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訓練前夜

 その日の夜、俺は地下室で一人毛布に包まっていた。『地下室から出ない』って、そのまんまの意味だったのか。夕飯代わりと差し入れられたパンに生ハムを乗っけて食べる。塩味が効いてて美味い。結構いいやつなのか? そんな事を思いながら魔晶石が輝くランタンに向かう。そして粗末なノートを開くと鉛筆のような筆記具を手に取った。

 もちろん日記をつけようという訳ではない。『なにができるのか整理しておいてください。それに応じてアドバイスできることもあるでしょう』ってこの時代のバトラーさんに言われたもので整理しようってわけだ。ここまでで使ってきた能力は……。


 ――肉体の完全性の維持

 ――エネルギー照射

 ――生体エネルギー炉

 ――時空コンピューター

 ――データーベース

 ――魔法力移動検知

 ――自動翻訳機能

 ――視覚補正

 ――臭覚補正

 ――索敵モード

 ――危険感知

 ――個体識別補正

 ――光学迷彩

 ――ホログラム投影

 ――磁場操作

 ――物質変換

 ――温度変更


 ずらずらと出てきた。幾つかの能力--光線の自動追尾等--は統合されているのか出てこない。一方で見覚えのないも出てきた、例えば自動翻訳や視覚補正である。自動翻訳はわかる。普通に話せるどころか馬やゴブリンとも意思疎通ができる理由だろう。視覚補正はなんだ? ああ、いつかベアトリクさんが深夜にやってきた時に見える様になったあれか。試しにランタンの灯りを消してみる。臭覚補正は? 臭いのとかを自然に消してくれてるのかな? 確かに風呂に入らないことが多いし、その方が助かるかも。


 適正調光モード


 お、明るくなった。普段の夜は暗いから、必要にならないと発動しないようだ。


 さて、これらの全部を伝えるべきじゃないよな? 特に時空コンピューターや俺の本当の目的や物質変換のメカニズムとかはさ。裏切るようで心苦しいがここのバトラーさんは『マサラ子爵オットーの味方』であって、おそらくそれは『マサラ子爵竜安寺貴子の味方』とは両立しえないんだから。……俺の知ってるバトラーさんがベアトリクスさんを助けたっていうのは、もしかしたら贖罪……いや、今は考えるのは止めておこう。

 とりあえず、老紳士に知られてるのは○、知られてないのは×、微妙なのは▲、わからないのは?で整理だな。


 ――肉体の完全性の維持:○

 ――エネルギー照射:○

 ――生体エネルギー炉:×

 ――時空コンピューター:×

 ――データーベース:×

 ――魔法力移動検知×

 ――自動翻訳機能:×

 ――視覚補正:×

 ――臭覚補正:×

 ――索敵モード:×

 ――危険感知:▲

 ――個体識別補正:×

 ――光学迷彩:○

 ――ホログラム投影:○

 ――磁場操作:×

 ――物質変換:?

 ――温度変更:×


 とりあえず、手合わせで使った能力は基本的に知られているとみるべきだろう。例外は表示だけで俺が反応できなかったから無意味だった危険感知と地面を沼地にした物質変換だろう。時空コンピューター関連と生体エネルギー炉は言わないとして、問題は物質変換なんだよな。これ絶対におかしいし。

 俺はパンと生ハムの残りを手にとった。


 物質変換:カップラーメン


 パンと生ハムが見慣れた筒状の容器に入ったインスタントラーメンに変化する。石ころをティーセットに変えられた時点で、できるんじゃないかと思ってたけどさ。物は試しと蓋を剥がす。かって見慣れた懐かしき麺と具材が湯を今かと待ち受けている。臭いを嗅ぐと想像通りのものだった。


 物質変換:水


 カップラーメンを水に変えて地面に染み込ませる。食べたかったが、あの鋭い執事さんだとなにかを感じ取りそうなので我慢して消滅させた。


 実はこれって凄く強いんじゃないのか? それこそ人を捕まえて変換させちゃえば終わりなんだから。そこで人間が大量のカップラーメンとなって崩れるのを想像した。

 あー……これはないな。うん。それにバトラーさんがこういう使い方をしてなかったのには何か理由があるんだろう。とりあえず、これを伝えるのはなしの方向で……と、紙に書こうとして手が止まる。

 あ、字は読めるけど……字に自動翻訳機能が効かないんだっけ? 単語がわかんないよ。書けないよ。


 ――自動筆記モードY/N


 なんか出た。当然YESのY。

 すると手がするすると動き、勝手に文字を刻んでいく。おおう、なんか気持ち悪い。一分もしないうちになにやら書き込みが終わった。……何が書いてあるのかは確認できないけど。


 ――文字補正モードor翻訳モード


 なんだろ? とりあえず文字補正モードの方で。

 すると紙に書かれた文字がうねうねと動き出す。キモッ! そしてすぐに動いた文字が日本語となった。気持ち悪いエフェクトなんていらないよ、もうっ!


 治癒能力

 攻撃察知

 暗視能力

 光線照射

 索敵

 危険感知

 隠形

 幻影

 磁場操作

 温度操作


 ふむ、伝えるのに必要なものと考えると随分とスッキリとしたもんだ。自動筆記とか翻訳とか伝える必要がないからね。マイルドな表現にまでしてくれるとはなかなかだ。物質変換について聞かれたら……。なんか言い訳を考えておかないとな。水が出せるとか偶然できただけで再現できないとか……苦しいな。まぁ、なるようになるさ。


 しかし物質変換みたいに使い方で意味が完全に変わるものがある。それが上手に使うってことなのかな? それにまだまだ能力が隠されてるのか? 新しい能力がボロボロ出てくるし、なによりも、この時代のバトラーさんの言い方だと俺から何かを感じたっぽいし。ってか、歴代の俺の記録を自由に閲覧できればはかどるんだけどなぁ。

 いつしか俺は溜息を漏らしていた。

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