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第1話:1日目 ~初めての異世界で初めての召喚魔法~

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 俺はゆっくり目を開けた。


 眩しい。どうやらここは屋外のようだ。ゆっくり立ち上がり、正面を見据える。

 目の前には視界いっぱいに草原が広がっている。所々に木が生えていて、だだっ広い以外は普通の草原っぽい。


 頭がボーッとしているが、状況を整理してみる。


(そうか⋯俺は異世界に来たんだ。)


 頭が徐々にクリアになっていき、状況が掴めてきた。

 何気なく後ろを見てみる。


「うお⋯すげぇ⋯」


 誰もいないのに思わず声が漏れてしまったが、無理もないと思う。

 振り返った10メートル程先には、とてつもなく高い崖のようなものがそびえ立っていた。


 崖なのか壁なのかわからないが、どれくらいの高さなのかわからない。

 首が痛くなる程見上げても頂上は見えなかった。

 しかもそんな高い崖が右の視界いっぱいから左の視界いっぱいに続いていた。


 まるで世界をここで区切っているかのようだ。


 目の前には視界いっぱいの草原。後ろには視界いっぱいの崖のような壁のようなもの。

 それだけで少なくともここが日本ではないことは理解できた。


(ってか、あの白い人は本当に神様だったんだな。)


 疑ってたわけじゃない。でも心のどこかで「タチの悪いドッキリとかじゃないだろうか」と思っていた部分が無いとは言えなかった。


「さむっ!感傷に浸ってて気付かなかったけど、かなり寒いな!なんとかしなきゃ!」


 とりあえず辺りを見回す。先ほどの崖の麓に横幅、縦幅ともに2メートル程の洞窟のような横穴を見つける。

 あそこで風を避けたいが、何かの巣穴とかだったら嫌だなぁと思って外からそーっと横穴を覗いてみる。

 すると、奥行きは5メートル程しかなく巣穴のような形跡もない。

 どうやらただの横穴だと判断して中に入る。


 中に入ると意外と風は遮られる。気温も心なしか少し暖かい気がする。一息ついた所で自分の状況を見てみる。


 着ているものは普通に先ほどまで着ていた洋服だった。派手でないネルシャツにジーンズ。それにダウンジャケットを着込んでいる姿だ。

 しかし持っていたカバンがないことに気付いた。目を覚ました地点を見回しても見当たらない。


(まいったな⋯カバンの中にサイフもスマホも入ってたのに⋯)


 と思った所で意味がないことに気付いた。

 ここは異世界。日本のお金やスマホを持ってたってどうせ使えないだろう。


 カバンはなかったが、腕時計はしたままだった。

 時計を見ると、短針が「3」のあたりを。長針は「12」のあたりを指していた。

 外は日が差しているので普通に考えれば15時頃だと思う。でも神様に会って異世界に飛ばしてもらったのは夜だったはずだ。

 異世界と日本の時間の流れが違うのか、俺が気付かないうちに12時間以上爆睡してたのか⋯

 そもそもこの世界の1日が24時間かどうかもわからない。


 とりあえず時間のことはひとまず置いておこう。そして最も重要な事を思い出す。


「そうだ!能力!貰った能力ってなんなんだ!?」


 そう。異世界に転移したということは何かしらの能力を貰っているはずだ。そういう約束だったのだから。

 しかし体に変化はなく、特別何かの能力を得たという自覚は感じられなかった。


 試しに手を前にかざして「ファイアー!」と唱えてみた。

 当然のように火なんぞ出ず。ただ虚しさと恥ずかしさだけが残った。


(まてまてまて。まぁとりあえず落ち着け花咲京介。何かしらの能力を貰っているのは間違いないのだ。悲観するのはまだ早い。そうだ!ステータスだ!ここは異世界なんだからステータスくらい見れるだろ!)


 自分でもわけのわからない謎の推察をし、意気揚々と「ステータス、オープン!」と叫んでみる。

 すると、目の前に文字が浮かび上がってきた。パッと見で自分のステータスを表しているとわかる。


「キター!」と叫び、浮かび上がってきた文字を食い入るように見つめる。



 花咲 京介

 Lv.1

 HP 32/32

 MP 56/56

 攻撃力 16

 防御力 45

 魔法攻撃力 38

 魔法防御力 33

 所持スキル 召喚魔法<下級>、ステータス閲覧、鑑定

 固有スキル アイテムボックス



 はっきり言って感動だ。

 今までゲームや小説の中でしか存在しなかったステータスが目の前に広がっている。

 しかもそのステータスは自分のステータスを表している。


 このステータスがどうだとか素早さとかの表示がないだとか攻撃力に比べて防御力が異常に高いだとか明らかに魔法使いよりのステータスだとか⋯気になる点は多々あったけど、そんな些細な疑問などどうでもよくなるくらいの衝撃の文字に目を奪われる。



