表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/34

第9話:4日目① ~水の精霊召喚と名付け~

「主様ー!日が昇りましたよー!」


 マナトの元気な声で起こされる。昨夜は良く眠れなかった。

 地面から体を起こすと全身が痛んだ。やはり地面ではしっかりとは眠れない。

 加えて地面の冷たさがひどい。横穴自体はマナトの焚き火で暖められているが、地面の冷たさまではどうにもならない。

 効率的なMPの確保のためには睡眠の質の向上を目指さなくてはいけないと痛感した。


 そして何より昨夜は魔物の襲来が多かった。

 原因はどうやら昨日のキラーグリズリーの解体にあるらしい。

 もともと魔物の水飲み場として湧き水はあったのだ。そのほとりで強烈な血の匂いを発していたら、そりゃー魔物も集まりますわな。


 強い魔物が襲来する中で呑気に寝てて襲われたらお終いなので「魔物が来たらとりあえず起こしてくれ」と言ってあった。

 そしたら幾度となく起こされたのだ。

 中には「こんな雑魚で起こされるとは⋯」という魔物も居たが、中には「起こしてくれてありがとう!いつでも逃げれる準備をしとかなくちゃ!」との感想を抱かざるを得ないような強い魔物もいた。

 夜間に倒した魔物は外に山積みになっている。全て血抜きと内臓処理は済んでいるようだ。後で見に行こう。


 しかしいくら質が悪かったとはいえ、高ランクの魔物(キラーグリズリー)を食べて精霊の水をがぶ飲みして12時間以上は体を休めたのだ。

 さすがにそこそこ回復しているだろう。見てみよう。



レイン

Lv.7

HP 68/68

MP 73/102

攻撃力 37

防御力 61

魔法攻撃力 74

魔法防御力 69

所持スキル 召喚魔法<下級>、ステータス閲覧、鑑定

固有スキル アイテムボックス



 おお!レベルがかなり上がっている!夜中にたくさん魔物を倒したせいだろう。

 それにMPもいい感じで回復している。これだけあれば次の精霊を召喚できるだろう。

 実はまだ次に召喚する精霊をどちらにするか悩んでいる。

 完璧な形成魔法を使える土の精霊は魅力的だし、回復面に優れてて攻撃もバフデバフもできる水の精霊も捨てがたい。なにより洗浄魔法はすぐにでも欲しい所だ。

 召喚コスト(消費MP)は水の精霊のほうが高いらしいが、召喚コストが一番高いという火の精霊(マナト)で約50だったのだから、今のMPならイケるだろう。

 ってかブリーズの召喚コストを見るのを忘れていた。まぁMP34の状態で召喚して意識が無くならなかったのだから、おそらく20くらいなのではと考える。


 ⋯⋯よし!水の精霊を召喚しよう! MPに余裕がある時にコストが高い方を召喚しといたほうがいいだろう!


「マナト。ブリーズ。おはよう。今日はMPが回復したから水の精霊を召喚しようと思う。2人ともMPの具合はどうだ?」


「僕は大丈夫です!魔物はほとんどブリーズさんに作ってもらった槍で倒したので、かなり余裕があります!」


「オイラも大丈夫だぜー!夜中に少し使ったけど、だいぶ休ませてもらったからなー!まだ全快じゃないけど、もうちょい休めば小さい家くらいなら建てられるぜー!」


 おっと。これは嬉しい誤算だ。

 ブリーズには装備品を作ってもらおうかと思っていたが、先に家を建ててもらうのもアリだな。

 先ほども懸念していた「質のいい睡眠」にはやはり家が必要だろう。いくら暖かくても横穴では限界がある。


「わかった。ブリーズのMPの使い道に関しては考えておこう。なるべく体を休めててくれ。とりあえず先に水の精霊を召喚してしまおうか。」


 正直言うと、もう限界である。

 なにが限界かと言うと、体をキレイにしてもらいたい。

 もうこっち(アスガルゲイン)に来て今日で4日目だ。その間ずっと風呂に入っていない。

 日本では毎日入っていたものを4日間も入らないというのは半ば拷問に近い。


「ではさっそく召喚に取り掛かろう。2人は悪いけど外の警戒をしておいてくれるかな?」


 俺が言うと2人は横穴の外を警戒しに行った。


 さて、3回目の召喚魔法だ。3回目ともなると流石に要領を得てくる。あまり緊張はしていなかった。

 大きく息を一つ吐き、頭に浮かぶ呪文を詠唱する。



「水の精霊王ウンディーネよ。我が魔力を糧とし汝の下級眷属をここに顕現させよ。」



 地面に直径2メートルほどの魔法陣が浮かび上がってきた。

 と同時に脱力感に襲われる。想定内だ。ここまでは問題ない。



「出でよ!水のエレメンタル!」



 詠唱を終えると例の如く強い脱力感が襲ってくると共に魔方陣から青いモヤモヤが勢いよく出てくる。

 しかし今回は倒れるほどではない。ちゃんと両足で立っている。

 レベルが上がってMPの上限も上がったお陰だろう。やっぱりレベルは上げておいたほうがいいな。


 やがて青いモヤモヤは人の形を成していく。そして強く、短い光を発した。

 この光はわかっていても目をつぶってしまう。もはや条件反射だ。


 目を開けた先に居たのは、全体的に青い印象のある女性(・・)

