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第16話:5日目① ~新しい朝〜

久しぶりの本編です。ここから少しずつ村づくりが始まります。

 朝。目覚め一発目から清々しい空気が肺に流れ込んでくる。

 昨日久々に酒を飲んだ。それもまぁまぁの量を。にも関わらず頭が痛かったり体が怠かったりなどなく、とても調子が良い。

 おそらく32年間の人生の中で一番気持ち良く目覚めた朝だろう。

 腕時計を見ると、時刻は7時を回ったところだった。こんなにグッスリ寝たのはいつぶりだろうかと思考を巡らせながらベッドから降りて軽く屈伸運動をしてみる。やはり調子が良い。

 おそらく精霊の加護とベッドの相乗効果だろう。ありがたいことだ。


 家の中を見回してみる。

 昨日は暗かったし俺も酔っ払っていたのでよく見てなかったが、よく見ると囲炉裏があったり窓(ガラスはないので吹きさらし状態だが)があったりと機能的にも充実している。


 家のドアを開けて外に出る。ドアを開けるという行為も久しぶりだ。

 外に一歩出る。降り注ぐ朝日を全身に浴びて、朝の冷たいが寒くない空気を目一杯吸い込みながら体を伸ばす。

 もうすでに何度目かの「気持ちが良い」「清々しい」といった感情が生まれてくる。だが何度でも言おう。今日という朝はとても清々しく気持ちの良い朝だ。


 ふと前方を見ると、ビリーフェさんと“正義の白翼”のスコープとバッグスのコンビが手合わせをしていた。

 おお、朝早くから精が出るなぁ。などと思い、一声かけようと近づくが、どうも様子がおかしい。

 ビリーフェさんは楽しそうに手合わせしていたが、スコープとバッグスの表情がおかしい。

 疲れ切っているというか、すでに死にかかっているというか、絶望に染まっているかのような表情だった。

 近づく俺にビリーフェさんが気付き


「おお! レイン殿おはようございます! いやはや、気持ちの良い朝ですなぁ! 昨夜は良く眠れましたかな?」


 と声をかけてきた。しかしその間もスコープとバッグスが攻撃は止むことなく続いている。ビリーフェさんはそれらの攻撃を余裕でいなしながら俺に声をかけてきたのだ。


「ビリーフェさんおはようございます。スコープ君とバッグス君もおはよう。朝から稽古ですか?」


「そうですな! 朝起きたらなんと体の調子の良いことか! こんなに清々しく、体の調子が良い朝にじっとしてたらバチが当たると思いましてな! 若者2人に稽古に付き合ってもらってるのですよ!」


 相変わらずスコープとバッグスは絶望に染まった表情でビリーフェさんに攻撃を繰り出していた。

 おいおい⋯⋯よく見たら2人の持ってる武器は木剣とかではなく、本物の剣と片手斧じゃないか⋯⋯それを遠慮なくビリーフェさんに繰り出しているが大丈夫なのか⋯⋯?


「それにしては2人の表情が曇っているように見えますが⋯⋯大丈夫ですか?」


「ほう? レイン殿にはこの2人の表情が曇っているように見えるのですか? 私にはそうは見えませんな! 若者のくせに夜間の見張りは買って出ない! それどころか酔っ払ってしまって草原のど真ん中で寝こける! あまつさえ叩き起こしても起きない! 朝も私に起こされるまで起きない! そんな気楽な連中の表情が曇るわけありませんよ!」


 ⋯⋯なるほど。つまりこれは稽古ではなくお仕置きというわけだ。

 2人のあの疲れ様だといつから稽古(お仕置き)してるのか想像がつかない。ただ短い時間でないことだけはわかる。


 しかしこうして見るとビリーフェさんはすごい体をしている。

 タンクトップにズボンという格好だが、筋肉がすごい。ボディビルダーかと思うほどのマッチョだ。

 マナトもソフトマッチョだが、比べものにならないくらいのガチマッチョ。あの年であの体のを維持するのは大変だろうと思うが、流石としか言えない。

 なのに動きがとても俊敏だ。新進気鋭のパーティの前衛2人が同時に攻撃しているのにかすりもしない。それどころか2人をボコボコに殴っている。あ、今またバッグスの鳩尾にいいパンチが入った。


 俺は心の中で2人に「ご愁傷様」と手を合わせてその場を離れた。

 家の裏にあるグレイケイブの中に入ると、俺と外にいた3人以外の全員がその場にいた。どうやら朝食の準備をしているようだ。


「みんなおはよう」


 と声をかけると「おはようございます」と揃った声が返ってきた。単純なことだが「おはよう」と言って「おはよう」と返ってくるのは気持ちいいね。日本では一人で暮らしていたから新鮮な感じがする。


