13 『変態(1)』
僕の生徒会における活動は、その後大きなトラブルもなく進んでいった。
僕達生徒会の知名度アップのための広報活動として、新聞部に依頼を出したり、学園における様々な問題点を洗い出し、生徒の要望を収集したり。
実にまともな生徒会活動の日々だった。
そして、生徒会メンバーと共に活動をする中で、みんなの能力の高さも見えてきた。
会長は言わずもがな、情報収集とその分析が得意なようで、いつもどこからか仕入れてきた情報をもとに、的確な指示を出し問題を解決していく。
学園内での信頼も大きいらしく、各部活動や同好会への打診も会長が頼めば大抵快く承諾してもらえる。
理事長の承諾が必要な案件も、文句を言いつつ何とかこなしているようだ。
書記長の秋乃先輩と、風委委員長の輝山先輩は役割が違えども、大抵一緒に行動している。
この二人の人気はすごい。
そして会長とは違い、対面での情報収集を得意としている。
人員が必要な案件については、この双子先輩達のファンを総動員させることもある。
正直生徒会以外の人たちを生徒会の活動に巻き込むのはいかがなものかと思うのだが、ファンも楽しんでいるようなのでいいのかな?
双子先輩の魅力ゆえに成し遂げられることなのだろう。
時々二人が別々に行動することもあるけれど、そういう場合も何やらテレパシーのようなものが働くらしく、効率よく行動することが可能だ。
そういったフットワークの良さも、双子先輩達のすごいところだ。
そしてもう一人。
そう、ラスカルさんだ。
この人も人気が高い、特に男子生徒に。
理由は誰もが想像する通り、あの容姿からくるものだ。
美しく揺れ動く金髪、魅力的なボディ。
存在するだけですごく目立つ。
それでいて、比較的流暢な日本語を話すギャップも人気の理由らしい。
表面的な部分ばかり評価されがちだが、人柄もよい。
細かいことに良く気が付き、気配りができる点も素晴らしい。
生徒会唯一の癒し的存在と言っていいだろう。
彼女がいることで生徒会は色々な意味で安定していると言える。
そんなわけで、過去の生徒会の評価がどんなものだったかは知らないけれど、少なくとも今の生徒会はそれなりに高く評価されていると思う。
僕に対してはどうだろう?
会長からできる限りすべての案件に関わるよう言われているので、僕が学園内で活動する機会は多いのだけれど、どのように評価されているのかはよく分かっていない。
きっとこういう時にひと@ことなんかで生徒の反応なんかをチェックしておくべきなんだろうな。
相変わらず、僕はネット情報を苦手としている。
意識的にネット情報に関わるよう努力しないといけないね。
きっと生徒会の活動にも必要なスキルとなるだろうし。
――――数日後の昼休み。
僕は棚江君と昼食をとっていた。
僕は学園内の売店で買った手作りサンドイッチとカフェオレを。
棚江君は自宅で用意してもらったらしい弁当をつまみながら二人で会話をしていた。
「棚江君は自宅から通学しているんだね」
「うん、そうだよ。その方が色々と都合がよくてね」
寮生活の方が近くて便利な気がするけれど、考え方は人それぞれだからな。
自宅の方が落ち着くっていうのもあるのかもしれない。
「それにしてもいつも豪華なお弁当だね」
そうなのだ。
棚江君の弁当はいつも豪華だ。
高級食材を使っているとかいうわけではないのだが、彩り良く、そして多くの料理がバランスよく詰められている。
食材の切り方から配置に至るまで、細やかなこだわりを感じさせるお弁当だ。
「うん、それにとっても美味しいんだ。ほたるんも食べてみる?」
そういうと棚江君は僕が返答するよりも早く小皿と割り箸を用意し始めた。
そして卵焼きと唐揚げとエビチリを取り分けると、僕にさし出すのであった。
「ありがとう。これ、いつも用意しているの?」
「時々かな。量が多めの時は食べきれなくはないんだけれど、お腹いっぱいになっちゃうから誰かに分けてあげられるように用意しているんだ。でも最近ではそれを見越したうえで多めに作ってくることが多いね」
「棚江君が作っているの?」
「まさか! 僕にこんな技術はないよ」
「じゃあ、お母さんかな?」
「お母さんでもないんだ。何というか、棚江家における家事全般を担当してくれている人がいて、その人が作ってくれているんだ」
「お手伝いさんがいるの?」
「そうだね、分かりやすく言えばそういう人だね」
「ということは棚江君の家ってお金持ちなの?」
棚江君の家庭事情をあれこれ聞くのはちょっと迷惑かなと思ったけれど、興味が湧いてきてしまったのでストレートに聞いてみた。
「どちらかといえばそうかも。それに僕の家族はいつも忙しくて家事まで手が回らないっていうのもあって、専門の人に頼んでいるんだ」
「そうなんだ、なんだかちょっと棚江君が僕とは違う世界を生きているように思えてきたよ」
「そう? 僕もほたるんと同じ普通の高校生なんだけどなー」
棚江君は少し頬を膨らめせて不満げにそう言ったが、心の底から怒っているわけではないようだ。
すぐに表情を一転させると、棚江君は別の話題を投げかけてきた。
「そういえば、ほたるん。最近順調そうじゃないか」
「生徒会のこと? まあ、何とかね」
「学園内での人気も急上昇中だよ」
「人気? できれば活動実績で評価して欲しいところなんだけれど、人気って重要なの?」
僕の質問に、棚江君が即座に返答する。
「それはもちろん! 人気、イコール信頼といってもいいほどだよ」
それほどなのだろうか。
確かに、会長や双子先輩達がその人気を利用して生徒を動かしている例もあるし、この学園においては重要なポイントなのかもしれない。
「それでもほたるんの人気は生徒会メンバーの中では最下位だけどね」
「だろうね。僕なんかじゃ彼女らの足元にも及ばないからね」
「学園全体で見ればほたるんも相当な人気なんだけどね。あの冬条久遠会長を筆頭に、男子から絶大な人気のオータムツインズ、そして魅惑なボディのラスカルちゃんと続くんだから、生徒会っていろんな意味でオールスターって感じだよね」
改めてそのラインナップを確認してみると、本当に個性的な集団だなと思う。
「あれ? もしかして、生徒会って結構色物扱いされてる?」
「その言い方だとあまり良くは思ってないみたいだね。でも残念だけれど、その認識は間違っていないよ」
「そ、そうなんだ……。ちなみにその色物集団には僕も含まれているのかな?」
この質問に対する答えを僕はすでに分かっているはずだ。
だけれども、どうしても僕を客観視できる存在に聞いてみたかったのだ。