 召喚魔法<下級>



 マジか。

 俺は召喚魔法を使えるのか。


 召喚魔法ってアレだろ?カーバンクルとかバハムートとか呼べちゃうやつ。

 ヤバいヤバいヤバい。テンション上がってきた。


 でも使い方がわからない。どうしたもんかなーと思いながら召喚魔法<下級>の文字を指で触ってみると、文字が展開して説明文が表示された。

 意外な高性能さに驚きながら説明文を読む。



 召喚魔法<下級>

 大きな魔力(MP)を使って自然界のそれぞれの属性のマナを集めて下級精霊を召喚(顕現)させる。

 召喚できる精霊は四大精霊の下級眷属のみである。



 なんかいろいろわからない単語が出てきた。

 続いてマナの部分を触ってみる。



 マナ

 自然界に存在する不可視のマジックマテリアル。

 どこにでも存在し、特にそれぞれの属性にちなんだ場所にはそれぞれの属性のマナが集まりやすい。

 非常に希薄ながら意思が存在する。



 ふむ。前のページに戻って四大精霊を触ってみる。



 四大精霊

 四大元素と言われる 火 水 土 風 のそれぞれの頂点に君臨する大精霊。

 火のサラマンダー

 水のウンディーネ

 土のノーム

 風のシルフィード




 なるほど。つまり自分のMPを使って 火 水 土 風 のどれかの下級精霊を召喚できるって認識でよさそうだ。


 カーバンクルやバハムートを召喚できないのは残念だけど、これはこれで楽しみだ。

 下級といえど、精霊ならきっと魔法が使えるだろう。

 せっかくファンタジーな世界に来たんだ。火の魔法とか水の魔法とか見てみたい。

 俺も魔法を使えるみたいだけど、召喚魔法しか使えないので俺の思い描いてた魔法とは少し違う。


 よし!さっそく召喚魔法を使ってみよう!


 四属性の中から選べるみたいだが、どの精霊を召喚するかはすでに決まっている。

 記念すべき最初の召喚魔法は火の下級精霊を召喚しようと思う。

 理由は簡単。寒いからだ。


 横穴の中で風を凌いで多少寒さが和らいだとはいえ、まだ寒くてたまらない。

 どれくらい寒いかというと、濡らしたタオルを振り回せば余裕で凍るんじゃないかと思えるほど寒い。

 今が本当に15時頃だとしたら夜や朝方はどれだけ寒いのだろう。

 このまま何の対策もせずに夜を迎えたらと考えると、真面目に命の危険を感じる。

 俺はタバコは吸わないのでライターなんか持ってないし、サバイバル術もないから火の起こし方なんかも知らない。

 なのでここは火の精霊一択だ。


 いまだに召喚魔法の使い方がわからないという問題は解決していないが、いざ「火の精霊を召喚する!」と心に決めると不思議となんとなく使い方がわかる。

 最初から召喚魔法の使い方を知っていたかのような感覚が生まれてくる。


「よし⋯やるぞ。」


 使い方がわかるとはいえ、初めての召喚魔法だ。不安と緊張に襲われる。

 一度大きく深呼吸をして心を落ち着かせる。

 目を瞑り集中が高まった所で、頭の中に浮かんできた呪文を言葉にして紡いでいく。



「火の精霊王サラマンダーよ。我が魔力を糧とし汝の下級眷属をここに顕現させよ」



 ここまで詠唱すると、地面に魔法陣が浮かび上がってきた。

 直径2メートル程だろうか。到底解読できそうにない文字が外枠部分にビッシリ書き込まれた赤い魔法陣が狭い穴倉の横幅いっぱいに広がっている。

 魔法陣が浮かび上がってきた瞬間、大きな疲労感に襲われた。

 できることならここで詠唱をやめて座り込んでしまいたかったが、そうすると召喚が失敗してしまうだろうと簡単に予測できたため腹に力を入れて最後の詠唱をする。



「出でよ!火のエレメンタル!」



 詠唱を終えた瞬間、魔法陣の中心から赤いモヤモヤした煙のようなものが大量に出てきた。

 と同時に俺はさらに途轍もない疲労感、虚脱感に襲われて自分の体を支えることができずに地面に崩れ落ちる。

 すぐにでも意識を手放してしまいそうだったが、ギリギリの所で踏み止まる。


 魔法陣から出てきた赤いモヤモヤが集結し人の姿を形作っていく。

 どうやら精霊とは人型のようだ。

 俺が召喚した精霊なのだから俺に危害を加えることはないと思うが、警戒するに越したことはないだろう。

 それにどんな精霊が出てくるのかも気になる。

 少なくとも精霊の姿を確認するまでは意識を保っておかねば。

 地面に這いつくばった形で精霊の誕生を見守っているとモヤモヤの集結体が短く鋭い、しかし強い閃光を発した。


 眩しさに思わず目を閉じる。

 目を閉じたことにより意識が遠のいていく感覚が強くなる。


 あ、ヤバい。このまま意識がなくなってしまう…

 と思ったその時


「初めまして主様!僕が火の⋯⋯って主様!?大丈夫ですか!?」


 と元気な声が耳に飛び込んできた。


 最後の力を振り絞って声のした方に視線を向けると、全体的に赤い印象のある中学生くらいのソフトマッチョの少年がいた。

 どうやらこの少年が火の下級精霊のようだ。


「普通⋯こういう、時は⋯美少女が、出てくる⋯もん⋯だろ⋯」


  偏見丸出しの言葉を残し、俺の意識は闇に飲まれていった。


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