「主様!」


 と弾かれたようにマナトが近づいてきた。手に何かもっている。


「主様! おはようございます! これ見てください!」


 と嬉しそうなマナトに見せられたのは鳥だった。3羽いる。どうやらもう血抜きも済んでいるようだ。グッタリしている。


「鳥じゃないか。これどうしたんだ? 狩ったのか?」


「いえ! 朝になったら結界の周りに落ちていました! どうやら夜中のうちに結界に突っ込んでダメージを受けたみたいで、転がっていました!」


 おおう。ずいぶんマヌケな鳥だな。結界に突っ込んで死ぬってことは弱い魔物なのだろうか。久々に鑑定を発動させる。



ブレッドバード

生まれてから死ぬまでのほとんどの時間を超高速で飛び回って過ごす鳥型の魔物。そのためなかなか捕まえられないが、その肉はこの上なく美味しい。弱い魔物で人族に害は与えないが、その捕獲難易度の高さ故に討伐難易度は高い。

討伐難易度 C



 うお⋯⋯この鳥の討伐難易度はキラーグリズリーと同じなのか。

 この説明文から肉の美味さはすでに保証されてるだろう。楽しみだ。


「この鳥はブレッドバードといいまして、常にすごいスピードで飛び回っているのでなかなか捕獲できずあまり出回らない魔物なのですが、とてもおいしいのです! 貴重品なので皆で食べれるよう朝食に出したいと思うのですが、よろしいですか?」


 うん。やっぱりマナトはいい子だね。普通なら貴重品だからこそ自分たちで独占したいと思うところなのに、皆で食べたいとはね。


「もちろんいいさ。他に何かアイテムボックスから出すものはあるかい?」


 と訊くと、マナトではなくサフラが答えた。


「おそらくブレッドバードだけでは全員分だと足りないので、オーク肉も出していただけると助かります。」


 俺は了解の意を示しオークを取り出した。


「ありがとうございます。調理は我々でやりますのでご主人様はゆっくり休んでいてください。」


 どうやら“正義の白翼”のフェイミズとフリーマも手伝ってくれるようで力強く頷いている。

 客人に働かせるのはどうかとも思ったが、どっちみち全員で作業するにはグレイケイブの中は狭い。

 お言葉に甘えることにして外に出た。ビリーフェさん達が見える位置で腰を下ろす。

(そうだ。ステータスの確認をしておこう。)

 精霊の加護でどれだけ回復しやすくなったかを検証するために昨夜ステータスを見ておいた。さっそくステータスを開いてみる。



レイン

Lv.7

HP 68/68

MP 102/102

攻撃力 37

防御力 52

魔法攻撃力 74

魔法防御力 69

所持スキル 召喚魔法<下級>、ステータス閲覧、鑑定

固有スキル アイテムボックス



 おお! 全快だ! 昨日の寝る前で22だったから、一晩で80も回復したのか。

 精霊の加護の効果が大きいと思うのだが、個人的にはベッドの存在も大きいと思う。あれは本当に快適だった。

 精霊の加護がある状態で今までみたいに地べたで寝た場合のMPの回復率も検証してみたい気持ちもあるが、ベッドの快適さを体験したらもう検証する機会はないだろう。

 MPは常に回復しているから満タンの状態ではもったいない気もするが、各属性のエレメンタルの2人目以降を召喚する際の使用MPがどれくらいかというのをサフラあたりに訊いてみたいし、今日から本格的に村づくりが始まるのでみんな(精霊達)と計画などをたててから召喚したい。

 なので今は様子見だ。


 などと思考を巡らせているとビリーフェさん達の稽古(お仕置き)が終わったようだ。ビリーフェさんがこちらに歩いてくる。が、スコープとバッグスはその場で崩れ落ちていた。


「いやぁ、朝食前にいい運動ができましたな。それに新進気鋭ともて囃されている若者の鼻っ面をへし折るいい機会でした。」


 と言ったビリーフェさんは実に良い笑顔を浮かべていた。

 と同時にマナトが飛んできて


「主様ー! そろそろ朝ごはんができるそうですよー!」


 と教えてくれた。


「おお。グッドタイミングですな。おーい、スコープ、バッグス、先に朝ごはん食べてますよー。君たちも早く来なさい。」


 ビリーフェさんがそう声をかけるが2人の反応はない。

 ⋯⋯あれはちゃんと生きてるのだろうか? ピクリとも動いてないが⋯⋯


 まぁとりあえず朝ごはんだ。俺たちはグレイケイブへ向かった。


報告が遅れましたが、ブックマーク数が100件を超えました!

いつも読んで下さっている皆様、本当にありがとうございます。今後も頑張っていきたいと思いますのでよろしくお願いします。

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