第10話:4日目② ~快適な生活のために〜
リアルが忙しくて更新が滞ってました。
朝ごはんにする前に、夜中のうちに撃退した魔物を回収しに行く。
放置しておくと血の匂いで他の魔物が寄ってきてしまうかもしれないからだ。
「ここです!主さま!」
マナトが笑顔で案内してくれた。案内といっても横穴を出てすぐ左手の所だったが。
見るなり驚いた。量がすごい。魔物がうず高く積まれている。
「これはすごいな⋯⋯どの魔物がどれだけ居るんだ?」
「待ってました!内訳を説明するぜー!」
ブリーズが眼鏡を取り出してかけ、クイっと持ち上げて見せる。
あの眼鏡はどこから取り出してるのかと疑問だったが、今なら分かる。あれは形成魔法で作っていたのだ。
証拠にあの眼鏡は木製でレンズもない。MPの無駄遣いしやがって。
「弱い順に説明していくぜー!」
ブリーズの説明では以下の通りだ。
ホーンラビット×6
ゴブリン×12
ホブゴブリン×2
オーク×3
トレント×1
グリズリー×1
以上25匹だった。
ほとんどマナトが倒したらしく槍の痕跡がある魔物が目立ったが、所々に焦げたあとがあったりウィンドアローで貫かれた跡があったりした。
初めて見る魔物が多いので鑑定していこう。
オーク
オーク系の下位種。低いが知能を備えており、2〜4匹の構成で行動することが多い。繁殖力が非常に強く、他種族を苗床にすることも多い。討伐難易度以上に肉が美味しく、多くの人族に好まれている。
討伐難易度 E
ホブゴブリン
ゴブリン系の中位種。ゴブリンより知能が高く、魔法を使う個体もいる。
討伐難易度 E
トレント
トレント系の下位種。森の中で樹齢を重ねた木に魔物の悪意が入り込んで魔物化した存在。動きはゆっくりだがその巨木故に攻撃力は高い。その木はマナが取り込まれているため、普通の木より堅くて丈夫。
討伐難易度 D
グリズリー
グリズリー系の下位種。好戦的な性格で人間を見るとすぐ襲いかかってくる。力が強く、直上的な攻撃が特徴。
討伐難易度 D
討伐難易度Dが2匹いる。キラーグリズリーが討伐難易度Cだったから、Dもだいぶ強かった。だがマナトとブリーズが協力したら結構アッサリ倒せた。
それでも強くて俺は生きた心地がしなかったが⋯⋯。
「しかしよくこれだけの数を倒してくれたなぁ。おかげでレベルも上がったよ。2人ともありがとう。」
お礼を言うと2人は恥ずかしそうに笑う。
「さて、じゃあせっかく全部血抜きをしてくれてるし、今日の朝ごはんはこの中から食べるかー。マナト、オークを一匹解体してくれるか?」
マナトは「了解です!」と元気よく答え解体作業に入る。
ちなみに今回は前回の失敗を踏まえて血抜き後の血は全て地面に掘った穴に埋めたそうだ。
それがどこまで効果があるかわからないが、多少はマシだろう。
早く結界を張ってしまいたい所だ。
解体するオーク以外は全てアイテムボックスに収納していく。
「ブリーズ。このトレントとやらは魔物みたいだけど形成魔法はかけられるのか?普通の木より堅いらしいけど⋯⋯」
「イケるぜー!魔物だろうけど木は木だ。形成魔法が可能だぜー!こいつは丈夫な木だから、いろいろ使い道があるぜー!」
とのことだった。ありがたい。今後見つけたら積極的に狩っていこう。
マナトがオークを解体している間に俺達はご飯の準備をして、あと肉を焼くだけの状態にしておく。
俺が準備を始めようとすると
「ご主人様は休んでいてください。主に働かせるなど精霊の名折れ。ましてやご主人様にはMPを回復させるという大切な役目があるのです。」
とサフラに制止され、テキパキと動かれてしまったため俺は否応なしに休むことになった。
うーむ⋯⋯サフラの言ってることは正しいんだけど、現代日本で社会人をしてた身としてはサボっている気がしてならない。
ましてや働いているのは女子供だ。
との旨をサフラに伝えたところ
「ご安心ください。我々精霊はマナの集合体。性別や年齢はありません。このような姿をしているのは、我々精霊の便宜上だと思っていただいて結構です。」
と言われてしまった。もはやグゥの音も出ずに休むことになった。
そうこうしているうちにマナトがオークのカット肉を持ってくる。サフラはテキパキと串に刺して焼いていく。
「ご主人様。焼けましたよ。召し上⋯⋯食べてください。」
サフラも言葉遣いの矯正を頑張ってくれているようだ。俺もその頑張りにMPの回復で答えることにしよう。
最終的に俺がしたことは4つのマグカップに精霊の水を入れただけだ。その水すらサフラが魔法で出そうとしていたが、精霊の水には回復効果があると言って俺がやった。