 見た目は高校生くらいなのだが、その表情には落ち着きと知性が宿っており、もっと年上の印象を与える。

 長く青い髪は前髪ごと後ろに流している。サラサラのストレートだ。

 スラッとした体型に高めの身長。顔は「可愛い」ではなく「綺麗」と形容すべきだろう。

 高校生くらいの見た目で落ち着きのある美人さんとか反則だ。最高だ。


「初めまして。ご主人様。私が水のエレメンタルです。この度のご用件はどのようなものでございましょうか?」


 凛と透き通った声。心に染み渡るようだ。

 これだよこれ!この異世界生活で何が足りないかと言ったら女っ気が足りなかったんだよ!

 別にマナトやブリーズに文句があるわけではないが、女性が居るだけで華やかになる。


「初めまして。俺はレインだ。よろしく頼むよ。」


 内心を押し殺して紳士を気取って話す。

 ⋯⋯こんなんだから俺は独身なんだろうな。


 俺は水のエレメンタルに今までの経緯、俺の目的など、全てを話した。


「なるほど。私はご主人様の目的のために助力させていただけばよろしいのですね?了解いたしました。」


 ⋯⋯うん。丁寧なのはいいけど、ちょっと硬い。


「もうちょっと砕けることはできるかな?丁寧なのはありがたいけど、これから目的を共にする仲間としてはもう少し砕けてくれると助かるよ。」


「かしこま⋯⋯わかりました。ではなるべく砕けられるように頑張ります。」


 よかった。わかってくれた。精霊はみんな素直でいい子だなぁ。


「じゃあ、差し当たっては洗浄魔法をかけてくれると助かる。しばらく風呂に入れてなくてね。」


 綺麗な女の子にこんなこと言うのは忍びなかったが、水のエレメンタルは嫌な顔一つせずに洗浄魔法をかけてくれた。


 水のエレメンタルが詠唱し、魔法が発動すると俺の体が青いオーラで包まれた。

 その青いオーラが俺の中に吸い込まれていったかと思うとすぐに出てきた。


「ご主人様どうでしたか?サッパリしましたでしょうか?」


 言われて体を確認すると、体全体がすごくサッパリしていた。

 脂っぽかった髪はサラサラになり、皮膚もキレイになって痒みもない。おまけに服の汚れまでキレイになっていた。


「ありがとう!すごくサッパリしたよ!洗浄魔法はすごいなぁ!」


 そう褒めると水の精霊は優雅に一礼した。


「おお、そうだ。他の精霊達も紹介しとくね。おーい!マナトー!ブリーズー!」


 呼ぶと2人が横穴に戻ってくる。2人とも水の精霊に名乗り、自己紹介した。


「今2人が名乗った通り、俺は召喚した精霊に名前を付けている。キミにも名前を付けたいんだけど、いいかな?」


「是非お願いします。」


 水の精霊。全体的に青い綺麗な女の子。すごく丁寧ないい子だが、ちと硬い。

 もうちょっと砕けてほしいという願いも込めて柔らかい印象の名前にしたい。


「⋯⋯サフラ。キミの名前はサフラだ。どうかな?」


「サフラ⋯⋯とても嬉しいです。ありがとうございます。」


 よし。不評でないようで良かった。

 さて、お腹も空いてきたし、ご飯にしようかな。などと考えていると


「ご主人様。当面の目標は精霊の結界を張るとのことでしたが、見た所あと土の精霊さえ召喚してしまえば結界は張れますよね。ご主人様のMPは今、如何程ですか?」


 と聞かれた。サフラの召喚MPの確認がてらステータスを見てみよう。



レイン

Lv.7

HP 68/68

MP 29/102

攻撃力 37

防御力 61

魔法攻撃力 74

魔法防御力 69

所持スキル 召喚魔法<下級>、ステータス閲覧、鑑定

固有スキル アイテムボックス



 ふむ。サフラの召喚前は73だったから、44消費したということか。思ったより消耗している。


「残りのMPは29だな。」


「まぁ。それでしたらもう召喚できますわ。この場所でしたら土の精霊の召喚に30もかからないかと思います。ですがMPが空になってしまう危険もあるので、少し回復されてからが良いと思います。」


 おお。マジか。それなら今日中に結界が張れてしまうかもしれない。

 結界が張れれば身の安全はグッと高くなるし、自然治癒力も高くなると聞いた。


「なら、日中ゆっくり回復して日が暮れる前に召喚することにしようか。」


 俺の提案に全員が賛同した。


 さぁ、そうと決まれば回復だ。とりあえず朝ごはんにしよう。


初投稿作品のため、出来や皆様の反応が気になります。評価などしていただけると今後の参考になるので、良ければ宜しくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