇することはないだろう。


 さあ、新しい仲間を呼び出そう。


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