「では、いただきます!」
俺が合掌してそう言うと、精霊達は不思議そうにこたらを見る。
そういえばマナトも前に不思議そうにしていたな。
「もしかしてこっちでは食事の前に“いただきます”って言わない?」
「ええ。言いませんね。何かの儀式ですか?」
サフラは小首を傾げて聞いてきた。
「まぁ儀式と言えば儀式なのかな⋯? 俺のいた世界では食事の前に、食事をもたらしてくれた糧に対して感謝の意を込めて“いただきます”と言うんだよ。それが習慣になっている。」
「なるほど。素晴らしい習慣ですね。では我々もその習慣に従いましょう。」
俺達は全員で“いただきます”をしてオーク肉に噛り付いた。
オークは見た目が二足歩行の豚なので肉も豚肉に近い。オーク肉は脂身は多かったが全然しつこくなく、非常にサッパリとした肉だった。
キラーグリズリーと比べると、旨味という点ではキラーグリズリーに軍配があがるがオーク肉のほうがさらにクセがなくサッパリしているため、オーク肉のほうが万人に受け入れられるだろう。
討伐難易度Eでこの美味しさなら破格だろう。オークも見つけたら積極的に狩っていこう。
「オークも美味いな!サッパリして食べやすい。これで塩でもあったら最高なんだけどな。」
俺が思わず呟くと
「ご主人様。塩ならば私が用意できるかもしれません。私は水を司る精霊。MPは使用しますが、海水を顕現させることも可能です。海水をマナトさんに蒸発させてもらえばあるいは⋯⋯」
「マジか! サフラ良くやった! それは素晴らしい案だ!⋯⋯とはいえもう食事が始まってしまってるから、この食事が終わったら塩の作成に取り掛かろうか。」
一気にテンションが上がった。初めての食事の時から塩が欲しくて欲しくてしょうがなかった。
最近では塩なしの肉に慣れつつあったが、目の前に塩が手に入る可能性があるなら試さない手はない。
早々に食事を終えた俺達はさっそく横穴の外に出て塩の作成に取り掛かる。
食事をしながら俺達が考えた“塩補完計画”は以下の通りだ。
①ブリーズに大きく平べったい木の器を作ってもらう。
②その器に小石を敷き詰める。
③海水を入れる。
④マナトに直火で水分を飛ばしてもらう。
⑤小石に塩が付着する(はず)。
⑥石に付着した塩をこそぎ落とす。
鍋なんかがあれば一番いいんだが、無いのでこの方法がベストだと思われる。
火を出し続けるマナトは大変だが、頑張ってもらおう。
さっそくブリーズに器を作ってもらう。もちろん素材は木だが、形成魔法で作っているため木の継ぎ目はない。これなら水が漏れる心配はないだろう。
そこに手頃な石を敷き詰めて、念のためにサフラに浄化魔法をかけてもらう。口に入るものを作るんだから清潔にしないとね。
そして中に並々と海水を入れてもらう。俺は日本では海の近くに住んでいたため、潮の匂いがひどく懐かしく感じた。
「ここからは僕の出番ですね!頑張って海水を飛ばします!」
マナトが張り切っている。頼むぞマナト。充実した食事はキミにかかっている。
外での塩補完計画をマナトに任せ、俺達は横穴へと戻ってきた。
「サフラ、頼みがある。これに浄化魔法をかけてくれないか?」
と言いつつアイテムボックスから取り出したのはキラーグリズリーの毛皮だ。
この毛皮を使えば地面からの冷えを防げるとずっと考えていたが、さすがに洗ってもない魔物の毛皮を布団がわりにする気にはなれなかった。
しかしサフラに浄化魔法をかけてもらえば問題は解決する。
サフラが毛皮に浄化魔法をかけると、黒ずんでいた灰色は綺麗で鮮やかな灰色になった。
さっそく地面に敷いて寝転がってみる。
毛皮はフワフワしてサラサラしてとても暖かい。これなら安眠できそうだ。
「サフラありがとう。これならより効率的にMPが回復できそうだよ。ブリーズおいで。一緒に寝転がってMPを回復させよう。」
ブリーズを呼んで二人で寝転がる。
外でマナトが一生懸命塩を作ってくれてる中で申し訳ないが、すこし休ませてもらおう。
まだ朝で起きたばかりだが、毛皮が気持ちよすぎてまた眠れそうだ。
「主様!大変です!」
ウトウトし始めたその時、切迫感のあるマナトの声が横穴に響き渡った。
「どうした! 魔物か!?」
覚醒しきってない頭を無理やり覚まさせて身構える。
ブリーズとサフラも身構えていた。
「いえ! 魔物ではないのですが⋯⋯人間が来ました!」
マナトの言葉に驚いた俺は急いで横穴を出る。
そこには俺より更に驚いた表情をしている人間が数人居た。
そして書き溜めが無くなったので更新がゆっくりになります。